May J.が10月25日に新作アルバム「Futuristic」をリリースした。
この作品は、2014年発表の前作「Imperfection」以来、約3年ぶりとなるオリジナルアルバム。本作には3年の間にリリースしてきた数々のシングル曲に加え、May J.が作詞作曲を手がけたナンバーが6曲収録されている。
海を渡りアメリカ・ロサンゼルスでレコーディングを行うなど、作品を作り上げるうえで新たな挑戦も自らに課したMay J.。“未来的な”という言葉を冠したアルバムで、彼女はどのような思いを表現したかったのか? 音楽ナタリーではMay J.が作詞作曲に携わった楽曲にスポットを当ててインタビューを行い、力強く未来を見据える彼女の心の内に迫った。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 塚原孝顕
自分の曲を自分でコントロールする
──オリジナルアルバムのリリースはひさびさですが、なぜこのタイミングで発表しようと思ったのでしょう?
昨年末くらいにスタッフと「そろそろアルバムを出したいね」という話をし始めたんです。その時点でシングル曲もたくさん集まっていたし、新曲も数曲録ってはいたのですぐに出せる状況ではあったんですけど、自分の中で「今の自分を表現したい」っていう感覚があって。オリジナルアルバムは3年ぶりだし、私も表現したいことがたくさんあったんですね。そんな思いを持ちながらスタッフとミーティングをして、じゃあ今回は作詞作曲を自分でして、その曲をLAで録ろうっていうことを目標に定めました。
──May J.さんが表現したかったこととは、具体的にはどのようなものですか?
すごくいろんなことです。この3年間、カバー曲やコラボなども含めいろいろな曲を歌わせていただいて、その中でオリジナル曲を作るためのインプットが沢山できて「自分だったらこういうことを言いたいな」という思いがいろいろ溜まっていったと言うか。自然と「こういうことを歌いたい」という感情が湧いてきたので、そのときどきに自分が一番感じていることを歌にしていきました。私のツアーのバンドマスターである上條頌くんにコードを弾いてもらいながら、私は「ラララ」のメロディで1曲ずつ作っていきました。
──May J.さんが作詞作曲を手がけた楽曲は6曲と、過去の作品の中で一番多い曲数です。
そうですね。全曲作詞をした経験などはあったんですけど、今回は本当に、自分のカラーがより強く出ているなって思います。
──ちなみに、海外でレコーディングをすることに決めたのはどんな思いがあったんですか?
まず、環境を変えて歌を録ってみたかったんです。日本だとルーティンができていて、すべてが合理的に進んでしまうから、それを壊して、新しい自分に挑戦してみたかった。ロサンゼルスは私にとって第2の故郷みたいな場所で、親戚がたくさん住んでいるから小さい頃は毎年遊びに行っていたんですよ。私はかなり控えめな性格で積極的になれないんですけど、アメリカに行くとみんなハングリーだから……黙っていると自分が埋もれてしまう。そのせいで何もできないっていう経験を過去にしていたので、自然と積極的になれる環境を求めました。自分の音楽を自分でコントロールできる環境と言うか。なので、現地では参加してくださった3人のミュージシャンにも指示を出したりして。
──完全にご自身主導で進めたんですね。
そうですね。開放的な気分になれたし、「やるぞ!」っていう気合いが日本にいるときよりも出せたと思います。
──レコーディング期間はどのくらいあったんですか?
LAにいたのは9日間で、スタジオ作業は7日間ですね。歌は3日で録りました。
──大変ですね。
大変でした。普通だったら1日1曲を一番フレッシュな声で歌うんですけど、1回ガーッと歌ったあとにもう1曲となると、すごく体力が必要でした。でも声にいい具合に色が付いたと言うか……枯れた部分が奇跡的に味になったりもしたから、結果的にはよかったなと思います。
──では短期間のレコーディングの中で、May J.さんが特にこだわったことはありますか?
今回一番課題にしていたのは歌の録り方です。曲は自分で書いたものだから、どんなふうに歌いたいのかっていうイメージが最初から明確にあったし……もっと自分の歌が生々しく、リスナーの隣で歌っているような感じで聞こえてほしいと思っていたんです。そのために顔とマイクの距離をすごく近くして、サビ以外の部分をいつもよりも抑えて、語りかけるように歌ったりと研究しながらやりました。
──そういったこだわりを国外のスタジオで形にしようとする作業は大変ではなかったですか?
それが、歌入れの際のエンジニアさんは日本語をしゃべれない方だったんですが、面白いなと思ったのは言葉は違うけど通じ合っているように感じたことで。彼が“聞こえ方重視”でいろいろとアドバイスをくれたんです。バラードを歌っていたら「こっちのニュアンスのほうが聴き心地がいいよ」って伝えてくださったり。すごく貴重な経験したなあと思います。
みんなの存在が私の生きがいになっている
──では、ここからはMay J.さんが作詞作曲をした楽曲にスポットを当ててお話を聞いていけたらと思います。1曲目の「SIDE BY SIDE」は、どのようにしてできた曲なんですか?
この曲は、ファンレターからインスピレーションを受けて書きました。いただいたファンレターにはすべて目を通しているんですけど、私に悩みごとを相談してくれる方がとても多くて。みんな、いろんな悩みを抱えているんですよね。そんな中で、例えば「憂鬱な通勤のときにMay J.の曲を聴くと勇気が出るんです」なんて書いてあるのを見ると、「ああ、自分の音楽を支えにしてくれているんだな」ってつながりを改めて感じられるんです。離れててもつながり合えているのはすてきなことだなって思いますし、私自身もファンの皆さんに支えられているから、直接つながりを確認し合えるライブ空間ではしっかりと感謝の気持ちを伝えたい。この曲はファンの皆さんへの感謝を改めて歌いたいと思って作った曲です。
──そうだったんですね。そして、歌詞の中にはファンの方への感謝の思いもそうですが、May J.さんの飾らない心情もつづられていますよね。
そうですね。
──例えば、「心ない言葉にどれだけ傷ついても ねぇ、どこまで頑張ったら暗闇を抜けてゆけるの?」というちょっとドキっとするような表現だったり。そのあたりの思いも伺えたらと思うのですが。
実際、歌うことへの自信をなくしたときもありました。でも、そうやって私が一番苦しんでいた時期は、本当にファンのみんなに支えられていたんです。ライブを楽しみに待ってくれていた、自分の目の前にいるファンの方の顔を見て、「私は歌い続けていいんだな」って思わせてもらったし……。
──そうだったんですね。
今でも覚えているのは、私は3年前に初めて日本武道館でライブをしたんですが、そのライブの発表をした日のことで。これはマネージャーが目撃した光景なんですが、ファンの方が「やっと武道館だね、みんながんばったね」って、円陣を組んで泣いて喜んでくれていたんですって。その光景を伝え聞いて「チームだな」って……みんなで支え合ってここまで来れたんだなって思いました。みんなの存在が私の生きがいになっていると言うことを改めて感じた出来事でしたね。
──そういった思いが歌われるこの曲は、メロディもポジティブな印象ですね。
ライブの最後に歌うことをイメージしながら作ったので、明るさと、あと少し切なさも感じるようなコード感を意識しました。
──なるほど。では、ライブの最後をイメージして作った曲を、あえてアルバムの1曲目にしたのは?
最後でもよかったんですけど、まず初めに「ファンの方がいるから今のMay J.がある」っていう思いを感じてほしかったんです。
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歌う相手がすごく明確だった
- May J.「Futuristic」
- 2017年10月25日発売 / rhythm zone
-
[CD+2DVD]
5400円 / RZCD-86401/B~C -
[CD+DVD]
4104円 / RZCD-86402/B -
[CD]
3240円 / RZCD-86403 -
初回生産限定盤
Futuristic -10th Anniversary BOX-
[CD+5DVD+写真集]
21600円 / RZZ1-86404/B~F※May J. Family Official Shop & mu-moショップ、ライブ会場限定商品
- CD収録曲
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- SIDE BY SIDE
- Glory Wave
- ふたりのまほう
- Faith
- My Star ~メッセージ~
- Break Free
- Shake It Off
- Smile At Me
- Have Dreams!
- HERO
- Sparkle -輝きを信じて-
- Shine (Japanese Ver.)
- Yeah! Yeah! Yeah! feat. 村上佳佑
- the ONE
- 母と娘の10,000日 ~未来の扉~ duet with 八代亜紀
- 花は咲く ~大好き♡東北Ver.~
※ボーナストラック
- 付属DVD
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MUSIC VIDEO
※CD+2DVD、CD+DVD、初回生産限定盤付属 -
May J. Tour 2017 ~ME, MYSELF & OUR MUSIC~ "Futuristic" @人見記念講堂 2017.7.30
※CD+2DVD、初回生産限定盤付属 -
May J. 10th Anniversary Grand Finale ~The Request Live~ @オーチャードホール 2016.10.9
※初回生産限定盤付属 -
May J. 10th Anniversary Tour 2016 @中野サンプラザ 2016.7.3
※初回生産限定盤付属 -
May J. 10th Anniversary "Stand Up!" ~After 10 Years From First Live @clubasia~ 2016.8.3 (BONUS DISC)
※初回生産限定盤付属
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MUSIC VIDEO
- 写真集「Futuristic PHOTOBOOK」収録内容
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全40P・ハードカバー
- Los Angeles Sessions
LAでのフォトセッション、レコーディング風景、オフショットなど最新フォト - May J. Tour 2017 ~ME, MYSELF & OUR MUSIC~ "Futuristic" at Hitomi memorial Hall 2017.7.30
2017年に行われたライヴツアー「May J. Tour 2017 ~ME, MYSELF & OUR MUSIC~ "Futuristic" @人見記念講堂 2017.7.30」ライヴ風景 - MJF PHOTOBOOK Vol.1~4 ARCHIVE
「MJF PHOTOBOOK」Vol.1~4未公開写真
- Los Angeles Sessions
billboard classics May J. Premium Concert 2017
~Me, Myself & Orchestra~
- 2017年11月5日(日)東京都 東京文化会館 大ホール
- May J.(メイジェイ)
- 日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち多彩な言語を操るマルチリンガルアーティスト。幼児期よりダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りもこなす。2006年7月にミニアルバム「ALL MY GIRLS」でメジャーデビュー。2014年には大ヒットを記録したディズニー映画「アナと雪の女王」の日本版主題歌「Let It Go ~ありのままで~」を担当し、同年の「第65回紅白歌合戦」に出場した。2015年1月には自身初となる東京・日本武道館の単独公演を開催。2017年5月に八代亜紀をコラボ相手に迎えた10枚目のシングル「母と娘の10,000日 ~未来の扉~」を発表した。10月25日には約3年ぶりとなるオリジナルアルバム「Futuristic」をリリース。