milet|新たな扉を開け放つ、ニューモードな「Who I Am」

本当にみんなの耳の中に入ってたいんだ

──miletさんはデビューから1年の集大成としてアルバムを作り上げ、その後予定されていたツアーはその先へ進むためのものだったと思うんです。その足を止めざるを得ない状況になり、歯がゆい思いもいっぱいしたと思います。

そうですね。このコロナ禍で自分の生き方や、みんなに何をどう伝えるかということをすごく考えました。やっぱりツアーが中止になったのはすごく、ものすごく不安なことだったんです。アルバムを出せて、自分が思っていたよりもたくさんの人たちに届いて、たぶんその方たちがライブに足を運んでくださる予定だった。私にとってアルバム発表後のタイミングでのツアーは大きなステップでしたし。でもそれができなくなって、私の歌と出会ってくださった人が離れてしまうかもしれないという不安は、やっぱり少なからずあって。そんな毎日の中で、テレビに出させていただいたり、CMの曲を制作させていただけたりしたのが本当に救いでしたし、SNSとかのありがたさも感じましたね。そこでポジティブにつぶやいていくことで、みんなとつながれているという実感を得ることができた。人とのつながりが私の中でどれほど大事かということがわかったし、私は本当にみんなの耳の中に入ってたいんだと思ったんです。それをもっと音楽で深めないといけないという思いをもって今作の制作に入りました。

──miletさん、なんかちょっと変わりましたね。

えっ、そうですか?

──前回お会いしたときまでは、もう少し運命に身を任せてナチュラルに立ってる感じだったけど、今はもう少し能動的というか、運を引き寄せるスタンスになっているなと。

確かに何か変わった……かもしれない。デビューして最初の1年は右も左もわからなくて、周りの人に「この仕事はこういうものだよ」と教えてもらって、それをがんばってこなして、それだけで精一杯でした。あれから1年経って、少し周りを見る余裕が出てきたのかも。一方で、歌番組で大先輩のミュージシャンの方とご一緒する機会もあるんですが、皆さん緊張感を持ってパフォーマンスされていて。その歌や音楽に対する姿勢を見て気が引き締まるんです。音楽番組のステージは「1曲入魂」みたいな気合いが必要で、私も失敗したら死ぬんじゃないかっていう気持ちで立つところがあるんですけど、皆さんそうなんだと思えると救いになる。そして、そう感じている人たちと同じ世界にいることが向上心を燃やす糧になります。

──どんどん慣れて、こなせたらラクなんでしょうけど、表現ってそういうことじゃないですよね、きっと。

いやあ、なんか思ったよりずっと戦ってますね。めっちゃ疲れます(笑)。もちろん曲のカラーによるところもあって、例えば「us」なら楽しんで歌おうという気持ちになるけど、「inside you」みたいな曲は本当に張り詰めちゃう。

──おそらく「Who I Am」もそうでしょうね。

そうですね。今回の曲もきっと緊張する気がします。

milet

Toruさんは歌を引き立たせてくれる

──「Who I Am」のアレンジは、声にスポットライトが当たって歌の主人公が1人であることが強調される瞬間があると思いました。さっきmiletさんがテーマとして掲げた、女性が自分の足で立っているというテーマにもつながってくると思いますが。

うんうん、そうですね。今言っていただいたのはサビに入る前、音がほとんど消えて声がひとりぼっちになるところだと思うんですけど、私はサビ前で一度テンションを落とすのが好きで、それをToruさんもわかってくれてる。2人で何曲も一緒に作ってきたので、思考がすごく似てるんですよね。あとToruさんが言ってくださったのが、「俺はライブアレンジで映える曲を作る」ということ。それは彼がバンドのメンバーとしてたくさんのステージに立ち、いろんなアレンジで演奏してきたからこそだと思うんです。

──なるほど、それはスタジオを主な活動場所にしているプロデューサーとは違う視点かもしれない。

違うと思います。ほかのプロデューサーは歌とトラックを同化させてくれる感じなんですけど、Toruさんの場合、歌を引き立たせてくれる。歌っているときにバンドメンバーの奏でる音に強い力をもらえるアレンジなんです。

──さすがバンドマン。

そうなんです。ステージの上に立って音を奏でている人ならではの考え方だと思うし、それを私のステージでも実践させてくれようとするところに愛があるなと思う。「がんばれよ」って言ってくれているように感じます。

音楽が心を安定させてくれた

──さて、この新作が出たあとには配信ライブがあります。

ひさびさのライブなので、どうなってしまうのかちょっと心配でもあり、楽しみでもあり。配信ならではの楽しさもあるから、おうちでおいしいお菓子を食べながらとか、お酒を飲みながらとか、自由に楽しんでくれたらいいなと思います。

──miletさんはほかのアーティストの配信ライブを観たりします?

観てます。以前よりずっとたくさんの配信ライブを観るようになりました。配信ライブは部屋のスピーカーやイヤフォンで聴くと、自分だけに歌ってくれているような気分になる。その1対1の感じが配信ならではだなと思います。それとやっぱり、気軽にチケットが買えて携帯とかで観られるのってすごく便利ですよね。チケットが取れなくて行けなかったはずのライブが観られたり、リアルタイムで都合がつかなくてもアーカイブで観られたり。私のツアーも中止になってしまったけど、抽選に漏れてチケットを取れなかった人が「配信で観られるの? ありがとう!」って言ってくれて、ああそういう人もいるんだって思ったり。たくさんの人に届けられる機会をもらったので、まっすぐ届けたいです。全力でやります!

──miletさんなりの配信ライブの楽しみ方はありますか?

私はめちゃくちゃ一緒に歌ってます。もうね、歌詞カード片手に歌いまくる。

──ライブ会場だと、静かな曲で一緒に歌うのはちょっと周りを気にしちゃいますもんね。

そうなんですよ。その点、おうちにいると周りの目なんて気にせずに思いっきり歌えるし、泣ける。あと、友達や家族に「私この人が好きなの、観て!」って観せて回ったり。そんな楽しみ方をしています(笑)。

──なるほど(笑)。ライブを終えたら、すぐに年末ですね。

ホント、あっという間ですね。今年はいろいろ世界が揺れ動いて、精神的にも健康に保つのが大変でしたけど、音楽が心を安定させてくれたので、音楽やっていてよかったなと思ったし、発信できる場所があることのありがたみを感じました。これからもみんなとつながる機会を作れるよう、新しいことにもどんどん挑戦していきたい。そうすることで課題もどんどん増えるけど、それは自分で決めたことだから、すごく楽しいんですよ。

milet

──「Who I Am」で歌われているとおり、自分でやるしかないですもんね。

そう、この世界はどんどん意見を言って、やりたいことを自分でやらなきゃいけないんだということがわかってきました。皆さんもこの曲を聴いて、新しい扉を開けていきたいと思ってもらえたら、この曲を作った意味があるなと思います。

──来年はどんな年になるでしょうか。

ええー?(笑) そうですね、やっぱりライブがしたいですね。

──本当にそれはみんなの願いですね。

10月に大阪のフェス(「大阪文化芸術フェスpresents OSAKA GENKi PARK」)に出たんですよ。10カ月ぶりに有観客のライブができて、もうずっと泣きそうなぐらい幸せで。お客さんたちはマスクをしてるんですけど、マスクの下が笑顔だってわかるんです。やっぱり同じ空間で音楽を生身の体で感じる感覚、一緒に生きているんだっていうあの感じは、生のライブでしか味わえないと再確認しました。次に皆さんと有観客のライブで会えるときは、みんなで一緒にヘブンになっちゃうと思う!

──その日がくるのを願っています。

ね、生きるということにこんなに重みを感じることはないですけど、がんばりましょう。私もまだまだやりたいことがたくさんあるので、来年もがんばっていきます!

ライブ情報

「milet ONLINE LIVE "eyes" 2020」

配信日時:2020年12月5日(土)20:00~