「うちの部員って、本当に素敵でしょ？」

──最後を締めくくるのは、May'nさんが等身大の言葉でファンとの絆を描いた「WE ARE」ですが、この曲をラストに置いたのはなぜですか？

私は小さな頃からずっとアーティストというものに憧れてきたので、デビューしてからも「May'nはこうあってほしい、こうでなくちゃいけない」みたいなアーティストとしての理想像にすごくこだわって活動していたんです。だけどいつからか、もっと自然体でいたいと思うようになって。ライブでみんなが一緒にいてくれると、どうしても素の自分が出てしまって、最初の頃はそれがイヤだったんです。作り込まれた楽曲の世界観があるからこそ、フワフワした自分を見せたくないというか。セクシーな曲や絶望を歌った曲では、その世界観を壊してしまうんじゃないかなという不安があったんです。MCでも自分の素を出すことが怖くて、だけど「そのギャップも好きだよ」と言ってくれる仲間がどんどん増えてきたことによって、安心感が芽生えてきて。ここ最近のライブでは本当に素の状態で、昔よりものびのびとライブを楽しんでいる自分に気付いたんですね。それは自分にとってこの10年の中で一番大きな変化ですし、たくさんの仲間に出会えたからこそ気付くことができたんだなという、その思いが一番届けられるのが「WE ARE」だなと思ったので、これを最後に入れました。

──このCDを1枚通して聴いた印象として、すごく均整の取れた、1つの独立したオリジナルアルバムみたいな印象を受けたんですね。ターニングポイントというキーワードや「WE ARE」で締めくくる理由を聞いて納得しました。コンセプトと流れにしっかりとした意思を感じるというか。

そうですね。私にとって大事な“ライブ”というものを広く届けたいからこその1枚になったなと思います。「うちの部員（May'nファンの総称）って、本当に素敵でしょ？」みたいな。部員のみんなにはおなじみのナンバーが並んでいると思うんですけど、このベストアルバムで初めて私のことを知ってくださった方は、ぜひ私と部員のみんなに会いに来てください。

映像で振り返る10年

──本作にはもう1つ、初回限定盤Aのみに同梱されるアイテムとして、過去のミュージックビデオを網羅したBlu-ray Discがあります。初期の映像を改めて観返すのは、ご本人としてはどんな気分ですか？ わりと恥ずかしい？

わりとというか、めっちゃ恥ずかしいです（笑）。

──しかもクリアな映像で収録されているわけですからね（笑）。

こちらも歴史順に並んでいるので、変化も楽しんでいただけるんじゃないかと……。ふふふふふ（笑）。でも、ちょっと前までは「絶対に観ない！」ぐらいの気持ちでしたけど、今は少し過去の自分に優しくなれたというか、「10代なんだからプニプニしててもしょうがないよ！」って（笑）。

──他人事のように客観的に観られるようになったという。そういう気持ちになれるのも、10年という歳月の大きさを感じるところですね。

そうですね。あっという間の10年でしたけど、こうして形になったもので振り返ってみると、本当にいろんな出会いがあったんだなと改めて感じさせてもらえましたし、そのときどきでは気付かない自分の変化もよくわかりました。歌声だって、さまざまなライブとレコーディングを経て少しずつ変化しているんだなって。

改めて大きな意味を持った“声の力”

──ちなみに本作のタイトルであり武道館公演のタイトルでもある「POWERS OF VOICE」という名前はどなたが？

私です。タイトルについては作品もライブも必ず自分で付けさせてもらっています。10年の集大成にふさわしいタイトルにしたいと考えていた中で、やっぱり10年続けることができたのは、本当に皆さんの応援の声があったからこそで。“声の力”を感じたからこそ続けて来られたという思い、そんな応援の声にちゃんと私の声で「ありがとう」と伝えたいという気持ちで付けたタイトルなんです。

──さまざまな作家が手がけた振り幅の大きい楽曲群を、1つの“May'nの楽曲”たらしめているのはこの力強い声である、という意味でぴったりなタイトルだなと思っていたんですけど、May'nさんがファンから受け取った“声の力”という意味合いが含まれているんですね。

はい。武道館ライブの発表をしたのが今年の2月だから、その時点でタイトルは決まってたんですけど、のちに自分の声のトラブルもあって……このタイトルが持つ意味がより大きくなって、タイトルを付けたとき以上に“声の力”に対するありがとうの気持ちが強くなっていますね。そしてこの声を持って20周年、30周年と続けていきたいと思っているので「今後もよろしく」という気持ちも込めたタイトルです。

──もともと決まっていた公演とはいえ、復活の舞台が日本武道館になるというのもまた特別なことですよね。

今回、歌に対する思いはもちろんですけど、ラジオなどレギュラーのお仕事も2カ月近く離れていたことで、応援してくれるファンの方に直接感謝の気持ちを伝えられる場所があるというありがたさもすごく痛感しました。武道館という素晴らしいステージで“部員”の皆さんに直接ありがとうが伝えられる幸せを今まで以上に感じています。

──デビュー10周年の武道館ライブというただでさえ大きなドラマが用意されているのに、図らずもより深いドラマが乗っかってしまったというか。

いやあ、もう泣いちゃいそうなので、泣かないようなセットリストを組みました（笑）。とにかく「ライブって楽しい！」「歌って楽しい！」という、“楽しい”がいっぱい詰まったライブにしたいと思っています。

──10周年を経てのその先については、どのぐらいまで具体的に考えていますか？

とにかくずっと歌っていきたいと思っているので、そのときどきで自分がやりたい音楽にチャレンジしていきたいです。ずっとずっとチャレンジし続けるアーティストでいたいなって。あと、10周年の記念日はライブをすることができなかったので、20周年の記念日はかならずライブ会場で迎えたいです。

──では近いところの目標として、もし10周年の武道館ライブを大成功で終えられたとしたら、真っ先に何がしたいですか？

なんだろう……思いっきりジンジャーエールが飲みたいです（笑）。炭酸はあまり喉によくないのでずっと控えてるんです。でも今回の件で出会った先生によると、今まで喉を冷やすとよくないと思って控えていたアイスクリームは大丈夫らしいんですよ。「ずっと我慢してたのに！」と思いつつも（笑）、炭酸はダメだというのがけっこうつらくて。でも武道館が成功したら、喉のことを考えずにキンキンに冷えた炭酸キツめのジンジャーエールをグビグビッ！と飲みます（笑）。