ナタリー PowerPush - miwa

新境地「Delight」で切り開く“2010年代の音楽”

アルバムはCDで聴いてもらいたい

──前作も音楽的には非常にバラエティ豊かなアルバムでしたけど、今回のアルバムはバラエティが豊かなだけじゃなくて、同時にすごく統一感もあるというか。サウンドが大人っぽくなりましたよね。miwaさんは世代的には珍しく洋楽の熱心なリスナーでもあると思うんですけど、そうした志向が自作により鮮明に出てきたなって思ったんですね。

リスナーとしてはジャンルとかを考えずに、いいなと思った音楽を本当に幅広く聴くので、そのときにやりたいことをつい詰め込んじゃうんですけど、そこに統一感を感じてもらえたとしたらうれしいですね。私、今もCDで音楽を聴くんです。だから本当のことを言うと、できれば自分の音楽も、特にアルバムの場合は最初から最後までCDで聴いてもらいたいんです。曲順とか曲間とかにもすごくこだわっているので。CDのいいところは、ちゃんとクレジットが見れるじゃないですか。私、ものすごくクレジットをよく見るタイプなんですよ。そこで自分の好きなプロデューサーとかの傾向をチェックしたり。特にミックスエンジニアとマスタリングエンジニアはすごく気になりますね。いつかそういう大好きな海外のエンジニアの方と一緒にやってみたいという気持ちがあって。これ、前作を作り終わったときも言ってたんですけど、次こそは(笑)。

──デビュー当時から一緒にやっているNaoki-Tさんは、ケツメイシやFUNKY MONKEY BABYSをはじめとして、ここ10年の日本のポップスのいわば新しいスタンダードを作ってきた方ですよね。彼と一緒にやってきたことで、何を学ぶことができたと思いますか?

miwa

それこそデビュー曲のアレンジもNaoki-Tさんだったので、ずっとNaoki-Tさんの背中を見てアレンジの勉強をしてきた感じです。最初は何から何まで初めて学ぶことだったんですけど、今はすごく阿吽の呼吸というか、お互いのツボを押さえているというか、そのときに「いいな!」と思うものが一緒なんですよ。音楽で会話しているというか、音を出せば通じるという感じで、音楽論を教わったりみたいな感じではないんですけど。

──Naoki-Tさんは、売れ線の曲を作るのがうまいというか、新しいタイプの売れ線の曲をずっと作り続けてきた方という印象なんですけど。その感性とmiwaさんの感性がうまくシンクロしてきたという感じですか?

「売れ線」っていうのはちょっとわからないんですけど、もともとポップでキャッチーな音楽が好きだし、あまりマニアックな志向を持っているわけではないというか、ポップでキャッチーなものがジャンルを問わずに好きなんですね。だから、自然とそういうものが生まれてくる感覚ですね。

陰の部分を知ってもらいたいとは思わない

──ポップでキャッチーであるだけでなく、miwaさんの音楽は、最初にも言ったように「まぶしすぎる」というか、圧倒的に陽性のイメージがあるんですね。普通のシンガーソングライターだと、アルバムも3枚目くらいになると自分の内面にある闇の部分を表現してみたくなったりもするものですけど、miwaさんは絶対そっちに向かわないという信頼感と安心感があるというか。

自分としては、それは年齢的なものなんじゃないかなって思うんです。デビューしたときが19歳で、今は22歳で、その3年間でもずいぶんと考えてることは変わってきてますけど、自分はそのときにしかできないことをやっていけばいいと思っているので、もし聴き手がそう感じるのならば、それが22歳の私の表現なんじゃないかな。もしかしたら今後、自分の中にある陰の部分だとか闇の部分みたいなものが、別に意図してなくても表現の中に出てくる時期も来るのかなと思うし。そういうことが起こったら、それはそれで楽しめると思うんですよね。

──少なくとも今は、わざわざ「よし、自分の中にある闇の部分を掘り下げにいくぞ」とは思わないっていうことですね。

miwa

そうですね。

──でも、そういう部分も確かにあると。

それは、当然あると思います。

──面と向かって言うのも失礼ですけど、「悩みとかないんじゃない?」とか言われることってありませんか?

そうですね(笑)。よく言われるんですけど、それに対して「悩まない人なんていないでしょ」っていう返しもまたベタで嫌なんですよね(笑)。今はそれを多くの人に知ってもらいたいとも思わない、身の回りにいる人だけが知っててくれればいいと思ってるので、曲にすることはないですね。

──それよりも、聴き手に希望や喜びを与えるのが自分の役割だと思ってる?

うーんと、音楽がそういう希望的なものであってほしいなっていう思いがあります。せっかく自分の音楽を聴いてくれるなら、その人の気持ちにとってなんらかのプラスになれたらいいなって。自分も音楽を聴くと元気になるし、いいライブに行くとまた次の1日をがんばれたりとか、音楽を受け取る側の人間としてもそういうタイプなので。自分がいいと思うものを作ってると、自然とそういうものになるんだと思います。受け手としても送り手としても、それが今の自分にとっての音楽なのかなって。どこかでおいしいものを食べたら、今度はそこに友達を連れて行って、その子もおいしいって言ってくれたら「よっしゃ!」みたいな(笑)。

──miwaさんはロックフェスなどにも出演する機会がありますけど、いわゆるロックバンドの一部には、例えば自分の弱い部分や最悪な部分をあえて表現して、受け手はそれに対して「ああ、自分は1人じゃないんだ」って思う、そういう共感の仕方もあるじゃないですか。そういうところが、音楽と食べ物が違うところの1つだと思うんですけど。

うーん、そうかもしれないですけど、あんまりそういう聴き方はしないんですよね。ロックバンドの場合は、単純に「カッコいいなあ!」っていう感じで。

ニューアルバム「Delight」/ 2013年5月22日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 3800円 / SRCL-8297~8
通常盤 [CD] / 3059円 / SRCL-8299
CD収録曲
  1. Delight
  2. ヒカリへ
  3. 321
  4. サヨナラ
  5. Sparrow
  6. ホイッスル~君と過ごした日々~
  7. ミラクル
  8. My Best Friend
  9. LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~
  10. Napa
  11. ぬくもり
初回限定盤DVD収録内容
  • 2012年12月22日に行われたZepp Tokyoライブのダイジェスト
  • 2013年3月30日に行われた下北沢LOFTライブのダイジェスト
  • 「スマイル」ビデオクリップ
miwa(みわ)
miwa

1990年生まれ、神奈川県出身の女性シンガーソングライター。高校時代から音楽活動を開始し、下北沢、渋谷を中心に弾き語りライブを行う。2010年3月にシングル「don't cry anymore」でメジャーデビュー。伸びやかで透明感のある歌声と等身大の歌詞で注目を集める。その後も大学生活と並行しながら音楽活動を継続し、2011年4月には1stフルアルバム「guitarissimo」、2012年3月には2ndフルアルバム「guitarium」を発表した。2012年8月にリリースしたシングル「ヒカリヘ」はダンスエレクトロサウンドを導入した曲調とドラマ「リッチマン、プアウーマン」主題歌に採用されたことで話題に。2013年3月には大学を卒業すると同時に、初の日本武道館ライブを成功に収めた。同年5月、3rdアルバム「Delight」をリリース。