ナタリー PowerPush - AOMORI ROCK FESTIVAL '12~夏の魔物~

野望実現! 成田大致×吉田豪

とことんデタラメなことをしたい

──そもそもSILLYTHINGっていうバンド名自体、ジョニー・ロットンが抜けたあとのSEX PISTOLSっていう、要はバンドがデタラメになってからの曲名じゃないですか。大列車強盗のロニー・ビッグスを連れてきて歌わせたりとかしてた頃の。

インタビュー写真

大致 はい。なので、とことんデタラメなことをしたい……って言っていいの?

マネージャー だからSILLYTHINGなんだろ?

大致 そうです。なんでもありだけど、それが成立しちゃうっていうか。

──今度違うものにハマったらそれも取り込んでいくわけですよね。

大致 いわゆる武藤敬司が時代に沿ってやってきたことと同じで。それこそアントニオ猪木もそうだったと思いますし。例えば長州力だったらこれだ、ラフィンノーズでもこれだっていうのがあるじゃないですか。そうじゃなくて、もっと柔軟な。猪木が異種格闘技戦やりつつも急にアメリカンプロレスやったりとか、そういったところがいいなと思ってて。武藤敬司にも絶対そのエッセンスって入ってるじゃないですか。俺にも入ってるような気がするんですよ。

──そういえば武藤敬司は全日本に、ももクロとアリス十番を呼んでましたもんね。

大致 それも、なんとなく面白いからやってると思うんですよ。あの武藤敬司の急激に変わっちゃうっていうとこがすげえ好きで。去年の全日本と今の全日本は景色が違うじゃないですか。

──その時期のレギュラー陣によって全然違いますからね。

大致 はい。最初はどうなんだろうと思ってたんですけど、三冠ベルトを船木(誠勝)が巻いてるっていう、10年前からしたらわけわかんないことが起こってるし、武藤敬司がやってる武藤一座っていうことで成立してるのが全日本プロレスだと思うんですよ。結構武藤敬司も投げっぱなしだなと思ってて。そこにシンパシー感じますね。

マネージャー シンパシー感じてても、おめーは武藤じゃねーだろ!

──(さえぎって)アリス十番とはライブでも絡んでましたけど、あそこもトラブルを全てネタにする頭のおかしい事務所ですもんね。メンバーが失踪したのをレズのこじれって発表したアイドル史上ありえない事件があって。

大致 はい(笑)。

──赤星ぽち仔っていうメンバーが失踪したんですよ。そしたら、彼女の母親からメールが来たのをそのまま彼女のブログに全文転載して、それが「原因は恋愛問題です。娘が付き合っているのは女性で、いわゆるバイセクシャル。その彼女にお金を送っていて、そして失踪しました」って内容で。しかも、その日がヒャダインさんのUstreamで、普通だったらそのネタはNGになるじゃないですか。そしたら、みんなで「ぽち仔、帰ってきて!」とか連呼したりとか、マネージャーさんが「ぽち仔ネタもっとイジッて」ってカンペ出したりとか、本当にどうかしてるんですよ。

大致 UWFとかの狂気の感じあるじゃないですか。あれとすげえ似てるなと思ってて。頭おかしいなって、いつもマネージャーの方を見て思うんですよね。もしかしてプロレスが好きなのかなと思ってマネージャーの人と話したら「全然よくわかんないっすよ」とか言われて、「あれっ?」と思っちゃって。

──ただの悪ふざけだったっていう(笑)。

大致 ああ、そうですよね。あれはちょっと自分のプロレス観に近いなと思いましたけど。

THE WAYBARKを終わらせた理由

──いろんなジャンルにプロレスを感じたら、それを取り入れたくなるわけですかね?

大致 取り入れたいものっていうか、本来やりたかったものってなんなんだろうっていうのはあって。前のバンド(THE WAYBARK)はすげえボンヤリやってて、ホントになんとなくやってたっていうのが本音で。

──えらい正直な発言ですけど(笑)。

大致 で、ギターのヤツに全部委ねてたっていうか。自分が何か考えてやってるようでやってなかったなって、ホントにぬるま湯に浸かってたなと今は思ってて。で、前のバンドを終わらせた理由とかも、ギターのヤツが持ってる色とか、それが自分のものだと思われてることがすげえ嫌で。初めからそうだったのが、続けていけば続けていくほど、どんどん嫌になってきて。自分も曲を書いてみたりしたんですけど、結局メンバーでやってるその匂いが出るっていうか。だから全部嫌になっちゃって。今考えると、SILLYTHINGに生まれ変わった時点で同じメンバーでやらなきゃよかったんですけど……。

──ダハハハハ! もう遅いですよ!

大致 まあ、THE HIVESとか見て、単純明快ロッケンロール、イエーイ!みたいなのを作ろうとしてましたけど。なんとなくそれやってりゃいいんじゃねえか、ぐらいにしか思ってなかったんじゃないですかね。

──あ、そんな大雑把な感じ(笑)。

大致 はい。

マネージャー 「今思うとただダサいだけだった」っていうことですね。それにおまえがロックンロール!って言いまくってキャラ作ってたろうが!

大致 (さえぎって)マジなんでこの年数これに使ったんだろうっていうぐらいで。でも気付くの遅すぎじゃねえかって自分で今思ってて。自分でもマジじゃなかった部分がいろいろあって反省はしてます。

──今は、曲はいい曲を書く人にどんどん頼めばいいじゃないかっていうシンプルな発想になったわけですよね。

大致 そうですね。プラス、俺は楽器とかもできないんで、ギターのヤツが曲を作りたいって言っても、そいつが作ったものはやりたくないって思いが最初からあって。新しいバンドになってからもずっとギターのヤツが曲を作りたいって言ってたんですけど、常にやりたくねえなとしか思ってなかったんで、昨日バンドを抜けたっていうことも起こるべくして起こったんだなって。

──SILLYTHINGの理想像とは違ったわけですね。

大致 今、理想像にすげえ近付いてきてて。この何週間か、ハジメタルさんがウチのバンドに関わってから空気が変わったんですよ。ベースも変わって新しいベースになったんですけど、そこからスタジオの空気が一変して。自分がこうやりたいっていう理想像にその2人が近づけてってくれてるというか。アレンジとかも含めて、「じゃあこれはこうこうこうで」って、その説明も俺はできないので。

──常に説明不足の人ですからね。それをなんとなく理解できる能力がある人が入って。

大致 はい。で、ギターとドラムはシーン、みたいなのが3週間続いてて。俺はそのときにバンドがすげえ動き始めたと思ってたんですよ。でもベースのあずちゃんとハジメタルさんがスタジオに入って「バンドが動いてきたな、これ」っていう感触があったと思ったら、ドラムが「もう楽しくない」って言い出して。「楽しくないって何?」みたいな。それでドラム脱退。で、ギターが今度、なんて言ったっけ?

マネージャー 「楽しいとは違う楽しくない、楽しくないとは違う、また楽しくない」って。よくわからないと思うんですけど。まあ全員バカなんで(笑)。

──全員バカ(笑)。

大致 まあ、辞めたいって言ってるヤツは、全部しゃあねえな、と。

マネージャー 読んでる皆さんに「俺がバカなんですけど」ってちゃんと言っておかないと。

大致 まあ、俺が一番バカなんですけどね。

マネージャー 「人のせいにばっかりして、俺が一番悪いんです」ってちゃんと言わないと。

大致 ハハハハ! そうです、俺がバカです! バンドなんで、やっぱ1つの物事に対して一緒に考えられないと成立しないっていうか……基本的な話ですけど(笑)。それができなかった。今はそれができそうでワクワクっていう感じです。

武藤敬司像が同じ人とやりたい

──じゃあ今後はムタの話がわかる人たちが。

大致 はい(笑)。自分の中の武藤敬司像と、今誘ってる人の武藤敬司像が同じような感じだったんで、この人と一緒に何かやりたいなっていう気持ちが湧いてきて。なんか新鮮だったです。

──これから先はムタでわかり合える人たちとの活動が始まるっていうことでいいんですかね(笑)。

大致 ハハハハハ!(笑)

──これ、もうちょっと説明します?

マネージャー いいんじゃないですかね。

大致 いいんですか?

マネージャー 逆に面白いんじゃない? 何か話すにしても、プロレスを絡めないと熱くなれないんですよ。だから今日はすごいやりやすかったんじゃない?

大致 うん!

マネージャー もっと下半身の話とか掘られると思ったんですよ。

──ボク、下半身話はマンガ家さんにしか訊かないですよ!

大致 こんな感じで大丈夫ですか?

マネージャー 説明不足だとは思うけど。昨日の反省点が生かされてなさすぎだしね。

──昨日は何を反省したんですか?

マネージャー 「起承転結」の「承転」がおまえはないっていうことと、人に対して気配りがないっていう話ですね。両方とも全くないんでビックリしてます。

──なんとか察してくれっていう気持ちはわかるんですけど、1から10まで言わないと人は意外とわからないもんですからね。

マネージャー ホントそうなんですよ。

──楽器ができないから、音楽をやる上でのたとえもわかりにくそうですよね。

大致 ああ、ミスター固有名詞だよね。

マネージャー 固有名詞しか出てこなかったからね。これプロレスとサブカルのせいですよ。

──それを拾える人じゃないと付き合えない。

大致 そうですね(笑)。

マネージャー 付き合ってあげてるっていう感じですね。全員こいつに呆れてる。

大致 ……すみません。

──やっぱり、お金持ちの家に育ったからこそ、こういう性格になったと思うんですよ。

マネージャー 1回「メンバー全員に覆面付けさせる」とか言ってて、「じゃあおまえどうすんの?」って言ったら、「俺は付けないよ」って平然と言ってて。こいつキチガイだと思いましたね。ホント自分のことしか考えてない。みんな結局覆面付けるのはやらなかったですけど。知り合いみんなから、大致は苦手って話しか聞かないもん。

──あーあ!

マネージャー 「おまえ、よく付き合うね」って言われますからね。まあ、本当はそこまで嫌なやつではないんですけどね。友達だとは思っていませんが。

──とりあえず独特なタイプであるのは間違いないんで、それがいい方向に出るかどうかですよね。

マネージャー 周りの大人の人もみんな楽しんでるだけだからね。おまえが馬鹿だから。もっと人間を疑えや。「ナタリーさんは俺のこと好きだからな、俺のこと期待してくれてるからな」って言ってるけどさ(笑)。

──まあ、確実に面白がってるだけでしょうね(笑)。

AOMORI ROCK FESTIVAL '12~夏の魔物~

2012年9月22日(土)
青森県 東津軽郡平内町夜越山スキー場
OPEN 6:30 / START 7:00

AOMORI ROCK FESTIVAL '12~夏の魔物~ ポスター

<出演者>
内田裕也&トルーマン・カポーティR&R BAND / 神聖かまってちゃん / スチャダラパー / 在日ファンク / DJ BAKU / SIMI LAB / 曽我部恵一BAND / フラワーカンパニーズ / Hermann H.&The Pacemakers / ZONE / ブリーフ&トランクス / 藍坊主 / アーバンギャルド / 0.8秒と衝撃。 / avengers in sci-fi / OGRE YOU ASSHOLE / bloodthirsty butchers / KING BROTHERS / SCOOBIE DO / キノコホテル / ザ50回転ズ / LAUGHIN' NOSE / ニューロティカ / 人間椅子 / バンドTOMOVSKY / 武藤昭平 with ウエノコウジ / THE NEATBEATS / 騒音寺 / 夜のストレンジャーズ / 三上寛 / でんぱ組.inc / BiS / しず風&絆~KIZUNA~ / アリス十番 / アップアップガールズ(仮)/ ULTRA-PRISM / 石鹸屋 / 流田Project / SEBASTIAN X / パスピエ / タルトタタン / 東京カランコロン / 嘘つきバービー / 踊ってばかりの国 / 撃鉄 / 住所不定無職 / SAKANAMON / KETTLES / 忘れらんねえよ / THE★米騒動 / hotspring / ボトルズハウス / ソンソン弁当箱 / 本棚のモヨコ / TEENAGER SEX LESS / ヒロシ / 吉田豪×杉作J太郎 / あやまんJAPAN / DJ ダイノジ / DJ 掟ポルシェ / DJ 桃知みなみ / DJ 鹿野淳 / DJ サミー前田Tribute to Fuckin'Great YUYA! / DJ FREE THROW(弦先誠人、神啓文、タイラダイスケ) / DJ TOKYO BOOTLEG / MC.アントーニオ本多 / DDTプロレスリング / ほもいろクローバーZ / SILLYTHING+鈴木秋則(ex.センチメンタル・バス)+ハジメタル(ex.ミドリ)+prkr(PF AUDIO)+ケンドー・ツ・シマ(dry as dust)+大内ライダー(太平洋不知火楽団)/ PANTA(頭脳警察)with 菊池琢己 / まつきあゆむ / うみのて / 大森靖子 / THE××ズ / 加藤鷹トークショー / うしじまいい肉撮影会 / バンドマンのすべらない話 / 大内ライダー(太平洋不知火楽団)presents 特撮座談会 / うさぎのなみ平 / DJ 歴ドル 美甘子 / DJ 庄司信也 / HERE COMES A NEW CHALLENGER SUPER NATSUNO MAMONO FIGHTER ZERO

[DDT提供t試合]
飯伏幸太+KUDO+大石真翔(ex.ほもいろクローバーZ)VS. 高木三四郎+アントーニオ本多+中澤マイケル スペシャルゲスト:ヨシヒコ