音楽ナタリー Power Push - 少年がミルク
「共感はいらない」表現者としての新たな出発
曲をもとに映画を撮影
──ミニアルバムの収録曲の1つ「おばけのうた」をもとにした映画を撮影していたと、事務所のブログで拝見しました。
はい。曲を聴いてもらったときに事務所の社長が「あ、これは映画になるわ」って言って、急に撮り始めたんですよね。それがおよそ1年前。一応全部撮り終えたんですけど、ぜんぶ君のせいだ。とか、ゆくえしれずつれづれとか事務所が新しいグループのデビューを手がけるようになって忙しくなり……。
──映画はまだ公開されていないわけですね。
面白い映画ができたんですよ。若者の群像劇なんですけど、私自身も出演していて。映画の中で「おばけのうた」を歌うんですけど、自分の歌さえもあざ笑ってるという役を演じました。
──「作詞をする際にまずイメージが浮かぶ」とおっしゃってましたが、できあがった詞をもとにさらに映像にするという流れは、ご自身にとってどうでしたか?
もちろんイメージそのままが映像にできるわけではないですし、私は詞以外のものを作ることが苦手なので、脚本とかはほとんどお任せで。私はできあがったものを受け入れただけですけど、逆にそれがよかったのかなって思います。ただ社長が言った通り、映画に「おばけのうた」という曲はすごく合っていて、ビックリしました。
──映画を作る工程は楽しかったですか?
とても楽しかった。別に演技とかではなく泣いちゃったりして。もしかしたらこの映画ってこのまま一般に公開されないかもしれないんですけど、コドモメンタルINC.っていう事務所に関わる人みんなが映画を撮ることに集中して、1つの経験を共有して。ものすごく自己満足なことなんですけど、映画を撮ったってことでちょっと満たされたし、私たちが時々観るだけの作品ってことでいいのかなって、思うんです。
共感されなくていい
──今作のジャケットアートワークには台湾で撮影した写真が使われています。ミニアルバムのタイトルが「KYOKUTO参番地セピア座」なわけですから、「セピア座」を連想する場所がこのロケ地だったわけですよね。
撮影をしたのは台湾の九份という場所なんですけど、セピア座っていうものがどんなものか考えたときにああいう猥雑で入り組んでる場所っていうのが思い浮かんで。ただものすごい時間のない弾丸ツアーで、現地は暑いし臭いし、ゴキブリは飛んでくるし。すっごい大変だったけど、面白い撮影でした。
──完成したジャケットを見てどう思いましたか?
「セピア座」なんて言い出したのは私なんですけど、いろんな人の意見やイメージがあってこのジャケットが完成して。これを最初に見たとき「あ、全部がつながってるんだな」と感じたんです。なんて言うんだろう。少年がミルクって何人でやってるんだろうって感覚がある。
──それはどういうことですか?
少年がミルクとしてステージに立つのは私1人だし、こうしてインタビューを受けるのも私だけなんですけど、作曲をする和樹さん、撮影してくれるスタッフやジャケットを作るデザイナーさんとか、みんなにとっての遊び場みたいなものが「少年がミルク」みたいな気もして。「セピア座」という言葉が劇団的なものを意味してますから、ある意味演じるのも私の務めだと思ってるんです。
──今作のリリースで少年がミルクとしての活動が本格化すると思いますが、今後どういう活動をしていきたいですか?
表現者としての少年がミルクっていう人と、曲の作り手である和樹さんの顔が見える活動をずっと続けていきたいです。それ以外のこと、例えばたくさんCDを売りたいとか、大きい会場でライブをしたいみたいなことはあまり考えてないですね。ただ面白いと思ってもらいたいだけ。もちろん曲も好きになってほしいけど、共感はされなくてもいいんです。私たちは自分の感じたこと、痛みとか悔しさとか、楽しかったこととかを全部出すようにするから、それを観て笑ってもらえればいい。それがエンタテインメントだと思ってますから。
収録曲
- セピア座の乱
- ロマンチック
- あさきゆめFASHION
- 不感症タイムマシーン
- 新宿シネマコネクション
- おばけのうた
少年がミルク(ショウネンガミルク)
syamによる新たなソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施。同年9月には全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリースした。