ナタリー PowerPush - DJみそしるとMCごはん

初めましてインタビュー「おみそはんって呼んで」

DJみそしるとMCごはんインタビュー

「DJみそしるとMCごはん」は卒論のテーマ

お手製のローストチキンを温め直すDJみそしるとMCごはん。

──そもそもDJみそしるとMCごはんというのはどういうプロジェクトなんでしょう?

私は女子栄養大学で栄養学を専攻していたんですが、その大学の卒論のタイトルが「DJみそしるとMCごはん ~くいしんぼうHIPHOP~」だったんです。架空のラップユニットを作って、私が大学で勉強した料理の奥深さをいろんな人にわかりやすく伝えたら面白いんじゃないかと思って。だから最初はただ曲とPVを作っただけで、ライブなんて想定していなかったんです。

──では、なぜヒップホップに?

ヒップホップは、メッセージ性の強い音楽だと思ったからです。私の曲は「マカロニグラタン」とか「ピーマンの肉詰め」とか歌詞がレシピになっています。曲を聴きながら、実際に歌いながら料理が作れるように。ただレシピだけだったら料理本や料理番組のほうがいいかもしれないけど、私はお料理にまつわるエピソードや歴史、みんなで食べたときの楽しい感じとか、そういう本や番組では伝えきれないものも含めて、かつ手軽に紹介したかった。それで考えたら、音楽はどこでも聴けるし、ヒップホップなら言葉数が多くていろいろ伝えられると思って。「これしかない!」と。あと私は音痴だから、ラップならできそうかな、と(笑)。

──ヒップホップは昔から好きだったんですか?

いえ、実は卒論のテーマを決めてから聴き始めました……。一番最初はS.L.A.C.K.(現:5lack)さんやPSGさんです。そこからじわじわと範囲が広がってきて、やけのはらさん、鎮座DOPENESSさん、スチャダラパーさんとかを聴くようになりました。

──ちょっと文化系な香りのするラッパーたちですね。

BUDDHA BRANDさんとかニトロ(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)さんとかも聴いてますよ。あと漢(MSC)さんも。アーティスト同士の関連性をたどっていくとどんどん広がっていきました。今やもう大ファンです(笑)。たまにですけど、ライブに行ったりもしてます。

楽しいし、おいしいし、間違いない

──トラックメイクも自分で手がけているとか。

妹夫婦に挟まれてダンスを踊るDJみそしるとMCごはん(写真中央)。

はい。卒業制作ということもあって、全部自分でやることにしました。Macに入っているGarageBandで曲が作れると聞いたので、音作りのできる友達に教わって。本当はサンプラーとかにすごく憧れているんですが(笑)、まずはGarageBandでできるようになろうと思っています。

──DJみそしるとMCごはんさんは作詞作曲はもちろん、アートワークなども自分でやりますよね。

もともともの作りがすごく好きで、趣味で絵を描いたり、楽器を弾いたりしていたんです。で、高校2年の終わりくらいに、進路についていろいろ考えてて。ある時、昔お母さんが料理しながら言っていた「おいしいものは人類の奇跡だー」という言葉が突然頭をよぎったんですね。そしたら「料理の盛り付けとか、テーブルのスタイリング、コーディネートの見せ方を考えたりするのは、絵を描くのに似てるな。じゃあ料理にしよう」って一気に納得できちゃったんです。それで料理の大学に行くことを決めました。

──急激な論理の飛躍が起こったんですね(笑)。

「楽しいし、おいしいし、間違いない」みたいな(笑)。でも料理の勉強が今まで趣味でやっていた楽器やお絵描きと、巡り巡ってつながっていくとは、その時は思いもしませんでした。しかもメジャーデビューまでしてしまうなんて、本当に想像すら……って感じです。私の中では卒論を出した時点でラップ生活は終わりというか。新社会人としてのOL生活に目が向いてましたね。

──OLもされてたんですね。

1年間は会社で食器の営業をしていました。病院とかいろんな会社とかカフェとかを回って食器を提案したり売ったりする仕事です。ビールの注ぎ方を怒られたりしつつも、結構優しくされていました。年の離れたおじさんばかりの会社で、向こうも新卒の女の子とどう接したらいいかわからないみたいな感じで。皆さん優しすぎて「なんかいいのかな」っていつも思ってました。

──会社の人たちはDJみそしるとMCごはんの今の活動を知っているんですか?

私、ラッパーになるって言って会社辞めたけど、「DJみそしるとMCごはん」という名前は伝えてなくて。でも、この前、元上司から突然電話がかかってきて。その人はちびまる子ちゃんの友蔵みたいな感じのおじいちゃんで、いつも独り言を言っていたんです(笑)。その人から「あれ、ラジオ出てた? 声が似てたから、もしかしてそうじゃないかと思って」と。「いやがんばってるみたいだね」って言ってくれて、すごくうれしかった。今もちょくちょく会社のほかの人から連絡が来たりするんです。

──いい話ですね。

なんの営業実績も残さず、1年しか会社にいなかったのに。辞める時も「好きなことをやるのが一番いいでしょ」みたいに社長が言ってくれて。円満退職でした。

「おみそはん」って呼んでくれます

DJみそしるとMCごはん

──ところでDJみそしるとMCごはんの愛称はありますか?

えっと、スチャダラパーのSDPみたいに略すとDMMGです。

──ハードコアバンドみたいですね(笑)。

そうなんです(笑)。だから人によって呼び方が違います。onnacodomoさんは「おみそちゃん」だし、夢眠ねむ(でんぱ組.inc)ちゃんは「ごはんちゃん」って呼んでくれてます。

──1つに決まるといいんですけどね。

あっ、「おみそはん」って呼んでくれる友達がいて、すごく気に入ってます。DJみそしるの「みそ」とMCごはんの「はん」が入っているという(笑)。言葉の響きにちょっと京都感がありますよね。はんなりした感じの。でも、私、地元が静岡なんだよなー。

DJみそしるとMCごはん『ショートケーキ』

メジャーデビュー作「おりおりのおりょうり~X'mas~」/ 2013年11月27日発売 / Kioon Music
初回限定盤 [CD2枚組] 3000円 / KSCL-2340~1
通常盤 [CD] 1300円 /KSCL-2342
DISC 1
  1. はじめに(11月・12月)
  2. ショートケーキ
  3. ローストチキン - Thanks to "Sunday People" -
  4. おわりに(12月26日)
DISC 2(初回限定盤のみ付属)
  1. スクランブルエッグ
  2. 白和え
  3. 牛乳かん
  4. ピーマンの肉詰め
  5. マカロニグラタン
  6. 大学芋
  7. DJみそしるとMCごはんの趣旨説明
DJみそしるとMCごはん
(でぃーじぇーみそしるとえむしーごはん)

女子栄養大学の卒業制作を機に誕生した、ラップ、トラックメイク、アートディレクションを1人で手がける女性アーティスト。「おいしいものは人類の奇跡だ!」をモットーに活動し、2013年7月にはインディーズから1stミニアルバム「Mother's Food」を発表した。リリース前後からそのアイデアとクオリティが話題になり、同年に開催された「FUJI ROCK FESTIVAL'13」「Twilight Shower」に出演。そして11月27日にメジャー第1作目となる「おりおりのおりょうり~X'mas~」を発売する。また「ローストチキン - Thanks to "Sunday People" -」のPVでは、VJユニットonnacodomoの野口路加、せきやすことコラボレーションしている。