まらしぃ「marasy piano world 88」特集|アンパンマンからYOASOBIまで、老若男女を魅了する最新カバー集 (3/3)

堀江晶太は友人でありライバル

──アルバムタイトルの由来でもある「88☆彡」は、まらしぃさんのオリジナル曲で、直近のアルバム「Piano monkeys」(2024年11月発売)にも収録されていました。

僕のオリジナル曲であり、友人の堀江(晶太)くんと一緒に作った曲でもありますが、ここ最近の自分の曲を1つ挙げるとするのであれば「88☆彡」は外せないと思い、収録を決めました。堀江くんとの仕事はすごく刺激的で、いろんなことを教えてもらってばかりですが、ピアノで彼に遅れを取るようなことがあったら僕とやる意味はないので(笑)。こちらからも何か刺激を与えようといろんなアイデアを投げるうちに、自分の曲作りの引き出しが増えたと実感しています。自分にとってよき友人でもあり、ライバルとも言える存在なので、これからも末長く一緒に曲作りができたらうれしいですね。

──アルバムのラストを飾る「88☆彡」はライブでも本編の最後やアンコールで披露されることが多く「フィナーレを盛り上げる1曲」というイメージが強くあります。

もともと「プロセカ」の中でもワンダーランズ×ショウタイムというグループのイベントストーリー用の曲として書き下ろした曲で、彼女たちのさらなる成長をイメージして、なんならそこからもっと駆け上がっていく様を思い描きながら作ったんです。その前向きな感じ、祝福しているような空気感が最後にピッタリなのかもしれないです。

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

──ボーナストラックには「あいち県民の日」のテーマソング「愛を知る」が収録されています。まらしぃさんはこれまで“名古屋走り”を曲にしたり、地元の動物園に楽曲を提供したり、地元に根ざした楽曲をいくつか書いていますが、県政からオファーを受けて曲を作るというのは、これまでとは違った難しさがあったのでは?

正直どんな曲にすればいいか、すごく考えました。僕は生まれも育ちも愛知で、大学や就職で一時的に他県にいたこともないんですよ。しばらくよそにいてひさしぶりに帰ってきたときに初めて地元のよさを知る、みたいなことがあると聞きますが、僕の場合はずっと愛知暮らしなのでその感覚もなくて。唯一わかるのは、離れたくないと思わせる居心地のよさ。ほっとする感じなのかなと思い、そこを膨らませる形で曲を作りました。聴いてくれた人が愛知県民でなくても、自分の部屋でお茶でも飲んでいるときに耳に入って「ああ、なんか落ち着くな」と思ってもらえたら幸いですね。

──ピアノの曲なので歌詞は存在しませんが、「愛を知る」にはボーカルラインのようなメインメロディがあります。この曲に限らない話ですが、まらしぃさんは曲を作るときに歌詞や言葉を乗せながら曲を書いているのでしょうか?

曲によっては言葉を思い浮かべながら作曲していることもあります。「愛を知る」はどちらかと言えば言葉をイメージしながら作曲したかな。例えば宇宙に関連するテーマで曲を書くときは言葉というよりも情景を思い浮かべながらピアノを弾いて曲を作りますし、自分にとって親しみのあるものだと言葉を思い浮かべますね。

──「愛を知る」のように最終的に歌詞が入らないことに対して、もどかしさを感じるようなことはありませんか?

あまり感じないかもしれないですね。ピアノを弾くことだけを30年くらいやってきてますので、そこに言葉を関連付ける必要があまりなくて。だから自然と歌詞が存在しない曲になりがちですし、たまに歌詞先行で曲を作るときもありますけど稀ですね。

縦が合った瞬間の達成感

──特典のDVDには弦楽四重奏とのセッション動画が3曲収録されています。「THE FIRST TAKE」の話に近いかもしれませんが、収録に際してはどれくらい打ち合わせや練習をして本番を迎えるのでしょうか?

四重奏の方々がこういうフレーズを弾く、というのは事前に知った状態でお会いして、1回「せーの」で合わせたのをみんなで聴いて。「ここはもっとチェロが活躍してもいいかもしれません」「ここのセカンドバイオリンは少し音量を抑えめにしてみましょう」みたいな打ち合わせを少ししたらもう本番、という感じです。「THE FIRST TAKE」と違うのは、本番を何度か繰り返せるところくらいかな。普段は僕が1人で弾くことが多いので、四重奏の皆さんと話し合いながらベストを探して作り込んでいく工程はすごく新鮮でした。

──幾田さんのようなボーカリストだったり、logical emotionだったり、kors kさんのようなDJだったり、これまでさまざまなアーティストとコラボしてきたまらしぃさんが感じる、弦楽器との共演で印象深かったことは?

全員の息がそろうと“縦が合う”感覚になるんですよ。いろんな形でいろんな方と共演してきましたけど、縦が合った瞬間の達成感は弦楽器が一番気持ちよくて、グッときました。かなり充実感のある体験でしたね。皆さんそれぞれプロフェッショナルですので、基本的にはクリック音を聴いて合わせるわけですけど、やっぱり5人いると人間のリズム感や音の乗せ方でごくわずかなズレがあるんですよ。それが息を合わせてバッチリ合った瞬間の音はすごくカッコいいし、難易度が高いがゆえに達成感はすごくありました。そんなところに注目しながら、映像を楽しんでもらえたらうれしいです。

──現在開催中のツアー「marasy Piano Live Asia Tour 影奏会 EN-SOUKAI」についても聞かせてください。12月に行われたツアーの前夜祭を拝見しましたが、タイトル通り影の演出にこだわった、いつものライブとは少し趣が異なるものですよね。

過去のライブで、僕の演奏している姿に光を当てていただいて背景に影を映し出すという演出をやっていただいたのですが、それが非常に好評で。僕自身もお気に入りだったので、ステージ後ろにパネルを置いてシルエットで見せたらカッコよくなるかなと思い、今回のセットのコンセプトにしてみました。影の見せ方だけではなく、生音の演奏にもこだわっていて、今回のツアーではすべての公演でマイクを介さず生のピアノの音を堪能できるようにしています。普段はパソコンやスマートフォンで僕のピアノを聴いていただいている皆さんに、ライブのときくらいは生の楽器の響きを楽しんでもらいたいですね。

──いつものツアーだったら手拍子を求めるシーンがあったりしますが、「影奏会」はじっくり聴かせるセットリストになっている印象があります。

個人的にはみんなで手拍子を打ちながら楽しむライブも大好きですが、生音のライブだとピアノの音が聞こえなくなっちゃうので、今回は手拍子を封印してもらっています。手拍子はできないけど、その代わりにちゃんと楽しめるよう、曲目や展開は考えていますので退屈はさせないつもりです。

──まらしぃさんのライブには珍しく撮影OKの時間があったり、“相棒”であるアンパンマンピアノが登場したり、確かに飽きないライブでした(参照:まらしぃが生音ツアー“前夜祭”でルーツ奏でる、最新の「marasy piano world」もひと足先にお届け)。

6月まで続くツアーでコンセプトは変わらないものの、会場によってグランドピアノの響きは変わりますし、もしかしたら弾き方やセットリストが変わることもあると思うので、少し時間を空けてまた観に来てもらっても面白いかもしれないです。

──愛知公演では「愛を知る」が披露されるかもしれませんし。

ドキドキしますね(笑)。愛知公演はおそらく地元の色が出るセットリストになりそうですし、北海道は初音ミク発祥の地なのでボカロ曲を弾こうかな、とか。地方ごとにやりたいことはありますので、各地の公演を楽しみにしてもらえたらうれしいです。

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

公演情報

marasy Piano Live Asia Tour 影奏会 EN-SOUKAI

  • 2025年12月26日(金)東京都 東京オペラシティコンサートホール(「前夜祭 marasy Piano World」)
  • 2026年1月12日(月・祝)長野県 松本市音楽文化ホール メインホール
  • 2026年1月24日(土)熊本県 熊本城ホール シビックホール
  • 2026年1月25日(日)長崎県 長与町民文化ホール
  • 2026年2月7日(土)兵庫県 神戸朝日ホール
  • 2026年2月8日(日)福岡県 FFGホール
  • 2026年2月21日(土)広島県 広島国際会議場 フェニックスホール
  • 2026年2月23日(月・祝)岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場
  • 2026年3月1日(日)北海道 札幌コンサートホールKitara 大ホール
  • 2026年3月14日(土)長野県 軽井沢大賀ホール
  • 2026年3月29日(日)茨城県 水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)
  • 2026年4月2日(木)愛知県芸術劇場コンサートホール
  • 2026年4月4日(土)神奈川県 神奈川県立音楽堂
  • 2026年4月18日(土)大阪府 ザ・シンフォニーホール
  • 2026年4月25日(土)千葉県 市川市文化会館
  • 2026年5月8日(金)東京都 すみだトリフォニーホール(※追加公演)
  • 2026年5月16日(土)台北 新北市芸術文化センター演芸ホール
  • 2026年5月30日(土)韓国 光林アートセンター
  • 2026年6月13日(土)沖縄県 南城市文化センター・シュガーホール

プロフィール

まらしぃ

2008年よりニコニコ動画の“弾いてみた”カテゴリなどで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリースした。2013年にはトヨタのハイブリッドカー「AQUA」のCMソングの演奏を担当し、CMでオンエアされた「チョコレイト・ディスコ」「千本桜」のカバーはいずれも大きな話題を集めた。2019年3月からはアジアツアー「marasy piano live asia tour 2019」を開催し、日本国内に加え中国各地でもライブを行った。2021年3月には東京・日本武道館にてグランドピアノ1台による単独公演「marasy piano live in BUDOKAN」を開催。2021年7月にボカロカバー集「V.I.P X marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano」をリリースした。2024年11月に約4年ぶりとなるオリジナルアルバム「Piano monkeys」、2026年2月にカバーアルバムシリーズの最新作「marasy piano world 88」を発表。2026年6月まで生音ツアー「marasy Piano Live Asia Tour 影奏会 EN-SOUKAI」を開催中。