音楽ナタリー Power Push - ミソッカス
“フォークロア”を武器に追撃開始
「歌の大辞テン」の影響はかなりデカい
──いくつか楽曲について聞かせてください。まず1曲目の「ゴーストシップラブストーリー」ですが、1980年代後半のJ-POPをアップデートさせたサウンドが鮮烈ですよね。個人的には初期のB'zを思い出しました。
ノブリル あ、なるほど。その時代の感覚もちょっとありますね。
はるきち たぶん染み出てきたんだろうね。別に「初期のB'zみたいな感じにしよう」と思ったわけではなくて。
ノブリル アルバム制作の最後のほうにできた曲だし、肩の力も抜けてましたからね。
──80年代後半から90年代前半のJ-POPって、リアルタイムで体験してないですよね?
ノブリル そうですね。ただ、中学生くらいのときに「速報!歌の大辞テン」という番組があって……(※1996年から2005年まで日本テレビ系で放送された音楽バラエティ番組)。
はるきち あった!
ノブリル その週のベスト10と一緒に、昔のベスト10も紹介してたんですよ。あれがすごい好きだったんですよね。
はるきち 昔のヒットソングも知れるっていうね。
ノブリル そうなんですよね。あの番組を観てれば、リアルタイムで(昔のヒット曲を)聴いているような感じだったので。気になる曲があったら、速攻でオカンに教えてもらったりしてました(笑)。「ユーミン、すげえ!」とか思ってたし、その影響はかなりデカいですね。
はるきち 当時のJ-POPってすごく緻密でしたからね。サビだけ聴いてピンとこなくても、Aメロ、Bメロ、サビって聴いていくと「すげえ!」って思ったり。
ノブリル 当時は転調が多かったんですよね。その転調の具合も楽しんでいたというか。
はるきち そういえば今回の自分たちのアルバムも転調ばっかりだね。
ノブリル そうですね(笑)。
ロックのルールに縛られてる人が多い
──先ほども話に出てきた「シャバ・ラ・カタブラ」。これは「ロックとは何か?」をテーマにした歌ですね。
はるきち 自分が思っていることを包み隠さずというか、ブラックになるギリギリのところを攻めたいなと思ってたんですよね。「シャバ・ラ・カタブラ」に関しては……対バンとかイベントとかでほかのバンドを見ていると、「窮屈そうだな」って感じることもあって。
ノブリル 「ロックはこうでなければならない」っていう感じですよね。
はるきち そうそう。ロックバンドだから感情が高ぶったときはダイブしなくちゃいけない、ギターを壊さなくちゃいけないとか。普通の社会に溶け込めなくて、ロックっていう自由なところに飛び込んできたはずなのに、今度はその中のルールに縛られてる人が多いなって。実際、僕もそうだったんですよ。2年くらい前までは「ミソッカスはこうじゃなくちゃいけない」とか「ミソッカスとはなんぞや?」みたいなことばっかり考えてて。要は自分たちが作ったものに固執してたんですよね。
──トレードマークだった和装を辞めたのも、ちょうど2年くらい前ですね。もっと自由にやっていいんじゃないか?という決意があったんでしょうか。
はるきち そうですね。だから「シャバ・ラ・カタブラ」は、ほかのバンドに対しても言ってるんですけど、自分に対して言い聞かせてるところがあって。「もうちょっと視野を広くしていこうぜ」みたいな。この曲は作曲がノブリルなんですけど、僕ら2人の共作も板に付いてきた気がしますね。
ノブリル 「マッドシュリンプス」みたいなノリの歌詞をイメージしてたんですけど、基本的にははるきちさんに丸投げして。1人だけでは絶対に浮かばない発想なので、そこは共作でよかったと思いますね。
はるきち詞の変化
──ジャジーなアレンジの「バイトロワイヤル」、ラウンジ風の「布団に捧ぐセレナーデ」もミソッカスらしい曲だなと。こういうテイストの楽曲は、ほかのバンドではなかなか成立しないと思います。
ノブリル 「布団に捧ぐセレナーデ」はアルバムの中で最後に作った曲なんですよ。完全にリラックスしていたし、もはや趣味の世界ですね。
はるきち ミニアルバムだと箸休めになりすぎちゃうというか、なかなかやれないタイプの曲だと思うんですよね。でも、フルアルバムの真ん中あたりにあると「あ、意外といけるね」って思って。
ノブリル はるきちさんのメロディはどこかに憂いがあるので、こういうオシャレなアレンジをやりやすいんですよね。
はるきち 雪国生まれ(※富山出身)だから、どうしてもそうなるんだよ(笑)。
──「バイトロワイヤル」は“バイトに遅刻して焦る男子”、「布団に捧ぐセレナーデ」は“どうしても布団から出られない男子”が主人公。こういう非リア充感を歌うのもうまいですよね。
ノブリル いいですよね。「布団~」は高尚な言葉を使ってるのに、よく聴くとすげえダメなヤツのことを歌っていて。芸が細かいんですよね。
はるきち 「バイトロワイヤル」は僕の体験がもとになってるんですよ。飲食店でバイトしてたんですけど、バイトの日に寝坊して、「やばい」と思って店長に電話したら「今日、休みだよ」って言われたっていう(笑)。
ノブリル はるきちさん、「i wanna be a ハンサム」(メジャー1stミニアルバム「反逆の♭m7(フラットマイナーセブンス)」)以降、歌詞が変わってきましたよね。
はるきち あれは自分のパーソナリティを赤裸々に書いた曲だからね。最初の頃は自分のパーソナリティを歌うのはダサいって思ってたんですよ。自分のことをそのまま歌えるほど器のデカい人物ではないし、だったら第三者目線の物語を歌うほうがいいなと。でも、4枚目のミニアルバム(「統一された混沌(カオス)」)あたりから少しずつ変わってきたんです。ノブリルはもともとメッセージ性だったりパーソナリティを歌詞で出してたんですけど、2人で共作を始めたことで「僕も書いてみようかな」って思うようになって。ただ、大層な言葉を並べても自分らしくないし……。
ノブリル ライブでの説得力にも関わってきますからね。
はるきち うん。本当の言葉を歌わないとライブでは伝わっていかない。お客さんを観てると、自分が歌っているときの表情や仕草を敏感に感じ取ってるなって思うんですよね。反応がすごく素直だし、だからこそ絶対に嘘は付けないなって。パーソナリティを歌うのであれば、嘘は付いちゃいけない。嘘を付くんだったら、完全なフィクションを作り上げないと。
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- 1stアルバム「追撃のフォークロア」 / 2016年3月2日発売 / avex trax
- CD2枚組 3564円 / AVCD-93401~2
- CD 2916円 / AVCD-93403
収録曲
- ゴーストシップラブストーリー
- 17の夜
- 情熱のハッピーエンド
- シャバ・ラ・カタブラ
- B-B-B-Bourbon
- バイトロワイヤル
- 布団に捧ぐセレナーデ
- 五人の鉱夫
- 闇夜のキャラバン
- ヨーラレ
- 世界征服
- 最終列車は汽笛を鳴らす
CD2枚組 DISC 2(※セルフカバー集)
- パパパ
- SEXY DYNAMITE
- マッドシュリンプス
- ム○ンライト伝説
- ホリデイ
- ワルイトモダチ
- 擦り切れた靴とロケット
ミソッカス
デストロイはるきち(Vo, G)、ノブリル(G, Cho)、ブルマン藤井(B, Cho)、マイケルTHEドリーム(Key)、ジャンボリー加藤(Dr, Cho)からなる5人組。デストロイはるきちの生み出すキャッチーなメロディと古今東西問わず幅広い音楽ジャンルを融合させた多彩な楽曲展開を持ち味とするロックバンド。2006年12月に「みそっかす」名義で結成され、メンバーチェンジやパートチェンジを経て現在の編成になる。地元愛知や、大阪で開催した自主企画でソールドアウトが続出するなど、精力的なライブ活動で着実に知名度を上げていく。2013年にはオーディションイベント「出れんの!? サマソニ!?」で勝ち残り、「SUMMER SONIC 2013」東京公演への出演を果たした。2014年1月1日にバンド名を「ミソッカス」に改名。2015年9月にシングル「ライジングレインボウ」でエイベックスからメジャーデビューし、2016年3月にアルバム「追撃のフォークロア」をリリースする。