音楽ナタリー Power Push - 少年がミルク
「共感はいらない」表現者としての新たな出発
“乱”に“乱”をぶつける
──少年がミルクのプロフィールには「セピア座住み。セピア座主宰。乱。」と書かれています。ここにある「セピア座」という言葉はどういう意味なんでしょうか?
「セピア座」っていうのは劇団的なものなんです。空気感はちょっと昭和の劇場的なイメージで、セピアっぽい色味の感じ。その劇団を主宰しているのが私。「セピア座」はたぶん、今回の作品のリード曲「セピア座の乱」を書いてから出てきた言葉ですね。
──「セピア座の乱」という曲はどういう風に生まれた曲なんですか?
曲をもらったときに第一印象で「和樹さん乱してるなあ」って思ったんです(笑)。部屋にこもってまたいろいろ考えてるんだろうな、みたいに想像して。作り手のそういう側面を大事にしなきゃって思ったのと、和樹さんの書いた“乱”に私の“乱”をぶつけないとなって思ったんです。
──作詞をする際のとっかかりはどういうものだったんですか?
私、曲を聴いたときにまずイメージを膨らませるタイプなんです。この曲はとにかく雨と風のイメージと、1人の侍が戦ってる感じがあって。別に時代劇が好きなわけではないんですけど、この曲のデモを聴いたときに侍が思い浮かぶような男性っぽさを感じたんですよね。それと音楽業界に対して私が思うことも入れてみたいと思って。私の中では短期間で音楽業界って目まぐるしく変わっている気がしていて、そんな中で改めて少年がミルクとしてCDを出すことに対しての奮い立つ気持ちっていうのも、少しくらいは入れています。
──歌詞の中には「マイケルジャクソン」「ナンバーガール」といった固有名詞も出てきます。
ミニアルバムの中で「セピア座の乱」って、「こんにちは」って感じの挨拶の曲なんです。「こういうのが自分のルーツ」っていう意味合いで固有名詞を使ってるんですけど、男の子が言いそうなことを私が言ったら面白いかなって思いながら書いてる部分もあります。
つれづれのあとに私が歌って完結
──ミニアルバムの収録曲「新宿シネマコネクション」は、ゆくえしれずつれづれの楽曲としてすでに発表されたものです。この曲は作曲が水谷さん、作詞は少年がミルクとなってますが、提供曲として作ったものですか? それとも、もともと自分の曲として書いたものだったんですか?
同じ事務所の子たちに向けて提供曲として作ったものです。つれづれのコンセプトを聞いたときに、私にも何かできるんじゃないかなって思ったので、やってみたんです。ずっと楽曲を提供したいって欲だけはあったので楽しかった。
──提供曲を作るのは今回が初めてだったんですか?
初めてです。自分が歌わないからある意味無責任に作れるし。しかも提供相手がアイドルなわけですから、私がやってほしいことを曲にしてるって感じですね。それで今回、ミニアルバムを作るときに自分でも歌おうと思って。
──「アイドルにやってほしいこと」として書いた曲を自分が歌うことになってどうでしたか?
「なんかすんません」って感じ(笑)。でも楽しかったですよ。セルフカバーということになるんですけど、人の曲を歌ってる感じが新鮮で。それと私が歌ったバージョンには「ばいばい」ってひと言が最後に入ってるんです。つれづれが歌ったあとに少年がミルクが歌って、それで完結。そういう風に作ってます。
昔はわかりやすくしようとがんばってた
──先ほど歌詞を書くときに「まずイメージが浮かぶ」とおっしゃっていましたが、作詞をするときはどうやって書いてますか?
よく「散歩しながらイメージを膨らませる」みたいなアーティストの方がいますけど、私はそれが全然できなくて。ただただ机に向かって短時間で書きます。昔からの癖で、普段から思い付いた言葉をiPhoneにメモしてるんですけど、結局使わないんですよ(笑)。和樹さんの曲を聴いたとき、真っ先に思い付くイメージを言葉にしていくのが一番しっくり来ますから。
──イメージを言葉に落とし込んでいくんですね。
絵というより、映画っぽい感じが多いですね。それが浮かばないと書けないです。歌詞を書くとき、私の中ではハッキリ映像が浮かんでるんですけど、支離滅裂すぎて歌詞を読んでもその映像が全然浮かばないってよく言われたりします(笑)。マンガを読んで登場人物のバックボーンを勝手に想像するのが昔から好きで。勝手に想像して、突然1人で泣いたりすることもあるんです。そういう自分だけの解釈をどんどん深めていっちゃう性格が詞に出てるのかもしれないですね。
──結果としてどの曲の歌詞も独特ですよね。
昔はね、もっとわかりやすくしようとがんばってみたりもしたんですけど、でも全然いいものにならなくて。でもそういうわかりやすくて素晴らしい歌詞の音楽って世の中にたくさんあるじゃないですか。私にはそういうものは作れないから、私は私の書きたいことを詞にしようって思ったんです。
次のページ » 曲をもとに映画を撮影
収録曲
- セピア座の乱
- ロマンチック
- あさきゆめFASHION
- 不感症タイムマシーン
- 新宿シネマコネクション
- おばけのうた
少年がミルク(ショウネンガミルク)
syamによる新たなソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施。同年9月には全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリースした。