音楽ナタリー Power Push - 少年がミルク

極東からリアルを叫ぶ

逃げ道がなかった「CURTAIN CALL」

──先ほど少年がミルクさんは「今作はシンプルな曲が多い」と話していましたが、2曲目「CURTAIN CALL」は特にほかの曲に比べてストレートな楽曲だと感じました。

おそらく和樹さんは少年がミルクに対してピュアなイメージを抱いていると思うんです。それが曲に表れたのがこの「CURTAIN CALL」。すごくシンプルな曲だからこそ、歌詞を書くのが難しかったですね。

──曲がシンプルなほうが歌詞を書くのが難しいんですね。

テンポが遅いからそんなに言葉数も多くできないし。ほかの言葉で武装できないというか、逃げ道がないなって思いました。ひさびさに重めなガチな歌詞を書いた曲ですね。精神的にもしんどかった。

──でもこの曲にはそこはかとなく前向きな感じがしました。

少年がミルク

最終的には希望の歌になるようにしたくて。この曲の歌詞を書くとき、切ない世界観の映画的な風景が見えてきたので、その風景を素直に書いたんですよね。私、岩井俊二さんの「PiCNiC」って映画が好きで、この曲はその映画の影響を強く受けていて。「PiCNiC」はCHARAと浅野忠信が2人で遠くまで行って最終的にCHARAが死んじゃうんですけど、ずっと私はCHARAに共感してきたし、CHARAの側に立って物語のことを考えていたんです。でも今回詞を書くときは、残されてしまった浅野忠信の側に立った感じで言葉が出てきて。本当はね、映画の中で出てくる「世界の終わり」って言葉も使いたかったんだけど、どうしてもしっくりこなくて。

──「世界の終わり」という言葉自体がいろんなところで使われ尽くしている感じがしますからね。

そうそう。今「世界の終わり」って言っても、本当に伝えたい「終わり」が伝えられないなあって。ちょっと悔しいけど、言葉って早い者勝ちなんですよね。

真ん中には届かないかもしれないけど

──前作のタイトルが「KYOKUTO参番地セピア座」で、今作の「反骨処女」の歌詞にも「KYOKUTO」という言葉が使われています。これらは東の果てを意味する「極東」ってことですよね?

そうです。東の端っこから歌を発信していますっていう意味で。

──「極東」という言葉は表現者によっては使うのをためらう表現だと思うんです。西洋中心の世界地図で東の端にあることから、日本を含むアジア各国が「極東」と表現されるようになったわけですから、日本が中心にあると考える人からしたら違和感のある言葉なんですよね。

少年がミルク

あ、でもそういう意味で使ってますね。もともと自分たちが真ん中にいるだろうなんて思っていないし。みんなとは離れたところで歌ってて、もしかしたら世界の真ん中にいる人には届かないかもしれないけど、それでもいいかって思ってる。

──今作に収録されている「Word flood Moment」の曲中には、少年がミルクさんが「もしもし」って語りを入れている部分がありますよね。

そう。曲の中で「もしもし」って言うんだけど通じてなくて、結局「え?」とか「は?」とか言ってるだけのところがあるんです。これはすごく遠くにいるからうまく通信ができないっていう意味。単に「極」って言いたくて「KYOKUTO」って言葉を使っているのもあるけど、自分たちが真ん中を歩いていないっていうのは十分承知しているし、それでいいとも思ってますから。

命がけで自由に

──今作を携えた全国ツアー「サディスティック猫ぱんちTOUR2017」もすでに開催されています。ライブはいかがですか?

少年がミルク

今回のツアーはコドモメンタルINC.のアイドルちゃんたちと競演することが多いんですけど、メンバーはみんないい子だし、お客さんもちゃんと音楽に向き合ってくれる方々が多いから楽しんでいます。本当はレーベルの社長がライブの演出をいろいろ考えていたみたいなんですけど、今作が完成して「しっかり歌を届けることに勝る演出がない」って結論になったみたいで(笑)。今回できた曲を歌いに各地を回りたいと思います。

──少年がミルクとしてのデビューからまだ1年も経っていませんが、制作やライブの活動などとても順調そうですね。

普段はあんまり言わないけどコドモメンタルINC.っていうレーベルにすごく感謝してるんです。ひねくれ者だけど、ひねくれ者なりに恩返しはちゃんとしたいと思ってて。だから今年は本気を出して、命がけで自由に活動しようと思ってます。それが恩返しになるかはわからないけど、私にできることってそれくらいしかないですから。

2ndミニアルバム「GYUNYU革命」
2017年2月8日発売 / 1080円 / コドモメンタルINC / CMI-0018
Amazon.co.jp
収録曲
  1. 反骨処女
  2. CURTAIN CALL
  3. ダダイズム
  4. Word flood Moment
  5. みなしごはっち
サディスティック猫ぱんちTOUR2017
  • 2017年1月29日(日)北海道 KLUB COUNTER ACTION
  • 2017年2月12日(日)大阪府 CLAPPER
  • 2017年2月26日(日)東京都 晴れたら空に豆まいて
  • 2017年3月12日(日)長野県 ALECX
  • 2017年4月8日(土)愛知県 CLUB Zion
少年がミルク(ショウネンガミルク)
少年がミルク

syamによるソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施した。同年9月には全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリース。2017年2月には2ndミニアルバム「GYUNYU革命」を発表した。現在、5都市を回る全国ツアー「サディスティック猫ぱんちTOUR2017」を開催中。