May J.×八代亜紀|世代超え響かせる母娘のハーモニー

苦しい経験をしていると人に優しくなれる

──この曲を聴くと、聴き手はそれぞれに親との思い出が心の中に浮かぶのかなと思うのですが……お二人の心の中にはどんな景色が浮かびますか?

May J.

May J. 私はデビュー間もないときのことですね。デビュー当初はクラブで歌っていたんです。で、サイン会なんかもクラブの入り口でやって。でも誰も来てくれなくて、お客さんは2人くらい。そうすると、お母さんが様子を見に来てくれるんです。お客さんが誰もいないからCDを買って、他人のふりして「サインください」って。すごくうれしくて、今にも泣きそうだったのを覚えていますね。

八代 そういう苦しい経験をしていると人に優しくなれるから。親のありがたみもわかるしね。大丈夫よ。

──八代さんはいかがでしょう?

八代 私は12歳のときに歌手を志して、16歳のときに歳をごまかしてキャバレーで歌い始めて、それが父にバレて勘当されてね。そうして上京して、銀座でクラブシンガーになって……クラブシンガーになることが夢でそれが叶ったけれど、父はまだ許さないわけです。「どうせルンルンしてるんだろ」って。そして、八代亜紀としてレコードを出すことになったんだけど、それが売れない。そこからです。それまでは「許さない」って言っていた父が、初めて泣いたんですって。「娘ががんばってレコードを出したのに売れないのか、かわいそうだ。誰か応援してくれる人はいないのか?」と。

May J. そうだったんですね。

八代 それで母に「東京に行くぞ」って。会社も何もかも捨てて東京に来て、一緒に暮らしてくれたんです。父はドサ周りしているときにトランクを運んでくれたり、最終電車で帰ってきたら駅まで迎えに来てくれたりしたの。あとMay J.の話じゃないけど、ファンのフリをしてね、有線に「八代亜紀っていう素敵な歌手の歌はありますか?」って電話もしたんだって(笑)。そういうことをしてくれたから、「絶対に日の目を見て、親に楽をさせる」って思いましたよね。

May J. 私も最初の頃、家族がCDショップで「May J.のCDはありますか?」ってわざわざ聞いてくれたりしていたみたいです。そうすると、「ないですね」って言われて。結局あったんですけど、ポップスの棚じゃなくて洋楽コーナーに置いてあったりした。それを家族が悲しんでいたので、「絶対に有名になってやるぞ!」って思いましたね。

八代 そうでしょう。May J.の経験したことは私も経験済みだから、なんでもわかるわよ。

八代亜紀は理想

八代亜紀

──では完成した曲を聴いて、改めて感じたことはありますか?

八代 歌っているときは余裕がなかったけど、完成したものを冷静に聴くとすごくいいね。

May J. はい。私が理想としていた八代さんとのデュエットソングになりました。

──こうやって作品を作られて、お互いのシンガーとしての印象に変化はありましたか?

八代 「May J.はこういうこともできるのね」って、枠にとらわれない姿勢がいいなと思いました。

May J. 私は、「八代さんって新しいことにチャレンジされるのが本当にお好きなんだな」って思いました。

八代 大好きよ。どんな形でも、歌うことが好きなのね。披露するのも好きだし、褒められるのもね(笑)。

──May J.さんにとって歌手・八代亜紀はどのような存在ですか?

May J. 理想ですね。私が一番尊敬している方。後輩に対しても誰に対しても優しくて、悩みごとを相談するとすぐにアドバイスをくださるし。で、八代さんはどんな活動をされていても、歌が軸にあるんですよね。そこがブレていないのが素敵だと思います。私は歌以外何もできないから、八代さんが歌を軸に夢や可能性を広げていく姿を見て、「自分もそういうふうになりたいな」って思うんです。

八代 ありがとう。May J.は実力は十分なんだから、あとはとにかく健康にね。自分でちゃんと管理して。しゃかりきになるときもあると思うけど、「どうすれば乗り切れるのか」っていうのは自分でしっかり考えてね。あとはスタッフを信じて。(スタッフのほうを向いて)スタッフの皆さん? 彼女が「ちょっと具合悪い」なんて言ったら、すぐに病院に連れて行くのよ。

スタッフ (頷く)

八代 「我慢する、大丈夫」なんて言っても絶対ダメよ。ウチなんか、本当にうるさいですから。旦那さんもね、私がちょっと咳をしただけで「いつから?」って。「昨日から」なんて答えると、「なんで言わないの!」って、すぐに病院ですよ。それくらい周りの人やスタッフが心配するので、私も安心していられるの。だからスタッフの皆さん、メイちゃんをよろしくお願いしますね? 大事な宝ですから。

May J. ありがとうございます。

左からMay J.、八代亜紀。
May J.「母と娘の10,000日 ~未来の扉~」
2017年5月24日発売 / rhythm zone
May J. duet with 八代亜紀「母と娘の10,000日 ~未来の扉~」CD+DVD盤

CD+DVD
1944円 / RZCD-86353/B

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May J. duet with 八代亜紀「母と娘の10,000日 ~未来の扉~」CD盤

CD
1296円 / RZCD-86354

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CD収録曲
  1. 母と娘の10,000日 ~未来の扉~
  2. 母と娘の10,000日 ~未来の扉~(Daughter’s Vocal Only)
  3. 母と娘の10,000日 ~未来の扉~(Mother’s Vocal Only)
  4. 母と娘の10,000日 ~未来の扉~(Off Vocal)
  5. 糸(Off Vocal)
DVD収録内容

母と娘の10,000日 ~未来の扉~

  • Studio Session Clip
  • Documentary
May J.(メイジェイ)
日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち多彩な言語を操るマルチリンガルアーティスト。幼児期よりダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りもこなす。2006年7月にミニアルバム「ALL MY GIRLS」でメジャーデビュー。2014年には大ヒットを記録したディズニー映画「アナと雪の女王」の日本版主題歌「Let It Go ~ありのままで~」を担当し、同年の「第65回紅白歌合戦」に出場した。2015年1月には自身初となる東京・日本武道館の単独公演を開催。2017年5月に八代亜紀をコラボ相手に迎えた10枚目のシングル「母と娘の10,000日 ~未来の扉~」を発表した。
八代亜紀(ヤシロアキ)
熊本県八代市出身の演歌歌手。15歳で歌手を目指して上京し、銀座でクラブ歌手として活動を始める。1971年にシングル「愛は死んでも」でデビューを果たし、1973年には出世作となった「なみだ恋」を発表。1979年発売の「舟唄」が大ヒットを記録し、1980年には「雨の慕情」で「第22回日本レコード大賞」大賞を受賞した。演歌歌手として確固たる地位を築きながら、一方で画家としても才能を発揮。フランス「ル・サロン展」に5年連続で入選し、永久会員となった。2010年にはデビュー40周年シングル「一枚のLP盤」を発表。2012年5月には小林旭とのデュエット曲「クレオパトラの夢」、10月には小西康陽プロデュースによる初の本格的なジャズアルバム「夜のアルバム」をリリースし、翌2013年3月にはニューヨークの老舗ジャズクラブ「Birdland」でライブを行う。2015年10月、寺岡呼人プロデュースによる初のブルースアルバム「哀歌-aiuta-」をリリース。2016年には「FUJI ROCK FESTIVAL '16」に初出演するなど、多彩な活動を続けている。