できひんときはできひんもん

——ミドリって、みんながバラバラなことやってるように見えても成立しちゃってるときがありますよね。たとえばライブでまりこちゃんがドラムを客席に降ろし始めたとしても、演奏は全然成立してるっていう、それがすごいなっていつも思うんだけど（笑）。

ハジメ　成立してるんですかね？（笑） みんな着てる服もキャラも全然違うのになんで一体感が出るのかっていうのは僕は一生客観的になれないのでわかんないですけどね。

——小銭さんも、いつも冷静ですもんね。

小銭　冷静なんかなあ、けっこうがんばっとるよ（笑）、ライブ中は。

——テンションは高いんだけど、それ以上に上がりも下がりもしない感じというか。まりこちゃんが何やってても動じないじゃないですか。

後藤　慣れとるんちゃう？

小銭　ああー、長いことやっとるからな。いやでもすごい面白いよ。「うわっそう来た！次はどう来る？どう行くか？」って。「こっちもめっちゃがんばんぞ!!」って思うし（笑）。

——そういうお互いに刺激を与え合う関係性が曲作りにも反映されて、突然「swing」のような曲が生まれたりするんですかね。

岩見のとっつあん　みんながいい感じの状態で、いい感じに音を出したときにできるよね（笑）。誰か一人でも下がってたりするとできないことが多い。

——バンドがすごくいい状態だったんですね。

後藤　うん。できひんときはできひんもんなあ。

——なるほど。逆に言うと、今後こういう作り方で必ずしも曲ができるとも限らないという。危ういですね（笑）。

小銭　危ういねえ。

ハジメ　でもそういうもんだよね。

後藤　せやなあ。そんなもんやな。

ボク、朝起きたら坊主になっとってな

——歌に関してはどうでした？

後藤　歌は1回録り直した。1日目でOKが出て、家に帰って聴いたらイヤやったからもっかい録り直しますって言って。ほんまはミックスの日やってんけど1日設けてもらって。最初はもっとゆるーく歌っとって。たまにファルセット的なんもあって。でもそれはいかんなと。もっと、ちゃんとしてる感じで歌った。強くはなったかも。

——それは歌に込めた想いによりフィットさせる感じで？

後藤　うーん、想い……。「あいたい あいたい」って歌ってるんやけど、ボクは別に誰に会いたいわけでもないんよ。でもすごく歌ってていい感じやねん。ミドリで歌ってるっていう気持ちになる曲。

——今まで以上に歌ってるという実感や、歌いたいっていう気持ちが強いのかな。

後藤　かもしれへん。それ、できたのが去年の8月、9月とか、CLUB CITTA'の前ぐらいで。できたときに歌詞もできとったんやけど。もうボクら事務所も辞めたくて気持ち的にダメな時期やって。坊主やったやん？ボク、朝起きたら坊主になっとってな。それで、ちょっと待てよ、ボクは坊主にしたいわけではないと。ライブがしたくないから坊主にしたんやけど、実はライブがしたくないわけじゃないと。周りの環境がイヤやから坊主にしてしまったんやないかと。結局、ボクは音楽がしたいんやっていうことに気がついて。もう逃げたいなあっていう心境やったんが、ちゃんと音楽に向いたんかもしれん。

——一時期は混乱してたんですね。

後藤　なんで坊主にしたんやろう？って考えてからは整理がついたな。周りの状況を変えられへん自分にウウッてなるのも音楽したいからなんやって。

——ちゃんと前向きな気持ちに切り換えられたからこそ、また新しい曲ができて。

後藤　そうやろうね。だから事務所ともちゃんと切れたし。もしそこで後ろ向きやったら事務所もずるずるとおったかもしれん。

——そこで「動じない明日」や「恐くはないんだ これから先は」なんて言葉も自然と出てきたんでしょうね。こういう前向きで強い気持ちが入ってるのは珍しいですよね。

後藤　ないなあ、初めてかもしれん。