少年がミルクの3rdミニアルバム「空砲一揆アノニマス」がリリースされた。
前作「GYUNYU革命」からわずか3カ月の短いスパンで発表される今作はラブソングを5曲集めたミニアルバム。自身の内面を表現した内向的な歌詞が多かったこれまでの作品とは一線を画す、少年がミルクの新境地となる今作「空砲一揆アノニマス」はどのように生み出されたのか? その制作背景を聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦
いい意味で裏切ってラブソングに
──昨年9月に発表した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」は自己紹介的な作品で(参照:少年がミルク「KYOKUTO参番地セピア座」インタビュー)、今年2月にリリースされた2ndミニアルバム「GYUNYU革命」は「もっと自由に作れた作品」とおっしゃってました(参照:少年がミルク「GYUNYU革命」インタビュー)。今作「空砲一揆アノニマス」は、どういう作品にしようと考えていたんですか?
2枚のミニアルバムを出してライブもやって、自分でも少年がミルクっていうものがどういうものなのか、なんとなくわかってきたんです。それで、もしかしたらわかりにくかったかもしれないんですけど、今回のミニアルバムはラブソングがテーマなんです。
──1曲目が「I love you」というストレートなタイトルなので、なんとなくそんな気はしていました。
これまで、あまり正面切ってラブソングを書いてこなかったんですけど、私自身、少年がミルクが書くラブソングを聴いてみたくなって。このタイミングならやっと書けるようになったかなと思ったんです。
──これまでできなかったことが、今ならできる確信があったんですね。
そうなんです。ラブソングだから、私がこれまで書いてこなかったようなわかりやすい言葉、伝わりやすい言葉も使ってみたかったし。初めてミニアルバムのテーマを強く意識したし、時間もある程度取れたのでじっくり歌詞を書く時間が確保できました。
──作曲を担当している水谷和樹(Gauche.)さんに、ラブソングがテーマであることは……。
伝えてないですね(笑)。だからもらった曲をラブソングに寄せていく作業が楽しかったです。だって1曲目とか普通だったら絶対にラブソングにしようなんて思わないくらい、メチャクチャカッコいい曲なんですけど、だからこそ単なるカッコいい歌詞を乗せるんじゃなくて、ラブソングにしてやろうって思いました(笑)。バンドだったら方向性を合わせて音を作っていくと思うんですけど、私と和樹さんは完全に分業だから。和樹さんの曲をいい意味で裏切るのが面白いんです。
銃を構える覚悟も、引き金を引く勇気もある
──「空砲一揆アノマニス」というミニアルバムのタイトルは、一見ラブソングとは関係なさそうですよね。
これはまた全然別で、単純に空砲を撃ってる感じがいいなと思って。少年がミルクの活動って、ずっと弾が入ってない空砲を撃ってる感じなんですよ。
──それはどういうことですか?
タイトルの「一揆」にもつながるんですけど、私たちはマイノリティとしてマジョリティに対して銃を構える覚悟も、引き金を引く勇気もあるんです。でも弾が入っていないから、空砲で私たちがいくら引き金を引いても音がするだけで誰にも届かない。そういう自虐性のある、すごく面白いタイトルになったなと思います。
──少年がミルクさんは自身がマイノリティであることに矜持を持っていますよね。
ありますね。マイノリティだからこそ言えることって絶対あると思うし、多数派にはなれないだろうっていうことに誇りを持っているというか。でもマジョリティが嫌いってわけじゃないんですよ。だってそっちが存在しないとマイノリティは成立しないですから(笑)。
──もし少年がミルクさんの音楽が大衆に響いて、マジョリティの側に立つようなことになったらどうするんですか?
うーん、辞めちゃうかな。だって書くことなくなっちゃうもん。ただ歌詞を書くときは毎回「もし少年がミルクが世界を支配していたら」って想像しているんですよ。「この曲が渋谷の街頭スクリーンに流れるとしたら」って考えながら。まあそうなることはきっとないんですけどね(笑)。
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スタイルが確立したからこそ、練らなくてよくなった
- 少年がミルク「空砲一揆アノニマス」
- 2017年5月24日発売 / コドモメンタルINC.
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[CD]
1080円 / CMI-0024
- 収録曲
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- I love you
- qualia
- アンチラブソングヒーロー
- 聴こえないくにのくちづけ
- 軽蔑
- 少年がミルク(ショウネンガミルク)
- syamによるソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施した。同年9月には全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリース。2017年2月には2ndミニアルバム「GYUNYU革命」を、同年5月に3rdミニアルバム「空砲一揆アノニマス」を発表した。