ナタリー PowerPush - Manhattan Records The Exclusives Japanese Hip Hop Hits Vol.4

「“東京”弐拾伍時」インタビュー

スティル小学生

──今回のミックスCD「Manhattan Records "The Exclusives" Japanese Hip Hop Hits Vol.4」は選曲が全体的にストリート感が強いように思いました。

左からDABO、SUIKEN、S-WORD、DJ HAZIME。

S-WORD それはどういう意味で?

──東京の不良っていう。

SUIKEN 少なくともここには1人も不良いないよ(笑)。

DJ HAZIME でもね、本当にそうなんだよ。決して優等生ではなかったけど、マジで俺たちは不良じゃないんです(笑)。

S-WORD なんていうかさ、不良にもなりきれてないんだよね。悪ガキ止まり。中学生にもなってない感じ。スティル小学生。特にこのメンバーといるとその感じに戻れるというか。

──このミックスCDの収録曲の多くがリリースされた1990年代後半~2000年代初頭の渋谷って、やはり怖いイメージがありましたよ。僕はあまり行きたくない場所でした。

S-WORD あの時代の渋谷をリアルに知らない人がこれを聴くとそういう不良のイメージが思い浮かぶのかもね。でもね、俺らはただバカみたいに遊んでただけ。別に不良とかそういうんじゃなく。

DJ HAZIME あと選曲的な部分で言うと、最初の4曲がニトロ関連であるっていうことと、MUROさんや雷の曲が全体の3分の1くらいを占めてるっていうのもあるんじゃないかな。やっぱ「ペイジャーが最高」っていうのが俺の原点だしね。

俺は“ラッパー”として勝負してるやつが好き

──ちなみに皆さんが注目しているヒップホップアーティストはいますか?

DABO

DABO 沖縄のRITTO。

SUIKEN MACKA-CHIN。去年出た「incompleteness theorem」ってアルバムはすげーよかったし。

S-WORD 身内に刺激的なラッパーがそろってたから、あまり外を見なくてもいいというのはあるかもね。

SUIKEN もちろん外もちゃんと見てるけどね。それでもMACKA-CHINはカッコいいと思うよ。

S-WORD ただ、言っても俺らおっさんだし。そこまで詳しいわけじゃないけど、最近の若いやつらはラップもうまいし、作るトラックもスタイリッシュだし。別にManhattan Records所属だから言うわけじゃないけどAKLOとSALUなんかはすごくバランスいいと思う。俺は“ラッパー”として勝負してるやつが好きですね。若くないけどANARCHYとかも。

DJ HAZIME 好きなラッパーってなると今S-WORDが言ったメンバーに加えて、SIMONだよね。でも“最近”って聞かれると、彼らはもう3~4年前から注目されてるわけで。

「ニトロ=東京代表」という時代

──ニトロ以降、ヒップホップで大きな成功を収めた若手アーティストがいません。その原因はなんだと思いますか?

DJ HAZIME 本人の問題じゃないですか? かつて“ニトロと言えば東京、東京と言えばニトロ”という時期があったわけですよ。100人に「東京で今一番イケてるヒップホップグループは?」と聞くと、結構な人が「ニトロ」と答えるような。そういう人がいないじゃない? そういう意味でも今は突き抜けた存在がいないと思う。

S-WORD 原因って言われても、俺にはわかんないな。でも少なくともニトロは「突き抜けよう!」とかそういうことを意識してなかった。ただただ楽しいと思うことをしてたら、勝手に飛び火しちゃった感覚。でも今の世代を見てると、誰かが意図的にムーブメントを作り出そうとしている感じが見えすぎてる。

──逆に、意識的すぎるということですか?

SUIKEN

S-WORD うん。勝手に燃え広がっちゃうのと、誰かに言われて燃え広げようとするのでは勢いが違うと思うんだよね。前者だと収拾がつかないじゃないですか。限界がないというか。そうすると“村”の外まで飛び火しちゃうっていう。

──当事者であるニトロの皆さんも、当時は収拾つかない感じだったんですか?

SUIKEN 終着点がわかんなかったからね。

S-WORD 勝手に好きなことしてるだけなのに、みんなも喜んでる、みたいな。俺らが変わったというより、周りの景色が変わった。俺らはその時期を経て今があるんです。だから、もう感覚がズレちゃってるよね。できれば、いろんな人と同じ感覚で話がしたい。ここまで来て同じ景色を見てほしい、みんなに。ま、偉そうに言えば、ね(笑)。

V.A.「Manhattan Records "The Exclusives" Japanese Hip Hop Hits Vol.4」
2014年7月16日発売 / 2700円 / Manhattan Recordings / Lexington.Co., Ltd. / LEXCD-14016
収録曲 / アーティスト
  1. 東京弐拾伍時 / DABO, MACKA-CHIN, SUIKEN & S-WORD
  2. Interlude / DABO
  3. 45 Fingaz of Death(Remix) / NITRO MICROPHONE UNDERGROUND
  4. Double Trouble / SUIKEN
  5. ナゼナラ / キエるマキュウ
  6. Wonder Wheel / サイプレス上野とロベルト吉野
  7. Fade Away / RIP SLYME
  8. ウワサの真相 feat. F.O.H. / RHYMESTER
  9. Relax Mathaf**ka(23区別注) / G.K. MARYAN feat. MACKA-CHIN, GORE-TEX, GAMA
  10. Interlude / S-WORD
  11. Smokin' Blaff / S-WORD
  12. 夜ジェット / 雷
  13. DA・YO・NE / EAST END×YURI
  14. Interlude / SALU
  15. Spaceboy / SALU
  16. サッカー feat. JAY'ED / AKLO
  17. 23時各駅新宿 / NORIKIYO
  18. 何ひとつうしなわず / BRON-K
  19. O-Town Swinga / DOBERMAN INC.
  20. Let's Get It Started feat. Swizz Beats / ZEEBRA
  21. 夢の痕 / 般若
  22. 病む街 / MICROPHONE PAGER
  23. 字幕 / SOUL SCREAM
  24. HIGH-NEKKEN / 四街道ネイチャー
  25. 彼方からの手紙 / スチャダラパー
  26. 雨降りの月曜 / LIBRO
  27. イッサイガッサイ / KREVA
  28. ゆれる feat. 田我流 / EVISBEATS
  29. 雪ノ革命 / GAGLE
  30. ROLLIN'045 / OZROSAURUS
  31. ミチバタ / COMA-CHI
DABO, MACKA-CHIN, SUIKEN & S-WORD 配信シングル「東京弐拾伍時 」2014年7月9日配信開始 500円
「東京弐拾伍時 」
デジタル版ミックスCD「Manhattan Records Presents "Japanese Hip Hop Hits"(Special Edition)」
「Manhattan Records Presents "Japanese Hip Hop Hits"(Special Edition)」

左からDJ HAZIME、S-WORD、DABO、SUIKEN。

プロフィール(左から)
DJ HAZIME(ディージェーハジメ)

東京・渋谷を中心に国内外で活躍するクラブDJ。「Manhattan Records "The Exclusives" JAPANESE HIP HOP HITS」をはじめ数多くのミックスCDを手がけている。またプロデューサーとしては、SHAKKAZOMBIE、NITRO MICROPHONE UNDERGROUND、DABO、安室奈美恵、PUSHIM、MINMI、RYO THE SKYWALKERらに楽曲を提供。さらに2004年にはソロアルバム「AIN'T NO STOPPIN' THE DJ Vol.1」、2013年には「AIN'T NO STOPPIN' THE DJ Vol.2」をリリースした。最新作は「Manhattan Records "The Exclusives" JAPANESE HIP HOP HITS Vol.4」。

S-WORD(スウォード)

1975年生まれ、東京都出身のラッパー。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの主要メンバーとして活躍する。メジャーデビュー作品は、2002年3月発売のシングル「KROSS OVA' <斬>」。これまでに「ONE PIECE」「STAR ILL WARZ」「KING OF ZIPANG」といった作品を発表する。CD+DVD仕様の「FORTUNE」では自ら監督を務めた映像作品も収められた。また、FORCE OF NATUREがアニメ「サムライチャンプルー」のサウンドトラックに提供した楽曲「日出ズルSTYLE」にSUIKENとともに参加。

DABO(ダボ)

1975年生まれ、千葉県出身のラッパー。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの主要メンバーとして活躍する。インディーズでの活動を経て、2001年にシングル「拍手喝采」でメジャーデビュー。「THE FORCE」「HI-FIVE」など多数のアルバムを発表し、「デッパツ進行」など多数の人気曲を残した。また客演ラッパーとしてBoAやPUSHIMといったシンガーからキエるマキュウなどさまざまなアーティストと共演。ANARCHY、KREVAと共演したDJ HAZIME「I Rep」は日本のヒップホップシーンで大きな話題となった。

SUIKEN(スイケン)

1975年生まれ、東京都出身のラッパー。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの主要メンバーとして活躍する。2000年にリリースされたシングル「ALKMAN」でメジャーデビュー。「SUIKEN PRESENTS SIXTEEN STARS」「STRAIGHT FROM THE UNDERGROUND」「HOT IN POT」「DEVELOPMENT」という4枚のフルアルバムを発表した。さらにSUIKEN×S-WORD名義でアルバム「HYBRID LINK」「MASTER LINK」という2作品を残している。