ナタリー PowerPush - 三森すずこ

私とみんなの期待する“三森すずこ”

自分の気持ちが人生から置いてけぼりを食らった

三森すずこ

──その「ミルキィホームズ」なんですけど、アニメはもちろん、三森さんたち出演声優の組んだ同名ユニットのCDもヒットしました。

でもこれも私が本当にアニメのことを知らなかったって話なんですけど、声優さんっていうのは本当に裏方、表にはあまり出ない仕事だと思い込んでいて。声優としての最初の仕事がミルキィホームズの衣装の採寸だったんですけど「誰の採寸ですか?」って聞いてましたから。で、できあがってきたのがあのドピンクの衣装で(笑)。アイドルとも違うけど、ミュージカル女優とはもちろん違うし、最初は自分の気持ちが自分の人生から置いてけぼりを食らってるような気がしてました。

──何をきっかけに気持ちと実人生に折り合いがつきました?

やっぱりファンの方の存在が大きかったです。ミルキィのデビュー曲の「雨上がりのミライ」のPVを撮った頃までは「私声優になったはずなんだけど?」ってどこかで思ってたし、ミュージカル時代の人に「すずこ何やってるの?」みたいなことを言われたこともあったし。でもその年(2010年)の「アニサマ」に出していただいたり、自分たちのライブをやったりして、どんどんどんどんミルキアン(ファン)の人と会う機会が多くなったことで「あっ、みんな私たちのアニメを愛してくれてるんだ」ってだんだん理解できるようになって、気持ちと人生がつながった感じですね。

──そして2012年にはミルキィホームズで武道館ライブも行っている。

あっ、武道館のときは一瞬昔の私に戻りました。「埋まらなかったらどうするの?」って。最終的には公演のたびに「今回のノルマは200枚です」って言われてたミュージカル時代がフラッシュバックして「結局この世界もノルマかいな……」って悩んじゃって(笑)。

──4人組で武道館公演だから、もしチケットノルマがあったら1人あたり2500枚ですよ(笑)。

なのにノルマゼロで埋まってくれて(笑)。「私たちのことを観たいと思ってくれる人がこんなにたくさんいる」っていうことに本当に感動したし、なんて幸せなことなんだろうって思いました。で、その武道館あたりでこう腹を括れて「私のやりたいことはこれ!」って素直に言えるようになった。声優としてすごくやりやすくなった気がしてます。

“三森すずこ”の不思議な距離感

──すでに武道館のステージを踏んだ経験もある人にとって、去年の夏のソロデビューってどういうものでした?

すごくうれしかったけど「1人で大丈夫なのかな?」みたいな感じはしてました。ミュージカル部の頃からずっと団体行動をしていたので、みんなと何かをすることに慣れきっちゃっていて。自分の不得意な部分は誰かが埋めてくれるかなっていう、ちょっと甘えみたいなものがあったりしたので、ちょっぴり不安でした。

──でもソロデビューはうれしかったわけですよね。

三森すずこ

ミュージカルをやっていた頃からプリンシパルになりたい、自分だけの声をお客さんに聴かせたいっていう気持ちはずーっとありましたから。

──ただこれも三森さんの面白いところなんですけど、シングル曲についてのインタビューを読むと、ちょっと不思議な距離感で楽曲と付き合ってる感じなんですよ。

そうですか?

──選曲会議では積極的に意見を出していると言いつつ、インタビュアーから「この曲ってすごく夏っぽいですよね?」って聞かれたら「そうですよね! 私も夏っぽいと思います!」ってちょっと他人事っぽく答えてたりしていて。

ああ、確かに曲に対してはけっこう客観的かも。というのも歌っているときは“三森すずこ”っていう人になってる、みたいな気持ちがどこかにあるんです。だから曲を選ぶときも“三森すずこ”っていう人に似合う曲を探しているというか。でも今もそうなんですけど、インタビューに答えているときの私はもっと素に近いから、そういう事態が巻き起こるんだと思います(笑)。

“三森すずこ”=お庭の似合う上品なお嬢さん

──歌っているときの“三森すずこ”ってどういう人ですか?

キラキラしていて、お庭の似合う上品なお嬢さんって感じ。“お嬢さま”じゃなくて“お嬢さん”ですね(笑)。ただそれも「キャラを作ってる」っていうんじゃなくて、自然とそうなっちゃってる感じなんですよね。

──実はそれって今話をしていてもそうだし、過去の記事を漁っていても思ったことなんです。ちょっとツッコんだ話に対してもちゃんとユーモアを交えて応答していたから。面白くて明るくて、しかもちょっと品のいい、それこそお嬢さんっぽい感じがするというか。

じゃあ作戦成功ですね(笑)。でもホントに素の三森すずこのときも上品さは絶対になくさないようにはしていて。“三森すずこ”はそういう上品でありたい自分とか、キラッとしていたい、ちょっとミステリアスでありたい、ポジティブでいたい自分を強調した存在なんだと思います。素の三森すずこは「夢見る!信じる!未来叶えて!」って言えちゃうほどスカーン!とポジティブな感じではないですし。ちょっと自分に自信がなくて「これ大丈夫!?」「ホントに大丈夫!?」っていっつも言ってるタイプですから。

──ありたい“三森すずこ”像を歌うことが、ソロボーカリスト三森すずこの自己表現?

そういうことなんだと思います。

1stアルバム「好きっ」 / 2014年4月2日発売 / ポニーキャニオン
Blu-ray Disc付き初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc+写真集+ライトノベル] 4860円 / PCCG-01388
DVD付き初回限定盤 [CD+DVD+写真集+ライトノベル] 4104円 / PCCG-01389
通常盤 [CD] 3240円 / PCCG-01390
CD収録曲
  1. グローリー!
    [作詞:しほり / 作曲・編曲:EFFY]
  2. 夢見る!信じる!未来叶えて!
    [作詞:しほり / 作曲:太田雅友 / 編曲:EFFY]
  3. サンシャインハーモニー
    [作詞:ENA☆ / 作曲:前澤寛之 / 編曲:yamazo]
  4. 会いたいよ…会いたいよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲・編曲:太田雅友]
  5. ミライスタート
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:俊龍 / 編曲:Sizuk]
  6. みんなでイエー☆オーッ!!
    [作詞・作曲・編曲:小松一也]
  7. サマーバケーション
    [作詞・作曲:しほり / 編曲:EFFY]
  8. 約束してよ?一緒だよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:shilo / 編曲:中西亮輔]
  9. スイートホーム
    [作詞:YADAKO (Myu)、三森すずこ / 作曲・編曲:Masse (Myu)]
  10. 私..見守っているよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:しほり / 編曲:森慎太郎]
  11. 恋のキモチは5%
    [作詞・作曲・編曲:矢野博康]
  12. 大切なキミ
    [作詞:SUIMI / 作曲・編曲:板垣祐介]
  13. 全部受けとって、強く抱きしめて。
    [作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:yamazo]
  14. ユニバーページ
    [作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:増田武史]
初回限定盤DVD / Blu-ray収録内容
  • ミュージックビデオクリップ
    「会いたいよ...会いたいよ!」「約束してよ?一緒だよ!」「ユニバーページ」「スイートホーム」「サン シャインハーモニー」
  • メイキング映像
    「サンシャインハーモニー」
  • 三森すずこスペシャルウインク集
三森すずこ(みもりすずこ)
三森すずこ

東京都生まれの声優、ボーカリスト。ミュージカル女優として活動したのち、2010年アニメ「探偵オペラ ミルキィホームズ」のシャーロック・シェリンフォード役で声優デビュー。以来同シリーズや「ゆるゆり」「神様はじめました」「ラブライブ!」など人気作で主要キャラクターを演じる。また2010年には「ミルキィホームズ」の出演声優からなる同名ユニットとしてCDデビューを果たし、以降「Animelo Summer Live」に毎年連続出演。さらに「ラブライブ!」の劇中ユニットμ’sの一員として2014年にさいたまスーパーアリーナで2DAYS公演を行うなど、活発な音楽活動を展開する。そして2013年4月にはシングル「会いたいよ…会いたいよ!」でソロデビューし、同7月には2ndシングル「約束してよ?一緒だよ!」、10月には初のアニメ主題歌となる「ユニバーページ」を三森すずこ名義でリリース。2014年4月には1stアルバム「好きっ」を発表した。