ナタリー PowerPush - MinxZone
結成13年目遅咲き3人組 バンドストーリーと1stシングル
3人組バンド・MinxZoneが初のシングル「そりゃそりゃそうじゃん~新世代のマーチ~」をリリースした。今作には、悩みを吹き飛ばすようなポップでキャッチーな表題曲、身近にいる大切な人への感謝を歌った「花歌」などが収録されている。
1999年結成の彼らは、2002年からほぼ毎日路上ライブを行い、バンドの地盤をしっかりと固めてきた実力派。耳に残るグッドメロディと聴き手の心を優しく包み込む歌詞を武器に、国内はもちろん、オーストラリアなどの海外でも人気を獲得し、昨年4月には念願だったメジャーデビューを果たした。ナタリー初登場となる今回は、結成から13年目を迎えたバンドのヒストリーを中心に話を訊いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 平沼久奈
悲しい曲でもどこかに“ひとポジティブ”
──MinxZoneはかなり長いキャリアを持っているんですよね。結成は1999年だとか。
yukari(Vo) そうなんです。今年で13年目ですね。
waio(G) もうベテランです。でもルーキーという。
ayuha(Dr) 去年メジャーデビューしたばかりなので、気持ち的には新人なんです。
──どのようにしてこの3人が集まったんですか?
yukari 大阪の音楽専門学校で出会いました。私とwaioが同じクラスで一緒にバンドをやっていて、ドラム専攻のクラスにいたayuhaはそこで違うバンドをやっていたんです。でも卒業間際にうちのバンドのドラムとベースが抜けることになって、ayuhaのバンドはボーカルとギターが抜けたんで、合体するにはちょうどええやんって話になったんですよね。
ayuha それまではほとんど話したこともなかったんですけど、学校内のイベントでお互いのライブは観ていて、「歌とギターがいいなあ」って内心思ってたんですよ。
yukari こっちはこっちで「あのドラム来てくれたら最強になる気がする」って思ってたから。で、99年の11月に結成して、そこからずーっと一緒にやってます。
waio 最初の半年ぐらいはお互いのバンドで作った曲をやったりしてたんですけど、そのあとからはMinxZoneとして曲を作り出していくようになって。
ayuha どんどんできて、一気に曲が増えたよね。
──その段階でバンドとしての方向性はどのように考えていたんですか?
waio 最初は今と比べるとロックとかパンクの色が入った音だったんですけど、キレイな歌メロっていう部分は大事にしてましたね。あとはポジティブな歌詞。悲しい曲でもどっかに“ひとポジティブ”入れておきたいっていう気持ちがありました。そこは今も昔も変わってないところです。
yukari 元々そういうタイプの曲が3人とも好きやったんで、話し合うまでもなく自然とそっちの方向に進んでいったんですよね。迷いなく。
waio バンドを結成した当時ってシーン全体のCDのセールスもものすごく好調な時期やったから、とりあえずチャートの1位から10位までは聴いとかないとっていう感じやったんですよ、僕ら自身。その中で感じていたJ-POPの良さみたいなところが自分たちの音楽に影響してると思うんですよね。
──確かにMinxZoneは純粋なポップソングを鳴らしていますよね。
waio J-POPに対して偏見を持っているバンドもいるとは思うんですけど、僕らはそういうイメージすらも変えてやろう、ぐらいな気持ちなんです。90年代のようにメロディの良い曲がどんどん世の中にあふれるようになればいいなっていう思いで、今も曲は作ってますね。
路上ライブは今でも続けている僕らの原点
──当初からメジャーデビューを目標として掲げていたんですか?
yukari ずっと目標にしてましたね。やっぱり結成した当時、メジャーデビューってすごいもんやっていう思いがあったんですよ。いっぱいお金もかけてくれるんとちゃうかなとか(笑)。
waio 時代的にそういうイメージがあったよね。
──CDバブルの頃ですもんね。
waio そうそう。だからとにかく、あの噂の“メジャーデビュー”をしてやるんだっていう気持ちがあったんです。当時はバンドのプロフィール欄にも「目標:メジャーデビュー!」って書いてましたし。
──そして2002年に上京されてからは、路上ライブを精力的に続けてきたそうですね。
yukari はい。大阪時代はほんとに趣味みたいな感じで音楽をやっていたので、そんな甘い考えじゃダメだっていうことで東京に出てきたんですね。でも実際、東京に出てきてみるとバイトに追われる生活になっちゃって、結局大阪時代とあまり変わらない状況で。で、それを変えるために路上ライブをしようっていう話になったんです。最初は不定期やったんですけど、ちょこちょこやり続けるうちにお客さんが増え始めてきたので、それからは雨の日以外毎日やるようになったんです。
ayuha でも挫折の毎日やったよね。なんでみんな足を止めてくれないんやろうって考え続ける日々で。
yukari 泣いて帰ることばかりでしたからね。音楽やめようかなって思ったこともありました。でも、1人でも聴いてくれる人がいると、ものすごくがんばる力になるんですよ。チラシを受け取ってくれただけでものすごくやる気につながるし。一方で「何がダメなんやろう」って、自分と向き合う時間もすごく増えたので、それが成長につながったんだと思います。
──路上ライブを始める前とあとでは何が変わったと思いますか?
waio 路上を経験したことでパンクやロック色が抜けたところもあったし、イントロや間奏が長いとかっていう自己満足的な部分もなくなってきて。作り手として、聴く人の気持ちを考えることができるようになって、バンドとしても劇的に変わったと思います。路上ライブは今でも続けているし、そこが僕らの原点でもありますね。
CD収録曲
- そりゃそりゃそうじゃん~新世代のマーチ~(NHK Eテレ アニメ「はなかっぱ」オープニングテーマ)
- 花歌 (プライベートブランド「styleone」CMソング)
- 紙ピアノ 2012
- そりゃそりゃそうじゃん~新世代のマーチ~ Instrumental
- 花歌 Instrumental
MinxZone(みんくすぞーん)
1999年11月にyukari(Vo)、waio(G)、ayuha(Dr)の3人で大阪にて結成。2002年に上京し、都内で路上ライブを始める。2008年2月には、新宿の路上ライブでの出会いがきっかけでオーストラリアの大手デパート「デビッド・ジョーンズ」のCMソングに「ビニール傘それぞれの雨のち晴れ」が起用され話題に。その後海外でのライブイベント出演や路上ライブ活動、国内でのリリース活動を重ね、2011年4月にミニアルバム「紙ピアノ」でメジャーデビュー。以降も自分たちの原点である路上ライブは継続して行っている。2012年4月、メジャー1stシングル「そりゃそりゃそうじゃん~新世代のマーチ~/花歌」をリリースした。
なお、yukariは本名「十川ゆかり」名義で書籍「この世で一番大切な日」を、2011年4月に「紙ピアノ」と同時発売。この本は誕生日にまつわる31のエピソードを集めたエピソードブックで、現在5万部を越えるヒットとなっている。