少年がミルクが1stフルアルバム「トーキョー・ネコダマシー」をリリースした。
2016年9月のデビュー以来、3作のミニアルバムを発表してきた彼女。今作「トーキョー・ネコダマシー」は、これまでのロック色の強い作風とは異なるポップなナンバーが多数収録された1枚に仕上げられた。音楽ナタリーでは少年がミルクに4度目のインタビューを実施。作曲を手がける水谷和樹(Gauche.)との関係性の変化、少年がミルク自身が感じている表現者としてのアプローチの変化などをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦
東京の残酷なところも好き
──前作「空砲一揆アノニマス」のインタビューのときに、「なぜ空砲なのか」という話をしました(参照:少年がミルク「空砲一揆アノニマス」インタビュー)。今作のタイトルが「トーキョー・ネコダマシー」で、「猫だまし」って空砲に似てるなって思ったんです。徹底して相手に触れていない。
確かにそこはブレてない(笑)。いろいろな言葉を考えてたんだけど、空振りしてる感じがやっぱりしっくりきた。最初は「トーキョー・ネコダマシ」だったんですけど、急にレーベルの社長が「『ネコダマシー』にしたい」って言い始めて。“デモクラシー感”も出るからそれもアリだなと思って「トーキョー・ネコダマシー」に決まりました。
──タイトルに「トーキョー」と入れるところはブレなかったんですね。
はい。去年ようやく東京に拠点を移して曲を作るようになって。今までも新宿とか渋谷を舞台にした曲は書いたことがあったんですけど、違う目線で東京のことを見られるようになりました。
──ミルクさんにとって東京ってどんな街ですか?
ある意味、優しい街だと思っています。他人に対して興味がないから、どんな異物でも存在することを許してくれると言うか。白い目で見られることがあんまりなくて。
──都会での距離感がミルクさんにとっては心地いいんですね。
私は夜中の2時とか3時にふらっと出歩きたくなる人間なんです。誰もいない地方とかで夜で歩いてると変な人だと思われちゃうんですけど、新宿とか渋谷とかって深夜でも普通に人が歩いてるからそうは思われないんですよ。それと、私が詞に書く「暴力」みたいな言葉がすごくしっくりくる街だと思っていて。東京の残酷なところも好き。
──東京に移り住むことで、歌詞にも影響は出ましたか?
矢野顕子さんが歌うTHE BOOM「中央線」のカバーとかがすごく好きでよく聴いてたんですけど、地方に住んでいると実際の中央線がどういうものかわからないんですよね。だから自分の曲に「中央線」とか「環七」とか書いたことなくて。東京に住むようになってそういう言葉だけ知ってたものに近付いてみました。……まあ、中央線に乗ってみたときとか、全然なじめなかったんですけど。
──そのなじめなかった感じも歌詞に込められていますよね。「トーキョー・ブルーガール」では、都会から弾かれた人が描かれています。
私自身が都会から弾かれた感覚をうまく歌に込められた気がします。
猫派って言うより猫そのもの
──あと今作のタイトルに「猫」が入っているのもちょっと気になったんです。ミルクさんのキャッチコピーに「左寄りの黒猫交じり」という一節があって。デビュー時から「猫」というキーワードは存在していたんですけど、「猫」という言葉が曲のタイトルになったことはこれまでなかったんですよね。
確かにそうですね。
──ミルクさんにとって猫ってどういうものですか?
なんだろう。猫って不器用で自分のことが嫌いなんだと思うんです。で、私にとって猫がどういうものかって言うより、私自身が猫みたいな存在で……。
──少年がミルクは猫である?
うん。昔から人間よりも猫のほうが好きだし、人間より猫に好かれてきたし。「自分は猫に生まれればよかった」って、ずっと思ってる。よく「犬派か猫派か」みたいな話があると思うんですけど、別に猫派の人と話が合うわけじゃないんです。だって猫派って言うより自分のことを猫そのものだと思ってるから。
──「猫好き」みたいな立ち位置とは明らかに違うわけですね。
路地裏にいる、愛されたくても「愛して」って言えないボロボロの猫が私。それを「かわいそうに」って触りに来てくれるのが、少年がミルクのファンの方々だと思ってます。私が言うのもなんですけど、猫っぽい人ってかわいそうなんですよ。愛してほしいくせに「別に1人で全然平気」とか言っちゃう感じが。だから少年がミルクの歌でそういう人たちをこっそり救えたらいいなって思っています。
──アルバムには「黒猫横丁パラレルツアー」「負け猫」という、猫をモチーフとした曲が2曲入っています。ミルクさんは“自分が猫であること”を大事に思っている部分もあるんですよね?
ありますね。ただ別に猫でいたいわけでもないんですよ。犬にも憧れてるところがあって、犬っぽい振る舞いとかいろいろ試すけどやっぱりダメなんです。結局私は猫でしかないんだっていつも思ってる。
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「うるさいのはもういいです」
- 少年がミルク「トーキョー・ネコダマシー」
- 2018年3月21日発売 / コドモメンタルINC.
-
[CD]
2000円 / CMI-0034
- 収録曲
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- トーキョー・ブルーガール
- 黒猫横丁パラレルツアー
- ハロー神様ダンス
- BLACKPOOL
- 負け猫
- floaters
- ヘミリパルカル
- 永遠エキゾキッチュ
- ERROR
ライブ情報
- 少年がミルク「ニッポン・ネコダマシーTOUR」
-
- 2018年4月7日(土)北海道 KLUB CONTER ACTION
- 2018年4月21日(土)群馬県 前橋DYVER
- 2018年4月28日(土)宮城県 enn 3rd
- 2018年4月29日(日・祝)愛知県 APOLLO BASE
- 2018年5月13日(日)東京都 SHIBUYA CYCLONE
- 2018年5月19日(土)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
- 2018年6月17日(日)新潟県 CLUB RIVERST
- 2018年6月23日(土)福岡県 Queblick
- 2018年6月30日(土)大阪府 心斎橋VARON
- 少年がミルク(ショウネンガミルク)
- syamによるソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施した。同年9月に全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリース。2017年2月に2ndミニアルバム「GYUNYU革命」を、同年5月に3rdミニアルバム「空砲一揆アノニマス」を発表した。2018年3月には1stフルアルバム「トーキョー・ネコダマシー」をリリース。同年4月からはアルバムを携えた全国ツアー「ニッポン・ネコダマシーTOUR」を開催する。