音楽ナタリー Power Push - ミソッカス
“フォークロア”を武器に追撃開始
2015年9月にシングル「ライジングレインボウ」でメジャーデビューしたミソッカスが、キャリア初のフルアルバム「追撃のフォークロア」を3月2日にリリースする。ドラマ「無痛~診える眼~」の挿入歌「闇夜のキャラバン」を含む本作は、このバンドらしい個性的なミクスチャーサウンドがストレートに表現された作品となっている。
今回音楽ナタリーではデストロイはるきち(Vo, G)とノブリル(G, Cho)の2人にインタビュー。フォークロア(民族音楽)をテーマに据えた本作についてや、はるきちが「バンド史上、今が一番攻めてる」と言うミソッカスの現状を語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎
初めてのフルアルバム
──1stフルアルバム「追撃のフォークロア」が完成しました。フルアルバムは今作が初めてですよね?
ノブリル(G, Cho) 初めてです!
デストロイはるきち(Vo, G) ミニアルバムはいっぱい出してますけどね。
──ミニアルバムが5枚、“EP”と銘打った4曲入り作品が1枚ですよね。
はるきち とにかく飽き性なので、普段から「30分超えると長いよね」って話すんですよ。好きなアーティストでもフルアルバムの後半は聴いてなかったり、繰り返し聴かなかったりするので。僕は洋楽、邦楽を問わずいろんな音楽を聴くし、かなりのヘビーリスナーだと思うんですけど、(CDショップの)試聴機でイントロが好みじゃないと飛ばすこともあるんですよね。ウチのキーボードのマイケル(THEドリーム)なんて、いきなりサビまで早送りするんですよ(笑)。
ノブリル ひどいですよね(笑)。それは極端ですけど、確かに「30分超えるとつらい」っていうのはあって。レコードの片面くらいのサイズがちょうどいいというか。
はるきち 音楽好きを自称してるミソッカスのメンバーもそうなんだから、今どきの若者たちはもっとそういう傾向があるんじゃないかって。だからミニアルバムを出し続けていたんですけど「そろそろフルアルバムを出さないとね」ってことで。
ノブリル そうですね。その分、いろんな趣向を詰め込んで。
はるきち いろんなカラーの曲が入ってますからね。
──音楽ナタリーに掲載したキュウソネコカミのヤマサキセイヤさんとはるきちさんの対談でも、「フルアルバムを出して、ミソッカスの世界観をきちんと示すべき」という話が出てましたよね(参照:デストロイはるきち(ミソッカス)×ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)対談)。
はるきち あ、そうですね。セイヤにも言われたし、キュウソのマネージャーのはいからさんにも言われて(笑)。あのタイミングで「フルアルバムを出そう」という話はあったんですけど、彼らと話して「やっぱりやらなくちゃ」と思いましたね。
ノブリル あの対談はすごかったですね(笑)。
はるきち 言われっぱなしだったからね。愛のある言葉ばかりなんだけど、図星をどんどん突いてくるから(笑)。
なぜ「フォークロア」?
──初めてフルアルバムを制作するにあたって、コンセプトやテーマは決めたんですか?
はるきち 最初にあったボヤッとしたテーマは“砂漠”だったんですよ。まず「闇夜のキャラバン」と「シャバ・ラ・カタブラ」ができたんですけど、「シャバ・ラ・カタブラ」の中にインド音楽っぽいリフがあって、そこから「“砂漠”はどう?」っていう話が出てきて。何かテーマがあったほうが作りやすいんじゃないかなって。
ノブリル はい。
はるきち あと、僕ら2人が無類のフラメンコ好きっていうのもあって。
ノブリル 2人でフラメンコのユニットをやったこともありますからね。
はるきち 俺がギターでバッキングして、ノブリルがピロピロギター弾いてただけなんですけど(笑)。
──インド音楽、フラメンコの流れで「フォークロア」。確かにどちらも民族音楽ですからね。もともとそういう音楽が好きだったんですか?
はるきち そうなんですよ。大学生のときに「自分の音楽のルーツを探ってみよう」と思ったことがあって。いろんな音楽を聴いていくうちに、ケルト音楽やフラメンコにたどりついたんです。そのときに「そうか、俺は民族音楽が好きなんだな」って思って。だから、急に“砂漠”って言い出したわけではなくて。
──“砂漠”と“民族音楽のテイスト”がつながっていたと。
ノブリル 自分たちのルーツでもありますからね。
はるきち うちら2人が一番多く曲を作るので、そういうふうにテーマを決めることは大事かなって。フルアルバムだからたくさん曲を作らなくちゃいけないし、だったら得意なジャンルでいこうってことですね。
ノブリル アレンジしていて方向性に迷ったら「今回のテーマはフォークロアだから、こっちにいきましょう」って決められるんですよね。
はるきち なんでもやりがたりなので、1曲で5通りくらいアレンジを考えたりするんですよ。今まではそこから多数決で決めてたんですけど、今回は「一番フォークロアっぽいのはコレだよね」っていう感じで。自分たちで制限を決めて、その中で羽を広げるというか。
ノブリル 着想の足がかりにもなりますからね。ミソッカスはわりとなんでもやれるバンドなんだけど、大事なのはその出し方だと思うんですよ。器用貧乏にならないように、ある程度は絞らないとダメだなって。
はるきち “エセ感”も出したいんですよね。ガッツリとレゲエをやるとかではなくて、それを自分たちなりに噛み砕いてロックに混ぜるっていう。それも僕らのオリジナリティだと思うので。
──今回のアルバムにもフォークロアだけではなく、ソウル、ジャズなどのテイストも入ってますからね。あらゆる音楽を飲み込む雑食性は、日本のポップスの伝統と言えるのかも。
ノブリル あ、そうですね。モーニング娘。('16)とかアイドルも好きなので。彼女たちの曲はジャンルの横断っぷりがすごくて、楽曲がカラフルじゃないですか。学生時代はブルマン藤井(B, Cho)と僕、マイケルで一緒にモー娘。を研究してたんですよ(笑)。そういうところからの影響もミソッカスにはあるのかなって。
はるきち そうなんだ。僕はガチでモー娘。のオタクでしたけどね(笑)。
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- 1stアルバム「追撃のフォークロア」 / 2016年3月2日発売 / avex trax
- CD2枚組 3564円 / AVCD-93401~2
- CD 2916円 / AVCD-93403
収録曲
- ゴーストシップラブストーリー
- 17の夜
- 情熱のハッピーエンド
- シャバ・ラ・カタブラ
- B-B-B-Bourbon
- バイトロワイヤル
- 布団に捧ぐセレナーデ
- 五人の鉱夫
- 闇夜のキャラバン
- ヨーラレ
- 世界征服
- 最終列車は汽笛を鳴らす
CD2枚組 DISC 2(※セルフカバー集)
- パパパ
- SEXY DYNAMITE
- マッドシュリンプス
- ム○ンライト伝説
- ホリデイ
- ワルイトモダチ
- 擦り切れた靴とロケット
ミソッカス
デストロイはるきち(Vo, G)、ノブリル(G, Cho)、ブルマン藤井(B, Cho)、マイケルTHEドリーム(Key)、ジャンボリー加藤(Dr, Cho)からなる5人組。デストロイはるきちの生み出すキャッチーなメロディと古今東西問わず幅広い音楽ジャンルを融合させた多彩な楽曲展開を持ち味とするロックバンド。2006年12月に「みそっかす」名義で結成され、メンバーチェンジやパートチェンジを経て現在の編成になる。地元愛知や、大阪で開催した自主企画でソールドアウトが続出するなど、精力的なライブ活動で着実に知名度を上げていく。2013年にはオーディションイベント「出れんの!? サマソニ!?」で勝ち残り、「SUMMER SONIC 2013」東京公演への出演を果たした。2014年1月1日にバンド名を「ミソッカス」に改名。2015年9月にシングル「ライジングレインボウ」でエイベックスからメジャーデビューし、2016年3月にアルバム「追撃のフォークロア」をリリースする。