まらしぃ「marasy piano world 88」特集|アンパンマンからYOASOBIまで、老若男女を魅了する最新カバー集 (2/3)

“アンパンマンピアノ”は相棒

──まらしぃさんのやっていること、具体的に言えば「ネット発でもドラマの曲でも、好きな曲をピアノで弾く」という行動の軸は変わっていませんよね。ある意味、時代がまらしぃさんの選曲に追いついてきた感覚もあるのかなと。

そこまで大層なことは感じていませんが、生配信に新しい人たちが参加してくれるようになりましたね。もちろんニコニコ動画の全盛期から動画を観てくれている古参の人もいますけど、最近はTikTokとかInstagramのバズから曲を知ってくれる世代もあって。そもそも音楽の広がり方、伝わり方自体が変わってきたなと感じています。僕は相変わらず昔のニコニコのノリで、アンパンマンのおもちゃのピアノで遊んだりしてるだけなんですが(笑)。

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

──アンパンマンピアノ(※正式名称は「キラ★ピカ★いっしょにステージ ミュージックショー」)による弾いてみた動画は、ここ最近のまらしぃさんのショート動画の中でも鉄板のネタになりつつあります。アルバムの1曲目が「アンパンマンのマーチ」なのもこれを受けてですか?

それもあるんですが、アンパンマンピアノにお世話になっているという要素はもちろん、やっぱりカバーするからには誰もが知っている曲を弾きたいという思いもあって。アンパンマンって日本の子供たちがだいたい通る作品じゃないですか。僕の幼少期は早朝の5時とかに放送されていたんですが、がんばって早起きして観てました。

──幼少期から現在までアンパンマンに縁のあるアーティストである、と。

今では勝手に「アンパンマンピアニスト」を名乗っていますからね(笑)。アンパンマンピアノの演奏動画は海外の方にも認知されているみたいで、たまに動画のコメント欄で「普通のピアノも弾けるんだ!」とびっくりされる機会も増えています。うれしいですよね。

──けっこういろんな曲をアンパンマンピアノで再現していますが、普通のピアノよりも鍵盤の数が少ないので、なんでもかんでも弾けるわけではないですよね?

もちろんそうですが、意外と自由度は高いです。鍵盤が足りなくなったらオクターブ下の音をうまく拾ったり、キーを変えて一番上の音を調整したり。難しいのは超速い曲を弾くことくらいで、大抵の楽曲は工夫さえすればなんとか弾けますね。あとこの楽器のすごいところは耐久性。けっこう強い力で弾いても大丈夫。本当に素晴らしいですね、アンパンマンピアノは。

──まらしぃさんにとっておもちゃではなく、楽器という扱いなんですね。

はい。僕にとっては相棒みたいなものですから(笑)。

思い入れが強すぎるYOASOBI曲

──アルバムにはYOASOBIの楽曲「夜に駆ける」「アイドル」も収録されています。まらしぃさんがカバーアルバムで同じアーティストの曲を2つ選ぶのは珍しいですよね。

収録曲のアーティストやジャンルはバラけさせたいと思っていましたが、この2曲は個人的な思い入れが強すぎて、ここ最近の自分の活動をまとめるなら外せないなと。どうせ同じアーティストさんの曲を入れるなら並べちゃえ、と開き直って2曲立て続けに収録することにしました。

──「夜に駆ける」の弾いてみた動画はYouTube上でもいくつかバージョン違いがあり、まらしぃさんがよく弾いている曲という印象があります。

コロナ禍の毎日配信しているタイミングで視聴者の方に教えてもらったのが最初の出会いで。とにかくメロディが印象的で、カバーするのが難しくて、すごく向き合う時間の多かったのが「夜に駆ける」でした。そもそもイントロが複雑だし、間奏もキレイに聞こえるけど音が飛躍していて、ピアノ1台で表現するのが難しい。当時はとりあえず1コーラスだけカバーした動画を投稿してフルバージョンを後日また公開するという、それまでにはないやり方でカバーした楽曲でもあります。

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

──楽曲に出会ってから5年以上経ち、今回のアルバム用に弾き直すにあたって変えたところは?

楽曲への向き合い方自体は変わっていませんが、以前は難しくてあきらめたことにもう1回チャレンジしました。例えば、本当は和音をオクターブで弾きたかったけど、あのときは間に合わなかったので単音で鳴らしていたところがあって。今回はそれにチャレンジしています。この曲に限らず、生配信や動画投稿の際は弾きやすい手法を採用していたものを、今回のレコーディングでブラッシュアップしています。

──幼少期からピアノを習っていて、まらしぃとしてのデビューからも15年以上経っている今でも、まだ成長の余地は感じていますか?

うーん。客観的にどれくらい成長しているかはわかりませんが、もっとピアノが上手になりたい、これはできるようになりたいと思うことは今でも尽きませんね。ただ、演奏って丁寧に弾けばいいわけでもなくて、勢いに任せて弾いたほうが印象に残るようなことも多々あるんです。ちょっとは上達した自分を見せたいけど、上手になることだけにこだわらないようにもしています。

コラボから10年……ニノと邂逅

──「メリークリスマス」「ちょっとつよい魔王」の2曲は、嵐の二宮和也さんとのつながりが深い曲ですね。

はい。「メリークリスマス」は嵐のアルバム(2014年リリースの「THE DIGITALIAN」)に収録された二宮さんのソロ曲ですが、昨年は二宮さんのソロアルバム(「〇〇と二宮と2」)でコラボのお話をいただいて。そのときに僕が担当したのはスキマスイッチさんの「未来花」のカバーで、ありがたいことに二宮さんファンミーティングでご本人と10年越しにお会いする機会もいただいたんです。

──二宮さんとはどんな話を?

以前「メリークリスマス」のコラボでやりとりをさせていただいたのもあって、初対面だけど初対面ではないような、不思議な感覚でした。話した内容はとりとめのないことで、普段の生活の話だったり、健康の話だったり。そのときにちょうど僕もカバーアルバムの制作を考えていたので「『メリークリスマス』を収録させてもらってもいいですか」と相談したんですよ。これまでなかなか弾き直す機会がなかったので、ようやく実現して喜びもひとしおというか、すごくうれしかったですね。

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

まらしぃ(撮影:Lestat C&M Project)

──ドラマ「ブラックペアン シーズン2」の劇版として使用された「ちょっとつよい魔王」のほかにも、CMソングとしてオンエアされた「夢」など、まらしぃさんのピアノがお茶の間に流れる機会が多かったのもここ数年のトピックスだったと感じています(参考:西野七瀬が出演「ほろよい」新CM曲は塩入冬湖&まらしぃによるブルハ「夢」カバー)。

ありがたい限りですね。最初にリリースした「marasy piano world」のときも、TOYOTAさんのCM向けに演奏させていただいた曲を収録して。テレビでオンエアされることで反応をいただくことも多いですし、そこが僕を知るきっかけになる方も数多くいらっしゃるんです。なので、CMで演奏を担当させてもらった楽曲は、今回カバーをするにあたって外せないなと。

──「marasy piano world 88」は、まらしぃさんの活動を振り返るだけでなく、アーティストや仕事の縁を形にしたような作品だとも感じました。

僕の選曲意図がまさにそうなんです。本当におっしゃる通りで、たくさんの演奏者さんがいらっしゃる中で僕を指名してくれたというのはひとつ大事なご縁だと思っていますので、やっぱりそこは大切にしたいなと。僕にとってもアルバム作品は卒業アルバム的な意味合いもありますね。本当に写真をページに挟んでいく感覚に近いんですよ。なので今回のアルバムは、ここ数年の僕の思い出やつながりが形になった作品だと自分では捉えています。