ナタリー PowerPush - 家の裏でマンボウが死んでるP
タカハシヨウ×大槻ケンヂ
ボカロとボーカリストの幸せな出会い
家の裏でマンボウが死んでるP(裏マンP)が2ndアルバム「壊れた世界で花を抱く」を9月25日にリリースする。
今作はアルバムを通してひとつの物語を描き出すコンセプトアルバム。物語のとある一場面や、登場キャラクターについて歌った楽曲群、さらに声優・釘宮理恵と小野賢章によるボイスドラマが収録され、初回限定盤にはその物語に沿った裏マンPの音楽と物語を担当するタカハシヨウ書き下ろしの小説も付属する。また裏マンPはこの新機軸ともいえるアルバムの中で大槻ケンヂとボーカロイドがデュエットする楽曲「次元跳躍シャンプーハット featuring Dr. 冠次(CV:大槻ケンヂ)」で新しいチャレンジも敢行している。
そこで今回ナタリーではタカハシと大槻の対談を実施。その出会いや楽曲制作秘話はもちろん、ネットとアーティストの距離感、アーティストが文芸という表現を模索する理由など、幅広い話を聞いた。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 上山陽介
「いくらお支払いすればいいのか心配で……」
──ナタリー的にはタカハシさんとは1stアルバム「My Colorful Confuse」以来、1年半ぶり(参照:家の裏でマンボウが死んでるP「My Colorful Confuse」インタビュー)なんですけど、大槻さんにはここ数カ月お世話になりっぱなしで。まず人間椅子の和嶋(慎治)さんと対談(参照:人間椅子「萬燈籠」発売記念、和嶋慎治×大槻ケンヂ対談)していただいて、次にDDTプロレスの高木三四郎大社長との対談(参照:高木三四郎×大槻ケンヂ対談)があって、今回はタカハシさんとの対談、と。
大槻ケンヂ なんか毎月出てますよね。
──でも、たまたまなんですよ。和嶋さんや高木社長に対談相手の希望を聞いたら口をそろえて「大槻さんだ」と。そしてタカハシさんは自分のアルバムに大槻さんに参加してもらっている。みんなが大槻さんを指名するんです。なぜ大槻ケンヂはこんなに愛されるんでしょう?
大槻 あのね、最近、夜中のラジオ番組に呼んでもらったら、パーソナリティの荻上チキさんが特撮の大ファンで「大槻さんは神だ」ってすごいリスペクトしてくれたことがあったんですよ。で「ああそっか、オレは神様だったのか」って思いながら家に帰ってたんだけど、小腹が空いたから途中コンビニでおにぎりを買って。深夜、それを食べてるときに「あっ、神様がおにぎりを食べてる」って気付いちゃった。たぶんそのコンビニ神様感覚が重宝されてるんだと思いますよ。
──コンビニのおにぎりを食べる、カジュアル感覚あふれる神様だから(笑)。
大槻 うん、そう。「大槻ならお車代くらいで来てくれるんじゃない?」ってライト神様感というか(笑)。それは重要なポイントだと思いますよ。ねっ。
タカハシヨウ いやいやいや! オファーさせていただいた側からしてみたら、今の大槻さんのお話って全っ然ピンとこなくて。
──当然、大槻さんを1位指名したわけですからね。
タカハシ そうですそうです。今回のアルバム「壊れた世界で花を抱く」にボーカル曲(「次元跳躍シャンプーハット featuring Dr.冠次(CV:大槻ケンヂ)」)を入れようってなったとき、なんというか、この人が歌うだけでサマになる、形になる、作品になる、って思える方が大槻さんだったんです。「大槻ケンヂという楽器」として成立している、というか。楽器なんかにたとえるのは失礼になるのかもしれないんですけど……。
大槻 いやいやいや。声やキャラクターを楽器的に解釈してくれるのはうれしいなあ。
タカハシ そういうはっきりとした個性のあるボーカリストだから、みんなが大槻さんを求めるっていう面もあるんだと思います。僕はそうでしたし。なので、けっしてギャラの折り合いがついたからお声がけしたわけでは(笑)。むしろいくらお支払いすればいいのか心配してるくらいなので(笑)。
「今ボキャブラリーが豊富だと思うのは裏マンPとトータルテンボス」
──タカハシさんが「大槻ケンヂという楽器」の魅力に気付いたのっていつ頃なんですか?
タカハシ もちろん以前から大槻さんや筋肉少女帯のことは知っていたし、聴いてもいたんですけど、魅力に改めて気付いたのは、ボカロPとして活動を始めてからですね。というのもニコ動に曲を投稿するようになったら「似てる」ってコメントをいただくようになって。
大槻 似てる? あっ、歌詞の感じとかね。
タカハシ そうなんです。ストレートにはやらない感じとか、ちょっとヒネった歌詞の雰囲気が似てるって話をいただくんです。それで大槻さんの楽曲を聴き直してみたら「あっ! 僕がやろうとしていることをもうやってる人がいた!」って改めて気付いてしまいまして(笑)。あと、大槻さんがMCをなさっていたボカロの番組(NOTTV「ボーカロイドステージ」)の第1回のゲストに呼んでいただいて。僕はVTRでの出演だったんですけど、その映像を観た大槻さんに「大喜利がうまそう」ってコメントをいただいたこともあって。
大槻 なんかすごいボキャブラリー豊富な感じがしたんですよね。今、ボキャブラリーが豊富だと思うのは裏マンPとトータルテンボスだけだから。ホントに言葉の使い方がうまい。まずトータルテンボスは、漫才をより面白いもの、レベルの高いものにするために難しい言い回しを徹底的に勉強してますよね。そこが素晴らしい。……トータルテンボスはいいとして(笑)、裏マンPはあれだよね。そのボカロの番組で動画を観たとき「すごいいろんな切り口、それも面白い切り口で詞を書くなあ」って感心したんですよ。
──それこそ今回のコラボ曲のように2次元と3次元を行き来するキーアイテムにシャンプーハットを持ち出してみたり(笑)。
大槻 うん。そういう切り口が面白かった。
タカハシ ありがとうございます! そう言っていただいた経緯もあったので、ダメもとでお願いさせていただいたんです。
- ニューアルバム「壊れた世界で花を抱く」 / 2013年9月25日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- ニューアルバム「壊れた世界で花を抱く」 / 初回限定盤
- 初回限定盤 [CD+DVD+小冊子] / 2970円 / VIZL-579
- 初回限定盤(※Amazon.co.jp限定)[2CD+DVD+小冊子] / 2970円
- 通常盤 [CD] / 2200円 / VICL-64063
CD収録曲(全仕様共通)
- オーロラは毛穴が開いてるだけじゃなかった
- ボイスドラマ「壊れた世界で不覚を取る」
- 地底人が見せた抜群の生活感
- 浮かれバケモノの朗らかな破綻
- ボイスドラマ「壊れた世界で度が過ぎる」
- 宇宙人に菓子折りを包まれる
- 次元跳躍シャンプーハット
- ボイスドラマ「壊れた世界で匙を投げる」
- 風が吹けば人類が終わる
- 星のとなりの空け者 ~彦星~
- 星のとなりの空け者 ~織姫~
- 星のとなりの空け者 ~カッパ~
- ボイスドラマ「壊れた世界で神は知る」
- その魔王はまるで恋する乙女のように
- ヒーロー
- さくら
初回限定盤 DVD収録内容
- 地底人が見せた抜群の生活感
- 浮かれバケモノの朗らかな破綻
- 次元跳躍シャンプーハット
- 風が吹けば人類が終わる
- 星のとなりの空け者 ~彦星~
- 星のとなりの空け者 ~織姫~
- 星のとなりの空け者 ~カッパ~
- その魔王はまるで恋する乙女のように
- さくら
Amazon.co.jp限定特典 CD収録内容
- セカンドアルバム「壊れた世界で花を抱く」ボイスドラマBGM & キャストトーク
家の裏でマンボウが死んでるP
(いえのうらでまんぼうがしんでるぴー)
音楽を担当するタカハシヨウと、絵師の竜宮ツカサによる姉弟ユニット。タカハシヨウが2009年にニコニコ動画に発表した「家の裏でマンボウが死んでる」が注目を集め、その後も意味不明なタイトルから想像できない感動的な歌詞世界と、ボーカロイドの特性を生かしたハイテンションかつキャッチーなサウンドでニコニコ動画ユーザーを中心に人気を獲得する。2012年4月にSPEEDSTAR RECORDSよりアルバム「My Colorful Confuse」でメジャーデビュー。2013年9月25日にメジャー2ndアルバム「壊れた世界で花を抱く」を発表する。なお音楽活動にとどまらず、家の裏でマンボウが死んでるPとしてWEBコミック配信サイト「ガンガンONLINE」でマンガ「浮かれバケモノの朗らかな破綻」を連載しているほか、タカハシヨウは小説の執筆やマンガの原作など多角的に活躍している。
大槻ケンヂ(おおつきけんぢ)
1966年東京出身の男性シンガー / 作家。中学の同級生だった内田雄一郎と筋肉少女帯を結成し、1988年にアルバム「仏陀L」でメジャーデビュー。不条理かつ幻想的な詩世界と卓越した演奏力で、独自の世界観を確立する。またバンド活動と並行して、小説やエッセイを執筆。青春小説「グミ・チョコレート・パイン」は2007年に映画化され、話題となった。また1995年にはソロアーティストとして、アルバム「ONLY YOU」をリリース。1999年には新バンド・特撮を結成し、精力的なライブ活動を展開する。2006年に筋肉少女帯が再活動。現在はバンドやソロなど、さまざまな活動を行っている。