ナタリー PowerPush - マキシマム ザ ホルモン

6年ぶり5thアルバム「予襲復讐」マキシマムザ亮君メールインタビュー

「ビューティー殺シアム」のように、女の子も共感できるような曲が入ってきた最大の理由は?(ちなみに、本当に本当に本当に応援ソングのつもりで作ったんですか?)

世間一般の女の子があの曲で共感するとはまったく思ってないですし、普通の女子たちを応援するつもりも一切ありません(笑)。曲名のとおり、あの整形番組に出演するような外見にコンプレックスを抱く弱者の女子。努力を怠っていたり、社会とのコミュニケーションが出来ない、醜い事が原因で前に向かって歩いていくことが出来ない社会不適合者となってしまった人間達が、「新しい自分に生まれ変わりたい!」とついに一歩踏み出した、その事に僕は注目したいのです。アイドルが“より美しく”と整形を重ねる時代ですから。整形=ずるいと言うイメージをつい抱きがちな世間。本当に美しくなりたいと努力した人間の一歩を、簡単にあざ笑う見た目で決めつける世の中に対しての皮肉の曲なんです。

亮君が13年前から発言していた“中学パワー”と親戚関係的な意味合いを持つ“中二病”の発案者である伊集院光はダメ人間の代弁者として多くの鬱屈した人々から支持を集めていますが、彼自身は若くして成功し、アイドルと結婚、いわゆるリア充であるとも言えます。亮君も、バンドとして成功を収め、子宝にも恵まれたリア充的側面があるでしょう。そういった側面を持つ人間が屈折を重ね蓄積させた想いを叫ぶことをどう考えていますか?(僕自身は、本当の弱者は声を出せない。ただ、弱者のメンタリティを持ったまま強者へ踏み込めた人間は声を出せる。だから、そういった行為に意味があると考えています)

確かにプライベート的に言えば完全にリア充ですけどね。これに対しては「ダメ人間でも這い上がって勝ち取ってやったぜ! ざまーみろ!」的な気持ちもありますけどね(笑)。ただ、人間のハートにはもっと複雑に無数の部屋があってですね、この部屋は幸福で満たされてるけど、あっちの部屋は血なまぐさくて、こっちはカビだらけ、あっちの部屋は鍵が壊れたまんま開かないだの色々あるわけですよ。誰にも話せない悩みもたくさんありますよ。大成功しても自殺するロックスターもたくさんいます。人の心の苦悩は本人しかわからない。そういう心の中の色々な部屋に蓄積した感情を発散させる方法は言ってしまえば人それぞれで、酒飲んで友達と語ったり、カラオケで熱唱して発散する人もいれば、風俗でスッキリして発散させる人もいる、ギャンブルでバカ勝ちしてすべての借金返済して人生取り戻す奴もいる訳で、人ぞれぞれ色々な抜け出し方がある。僕の場合それをエレキギターでロックとして吐き出すというシンプルな行為。それは一体なんの意味があるのか? ただストレス発散したいだけなら、僕だって他の楽チンな楽しい事やって吐き出しますよ、でも自分のオリジナルな方法でアウトプットするという事は、他人にかましたい!ってとこが僕にとって重要なんですね。例えば行き場のない苛立ちや退屈を、自分の改造したバイクでエンジン音ふかして騒音まき散らして信号無視して爆走している迷惑な少年達の感情と実は近いのかもしれません、でも僕らロックバンドが彼らと違う所は、この心のグツグツした感情をギターのリフにするなら? メロディーにするなら? リズムにするなら? 歌詞にするなら?っていう自分流の音楽に変換して挑戦する“究極の音ゲー”を命を削ってプレイして発散しているとこなんですよ。心の中を音として変換するのは、ただピュアに思いつくままやっても案外得点は30点くらいなんですよ。バチッと合う100点満点のスマッシュ出すのは心が折れそうになるほど大変ですけど、満点出ると最高に楽しいですね。この、曲を作るという究極の音ゲーを一人で部屋でプレイしてクリアーしていくのも最高に楽しいですし、そうなると今度は人に見せたくなるんですね。でメンバー4人同時プレイしながら、それをたくさんのギャラリー(ファン)の前でプレイしたろう!ってとこにものすごく興奮をおぼえます。そして眼中にないやつらの耳にまでぶん投げて喰らわしたいってのがあるからこそ、こうやってインタビューを受けたりして、精神性だけでも文字として放ちたい。僕がやってるバンドがどんな音楽なのか奥まで知ってもらう為の第一歩と思っております。

公式ホームページの「今日の亮君」で、マキシマム ザ ホルモンの物語は完成していて、今作はエピソード・ゼロのような位置付けという発言があります。では、この先についてどうお考えですか? 新たな設定で再構築した物語を描くのか、これまでの物語を新解釈するのかなど、現段階の構想を教えていただきたいです。

次からはバンドを完全フランチャイズ化します。そして全国にマキシマム ザ ホルモン暖簾分けの支店をどんどん増やして、各店長に新曲を作らせ、優秀なものを採用していきます。曲の評判が良い時は自分が作ったと公言し、曲の評価が低い時には「今回の新曲は○○支店の新人が作った」と人のせいに出来る夢のシステムを取り入れていきます! フェスやライブの出演もマキシマム ザ ホルモン(新横浜店)と言ったように、毎回ランダムで各店舗のメンバーが代わりにライブをするという体制に変わっていき、マキシマム ザ ホルモン(本店)は対バンにアイドルが出演してる時しか登場しないというスタイルに変わっていきます。ファンの間でも、マキシマム ザ ホルモン(歌舞伎町店)の上ちゃんはデブリ過ぎだがMC面白い、マキシマム ザ ホルモン(ひばりヶ丘店)のダイスケはんは美声過ぎ、マキシマム ザ ホルモン(目黒店)のナヲはめっちゃヤリマン、マキシマム ザ ホルモン(新橋店)の亮君はマントヒヒなどといったように各店舗ごとの味の違いを楽しむようになって来ることでしょう。そしてTポイント、Pontaカード、nanacoカードなどのポイント制度も積極的に取り入れていくことも検討中です。素敵なダイブやモッシュをしたイカした客にはポイントが貯まっていきます。ゆくゆくは、マキシマム ザ ホルモンサプリメントのマルチビジネスを世界展開していくことも視野にいれております。

ニューアルバム「予襲復讐」 / 2013年7月31日発売 / [CD+書籍] / 2889円(定価)“ツバ吐き価格” / VAP / VPCC-81770
ニューアルバム「予襲復讐」ジャケット(帯付きイメージ)
収録曲
  1. 予襲復讐
  2. 鬱くしきOP~月の爆撃機~
  3. 鬱くしき人々のうた
  4. 便所サンダルダンス
  5. 中2 ザ ビーム
  6. 「F」
  7. 爪爪爪
  8. ロックお礼参り
    ~3コードでおまえフルボッコ~
  9. アンビリーバボー!
    ~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~
  10. え・い・り・あ・ん
  11. my girl
  12. メス豚のケツにビンタ(キックも)
  13. ビューティー殺シアム
  14. maximum the hormone
  15. 恋のスペルマ
マキシマム ザ ホルモン

1998年八王子にて結成。日本語を独自の語感表現で操り、意味不明に見えて実は奥深いメッセージ性を持つ強烈な歌詞と、激しいラウドロックにポップなメロディを融合させたサウンドスタイルが特徴で、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)、上ちゃん(4弦)、ナヲ(ドラムと女声と姉)の4人からなるロックバンド。2011年3月にリリースしたトリプルA面シングル「グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011~2011」はオリコン週間ランキングで2週連続の1位を獲得(同年9月をもって廃盤)。6月にはフランス最大のメタルフェス「HELLFEST」へ出演し、自身がヘッドライナーとなるヨーロッパツアーを全会場ソールドアウトさせるなど海外からの評価も高い。「SUMMER SONIC 2011」ではRED HOT CHILI PEPPERS、X JAPANらと並びメインステージに出演し3万人を魅了。2012年は「矢沢永吉デビュー40周年イベント ‐BLUE SKY」や東北で開催されたHi-STANDARD主催「AIR JAM 2012」などの国内FESに多数出演している。2013年5月にはオジー・オズボーン主催の「Ozzfest Japan 2013」でBLACK SABBATH、SLIPKNOT、TOOLらと共演。