May'n|立ち止まることも前進につながるから

May'nが歌唱する楽曲「未来ノート」のミュージックビデオがYouTubeで公開された。

「未来ノート」は2021年6月に設立70周年を迎えるナカバヤシ株式会社の発案で制作された楽曲。同社が掲げる夢に向かってがんばる人たちを応援するキーメッセージ「思い悩め 立ち止まれ。それが君の前進だから。」をもとに、大石昌良が書き下ろした。ミュージックビデオはRabbit MACHINEが手がけており、全編オリジナルのアニメーションで構成されている。音楽ナタリーではデビュー15周年イヤーのMay'nにインタビューを行い、デビュー15周年を迎えた心境やナカバヤシ株式会社とコラボレーションすることになった経緯、「未来ノート」について話を聞いた。

取材 / 臼杵成晃 文 / 酒匂里奈

きっかけはMay'nの本名

──「未来ノート」は2021年6月に設立70周年を迎えるナカバヤシ株式会社が企画、立案して制作されたそうですね。そしてちょうどMay'nさんも昨年6月1日から今年の5月31日までがデビュー15周年イヤーということで。いろいろ難しい情勢の中かと思いますが、15周年イヤーでの活動はいかがですか?

コロナ禍の前からいろいろなライブやスペシャルな企画を練っていて、すべてが実現できたわけではないんですけど、今年の1月から5月までは、「May'n 15th Anniversary Monthly Concert『1 to 5』」というライブシリーズを毎月開催しています。もともとはファンの方に直接感謝を伝えるために有観客でたくさんライブをする計画だったのですが……。でもオンラインでライブができているのはすごくありがたいことだなと思っています。あとは「15Colors」(2020年11月に配信リリースされた3枚の15周年記念ミニアルバム「15Colors -soul tracks-」「15Colors -unplugged-」「15Colors -nu skool-」)という作品をリリースさせていただきました(参照:デビュー15周年のMay'n、今秋ミニアルバム3枚同時リリース)。

──「15Colors」は3枚それぞれ異なるコンセプトの楽曲を集めるという見せ方も面白かったですね。可能性の幅をさらに拡張するような作品でした。

企画モノのミニアルバムだからこそという感じの、振り切ったチャレンジングな15曲を作りました。この制作を経て、これからの自分自身の音楽性やライブの表現の幅がさらに広がったなと思います。

──ナカバヤシとのタイアップは、2018年にMay'nさんがTwitterに投稿した内容がきっかけになったそうで。こういうところから本当にコラボにつながることもあるんですね。

そうなんです! ナカバヤシさんのツイートに私のファンの方が「May'nさんの本名も中林ですよ」とリプをしてくれていて、それに「コラボしたいでーす!」と乗っかったら、ナカバヤシさんも「ぜひ!」みたいな感じでリプをくれて。企業のアカウントさんから認知された、リプをもらえたというだけでけっこう興奮しましたね(笑)。本名が中林ということもあって、幼い頃から文房具屋さんでナカバヤシさんの商品を見かけるとなんとなく意識していたんです。自分のグッズのような感覚でノートやアルバムを買っていましたね(笑)。だから今回、ナカバヤシさんの70周年という記念すべきタイミングで一緒に「未来ノート」を作らせていただけたのは本当にうれしいです。

けっこう攻めてる面白い企業さんだなと

──ナカバヤシの製品は知らずとも身近にあるんですよね。例えば「フエルアルバム」とか。

フエルアルバム! うちのお母さんも今回のタイアップのことを伝えたら「フエルアルバムだー!」と言ってました(笑)。

──ナカバヤシは「フエルアルバム」やおなじみの文房具のほかにも、企業のさまざまな困りごとをトータルでサポートするビジネスプロセスソリューション事業やエネルギー事業も展開されていますよね。オフィシャルサイトを拝見するとにんにくまで出てくるので驚きます。

にんにくの生産をされていることは、今回ナカバヤシさんとご一緒することになって初めて知りました。にんにくチップをたくさんいただいて、それがもうめちゃくちゃおいしいんですよ! 最近は売り切れていてなかなか手に入らないプレミア商品らしく、普通に手に入るようになったら大量買いしたい。よく家でステーキを焼くので、その仕上げににんにくチップを使うんですけど、もう最後の1袋がなくなってしまって。最近の私の中では、ナカバヤシと言えばにんにくです(笑)。

「未来ノート」ミュージックビデオのワンシーン。

──(笑)。今回コラボレーションする中で、そういったナカバヤシの新しい側面が見えてきたと。

今回ご一緒するまでは「昔ながらの文房具メーカーさん」というイメージがありました。私はリラックマがすごく好きで、ナカバヤシさんにはそういうキャラクターものの製品がいっぱいあったり、女の子が「かわいい!」と思ってファッション感覚で持ち歩けそうな今っぽいデザインの製品がたくさんあったり。昔ながらの企業というイメージもありつつ、今は「けっこう攻めてる面白い企業さんだな」という印象に変わりました。

──時代に沿って新たな事業に手を広げるのは勇気のいることだと思いますが、そこに挑んでいる会社という感じがしますよね。「未来ノート」の企画に関してもそうで、目の付けどころがすごいですよね。楽曲を手がけた大石昌良さんの本気も感じられました。

大石さんの楽曲はもともとよく聴かせていただいていましたし、OxT(オーイシマサヨシとTom-H@ckによるユニット)さんの楽曲を歌わせていただいたこともあって、大石さんの書くキャッチーで胸にくる歌詞が本当に素敵だなと思っていました。そしてナカバヤシさんの「思い悩め 立ち止まれ。それが君の前進だから。」というキーメッセージは、15年前の自分にもかけてあげられるような言葉ですし、「未来ノート」は今の私自身も背中を押されるような曲で。15周年というタイミングでこの曲を歌えて、ファンの方に聴いてもらえることがすごく幸せです。

この曲をきっかけに大石さんとマブダチに

──大石さんは作家としてどういう魅力のある人だと思いますか?

これまでも現場でよくご挨拶をさせていただいていたんですけど、深く話す機会が今までなくて。だから大石さんのパーソナルな部分はあまり知らなかったのですが、この曲をいただいて大石さんのことが大好きになりました。きっと大石さん自身もいろいろな経験をされてきて、悩んだり立ち止まったりして、いろんな人を勇気付けて、前進して、という日々を過ごしてきたんだろうなと。「未来ノート」を聴いたらそういう大石さんのバックグラウンドが見えた気がして、私はこの曲をきっかけに大石さんとマブダチになったつもりです(笑)。

May'n

──「未来ノート」のサウンドにはどういう印象を受けましたか?

とにかくさわやかで前向きなナンバーだなと。May'nの楽曲の歴史を振り返ってみても、今まであまりなかったような特別な楽曲に出会えたなと思います。疾走感があって盛り上がるし、心が燃える。ライブで早く届けたいなと思う楽曲ですね。

──歌詞についてはいかがですか?

歌詞でもあり、ナカバヤシさんのキーメッセージでもある「思い悩め 立ち止まれ。それが君の前進だから。」という言葉に、私自身勇気をもらいました。どちらかというと私は「思い悩むな! 立ち止まるな!」みたいなタイプで(笑)、そうやって前進してきたんです。それもすごく大事なことだと思うし、自分のいいところかなと思っています。でも、自分が立ち止まってしまったときのことを振り返っても、あのときがあったからこそ進めた道があるなと思うんですよね。悩んでる最中や立ち止まってしまったときは「なんで私立ち止まってるんだろう。こんな無駄な時間嫌だ!」と思っていたけど、振り返るとあの立ち止まっていた時間が前に進めたきっかけだったなと。だからこそ今この歌詞がしっくりくるし、15年前のデビュー当時のがむしゃらだった自分とか、デビューしたけどうまくいかなかったときの自分にも、今の自分の目線で声をかけてあげているような歌詞だなと感じていて。これからもずっと音楽を続けていきたいと思う中で、この曲を歌えてすごく心が楽になりました。

──確かに、May'nさんはこれまで周りを引っ張っていくような勢いで駆け抜けてきたイメージが強いですが、振り返ってみると立ち止まる時間も実感していますか?

そうですね。がむしゃらに走るよさも絶対にあると思いますけど、ゆっくり自分を見つめ直す時間も、確実に前進につながると思うんですよね。デビュー当時は毎日目まぐるしかったけど、17歳ぐらいで一度仕事がなくなるタイミングがあって。そのときに「もっともっと音楽をやりたい」という気持ちから作詞作曲の勉強をするようになって、それが今につながっている。もしあのとき、そのままずっと走り続けていたら作詞作曲をしようとは思わなかったかもしれないし。だからやっぱり自分を見つめ直す時間は前に進むきっかけやパワーになるんじゃないかなって。

──仕事との向き合い方や考え方は年齢を重ねて変わった部分もありますか?

そうですね。2年前くらいまではひたすら予定を詰め込みすぎる性格で……まあ今でもちょっとそうなんですけど(笑)。自分を見つめ直したり自分の声に耳を傾けたり、そういうのは年齢を重ねた今だからこそ気付けた大事なことだと思いますね。


2021年5月3日更新