ナタリー PowerPush - AOMORI ROCK FESTIVAL '12~夏の魔物~
野望実現! 成田大致×吉田豪
The Mirraz事件の失敗
──プロレスの影響はホント大きいみたいですね。ただ、プロレスの影響ってちゃんと説明しなきゃ伝わらない部分があるじゃないですか。例えばLAUGHIN'NOSEと対バンするイベントのタイトルが「夢☆勝ちます」なのもそうですけど、「昔、新日本プロレスで、ベテランと若手が闘う世代抗争をテーマにした興行がありまして……」って言わなきゃわからないわけで。
大致 そうなんです。説明すっ飛ばしてることが多すぎるんですよね……。
──相当すっ飛ばしてますよ! 「『試練の7番勝負』っていうイベント名の元ネタはジャンボ鶴田で、それがももクロに受け継がれてまして」みたいな説明がなくて。
大致 まあ、今回新しいバンドを立ち上げたのも、そのこともちょっと関係していて。前までやってたバンドは、ちょっと半端だったんで。
──普通にロックンロールバンドではあったけども、そこの枠にはまりすぎた、みたいなことを言ってましたよね。
大致 はい。なので、要はバンドでプロレスがやりたいんですよ(あっさりと)。
──それがまず説明不足なんですよ(笑)。「バンドでプロレスやりたいっていうのは具体的にどういうことなんですか?」って、多分みんな訊くと思うんですけど。
大致 そうですよね。
──プロレス好き同士だったら、まだなんとなくわかると思うんですよ。ボクが所属していた「紙のプロレス」っていう雑誌も、「世間とプロレスする雑誌」ってキャッチコピーを使ってましたけど、まずそれが普通はわからないわけじゃないですか。プロレスを単なる八百長と捉えるのか、ガチ的なものが混ざるギリギリのものと捉えるのか、それぞれのプロレスの概念が違うからちゃんと伝わらないんですよね。
大致 はい。ただ、そういう細かい括りはいつもぶち破って適当になっちゃうところがあるんですよね(笑)。
──プロレスしたいっていうのはなんとなくわかるんですよ。以前、2DAYSになった「夏の魔物」(2010年)について、ナタリーのインタビューで「1日目はたいしたことないバンドが淘汰される場」「ヘボいバンドは化けの皮を剥がされる」って発言してThe Mirrazと揉めてステージ上が乱闘騒ぎになりましたけど、あれも本人としてはプロレスのつもりだったのがそうじゃなくなったのかな、とか思ってて。
大致 完全にそうですね。あれは俺が仕掛けたプロレスだったのに、The Mirrazのプロレスに自分も乗ってしまって。しかも改めてお客さん視点から見たらどう考えてもあの場で淘汰されるべきバンドは自分たちだったのに……。ただ、あのとき俺的にはあの空間はゼロワンの旗揚げ戦みたいなもので……。
──ああ、なるほど。……って、それもわかりづらいから説明しますよ(笑)。2001年3月の旗揚げ戦で、ゼロワンとノアと新日本プロレスと小川直也と藤田和之と、オールスターキャストのカオスな大乱闘が試合後に行われて、すごい盛り上がったんですよね。
大致 はい。あれみたいなことが起きて、あそこで俺がやるべきだったのは、武藤敬司の「俺、膝が痛えから行けねえわ」みたいな。
──それも説明すると、ゲスト解説の武藤がリング上に呼ばれたんだけど、その他大勢になりたくないからあえて行かなかったんですよね。
大致 はい。すっとぼけるっていうところだったと思うんですけど。単に「今日はよろしくお願いします」って最初に挨拶に行ったとき、The Mirrazがそこで態度悪くてムカついちゃって、まあ、自分であんな仕掛け方、それも淘汰されるべきバンドだったTHE WAYBARKがあんな偉そうなこと言ってるんですもん。そりゃ態度も悪くなってしまいますよね。それで自分が本気になっちゃったのが失敗だったなって今は思ってます。
テーマはパッケージングプロレス
──プロレスから受けた影響で一番大きいものってなんですか?
大致 やっぱりエンタテインメントとはなんぞやっていうこととか、考えることとか、想像力の部分ですね。それはプロレスがなかったら自分に欠けてた部分だなと思うし。田舎だったんで、妄想を過剰にするじゃないですか。例えばインターネットが流行り出したときも、ずっと「プロレスカフェ」を見てて。
──ああ、パソコン通信時代ですね。
大致 はい。それで妄想しまくって、「週プロ」読んで。初めてサムライTVが部屋に付いたときは学校に行く間もビデオをセットして、こことここは毎日録ってって感じで、プロレスビデオだらけでした。
──確かにプロレスは想像するから楽しい部分があるし、想像させるのがうまい人がスターになるというか。猪木さんとか完全にそうですよね。常に説明不足な人で。
大致 そうですね。猪木さんとか武藤さんの影響はすごい強いなと思います。
──「cross wizard」というアルバムタイトルも武藤さんが元ネタですからね。武藤さんのどこがいいんですか?
大致 武藤敬司で全て片付いちゃうところが最高ですよね。なんだかんだで猪木さんの弟子だっていうところも、すげえシンパシー感じるっていうか。
──天才的な適当さですよね。あの人じゃないと成立しないレベルで。
大致 そうですそうです! それがホント武藤敬司の魅力っていうか。
──nWoブームのときにボクも「Number」で取材したんですけど、「武藤さん、念のため訊きますけどnWoってなんの略かわかってます?」って言ったら、「えー、なんだっけ? ……おい、蝶野蝶野! nWoってなんだっけ?」ですからね(笑)。
大致 超面白いですね(笑)。
──ペドロ・オタービオとの異種格闘技戦のときも、スポーツ新聞の裏1面で武藤さんが山で特訓してる写真が出てたんですけど、履いてるのがサンダルだったんですよね。なんで柔術家との大事な試合の前に山をサンダルで走ってんだっていう(笑)。
大致 あの適当さが好きなんですよね。武藤敬司が提唱してるパッケージングプロレスっていうのが自分の一番やりたいことなんじゃねえのかなっていうのは最近思ってます。
──1つの興行の中で、いろんなジャンルが楽しめるってことですよね。一番シンパシーを感じてるのはDDTなのかなっていう気がしてたんですけど。
大致 DDTであり武藤さんであり、プロレス頭で考えて、お客さんがどう楽しむのかっていう興行のパッケージングですよね。DDTの高木三四郎、マッスル坂井、武藤敬司って似て非なるものですけど、そこは共通ですよね。それをバンドでもやりたいし、フェスでもやりたいんです。
──それを理解してもらうには、プロレスがわからないといけないわけですよね。そういえば、フェスを始めてミスター高橋本ぐらいのショックを受けたっていう発言が気になってたんですよ。裏側を見て、暴露本を読んだのと同じぐらいのショックがあったっていう。
大致 これは完全に出せない話なんですけど……(以下略)。興ざめしちゃいましたね、19、20歳の頃。
──10代で、ピュアに音楽好きだったときにミュージシャンとお金のやり取りをしたら、いろんなものは見えちゃいますよね。
大致 そうですね。まあ、今ではしょうがないと思ってるんですけど。
メンバー全員脱退
──上京したのはいつなんですか?
大致 去年の9月です。
──部屋を借りるにも、秋葉原という後楽園ホールや両国や武道館のプロレス観戦に行きやすい場所を選んだわけですよね。
大致 そうですね。ここ何カ月かライブに行くよりもプロレスを観に行くほうが圧倒的に多くなっちゃって、なんなんだろうって自分で思いながらも行っちゃうんですけど。DDTの後楽園は、ほぼ毎月行ってるし。
──音楽とは満足度が違うんですか?
大致 そうですね。昔、プロレスや格闘技のビッグマッチとか中学校のときにスカパーで観たり写真で見て想像してたときの満足度とあんまり変わらないというか、ここ最近観に行ってるプロレスはそのときに感じたかったものが全部あって。楽しくて仕方ないというか。早く次の後楽園大会に行きたいなとか(笑)。
──ただのヲタですね(笑)。
大致 はい(笑)。
──ボクもDDTの武道館には誘われてたんですけど、仕事で行けなくて。
大致 DDTの武道館もいろいろ思うところはありましたけど、男色ディーノが入場してきたときにマッスルの仲間たちと、ドラマティック三銃士の坂井さんと猪熊(裕介)さんが久しぶりに来て、ディーノさんを送り出すところですげえ感動して。同期の3人が手を上げたりとか、メチャメチャ感動したんですよ! 俺はこれをバンドでやりたいんだなってそのとき思って。そう思ってたら、昨日ギターが抜けて……。
──ダハハハハ! 昨日抜けちゃったんですか!
大致 前のバンドから全員引き続きSILLYTHINGになってたんですけど、結果1人もいなくなったんです。
──それは音楽性も含めて、あまりの変化についていけなくなったってことですか?
大致 それもありますし……。
──人間関係的なこともあるだろうし。
大致 まあ、全部ですね。かつ、ディーノさんのあの入場を観たときに、俺は例えば何かを成し遂げるときに、趣味が違うしみんなついて来ることはできねーだろうなって。
マネージャー 昨日話したばっかりじゃん、そういうこと言わなくていいって!
大致 あっ、ごめんなさい! 今は一緒に作り上げて切磋琢磨していける、刺激し合える人とやりたくてメンバー探してて、すごい楽しいですね。
──みんないなくなっちゃったけど(笑)。まあ、変化が急激すぎましたよね。アイドルポップやアニソン的な要素も取り込んだカオスなバンドに突然変わったから。
大致 急激かもしれないけど、自分的にはもっともっと最初から予定してたことに近づいてるというか。
AOMORI ROCK FESTIVAL '12~夏の魔物~
2012年9月22日(土)
青森県 東津軽郡平内町夜越山スキー場
OPEN 6:30 / START 7:00
<出演者>
内田裕也&トルーマン・カポーティR&R BAND / 神聖かまってちゃん / スチャダラパー / 在日ファンク / DJ BAKU / SIMI LAB / 曽我部恵一BAND / フラワーカンパニーズ / Hermann H.&The Pacemakers / ZONE / ブリーフ&トランクス / 藍坊主 / アーバンギャルド / 0.8秒と衝撃。 / avengers in sci-fi / OGRE YOU ASSHOLE / bloodthirsty butchers / KING BROTHERS / SCOOBIE DO / キノコホテル / ザ50回転ズ / LAUGHIN' NOSE / ニューロティカ / 人間椅子 / バンドTOMOVSKY / 武藤昭平 with ウエノコウジ / THE NEATBEATS / 騒音寺 / 夜のストレンジャーズ / 三上寛 / でんぱ組.inc / BiS / しず風&絆~KIZUNA~ / アリス十番 / アップアップガールズ(仮)/ ULTRA-PRISM / 石鹸屋 / 流田Project / SEBASTIAN X / パスピエ / タルトタタン / 東京カランコロン / 嘘つきバービー / 踊ってばかりの国 / 撃鉄 / 住所不定無職 / SAKANAMON / KETTLES / 忘れらんねえよ / THE★米騒動 / hotspring / ボトルズハウス / ソンソン弁当箱 / 本棚のモヨコ / TEENAGER SEX LESS / ヒロシ / 吉田豪×杉作J太郎 / あやまんJAPAN / DJ ダイノジ / DJ 掟ポルシェ / DJ 桃知みなみ / DJ 鹿野淳 / DJ サミー前田Tribute to Fuckin'Great YUYA! / DJ FREE THROW(弦先誠人、神啓文、タイラダイスケ) / DJ TOKYO BOOTLEG / MC.アントーニオ本多 / DDTプロレスリング / ほもいろクローバーZ / SILLYTHING+鈴木秋則(ex.センチメンタル・バス)+ハジメタル(ex.ミドリ)+prkr(PF AUDIO)+ケンドー・ツ・シマ(dry as dust)+大内ライダー(太平洋不知火楽団)/ PANTA(頭脳警察)with 菊池琢己 / まつきあゆむ / うみのて / 大森靖子 / THE××ズ / 加藤鷹トークショー / うしじまいい肉撮影会 / バンドマンのすべらない話 / 大内ライダー(太平洋不知火楽団)presents 特撮座談会 / うさぎのなみ平 / DJ 歴ドル 美甘子 / DJ 庄司信也 / HERE COMES A NEW CHALLENGER SUPER NATSUNO MAMONO FIGHTER ZERO
[DDT提供t試合]
飯伏幸太+KUDO+大石真翔(ex.ほもいろクローバーZ)VS. 高木三四郎+アントーニオ本多+中澤マイケル
スペシャルゲスト:ヨシヒコ