チッチの正論にグサッと
──1月に音楽ナタリーで掲載した「WACK座談会2020」(参照:WACK座談会2020)には、豆柴の大群を代表してナオさんに来ていただきましたけど、セントチヒロ・チッチ(BiSH)さんが「豆柴は今がピークだろうし、これから大変だろうな」と現実的な意見を言っていました。
ナオ まだメンタルが弱々だったので、実は心にグサッときてましたよ(笑)。「確かにそうだな……」なんて思いながら。
ハナエ 私たちも記事を見てびっくりしましたけど、これからがんばらなきゃなと強く思った瞬間でもありましたね。
ミユキ 1月中旬かな。メンバーでミーティングをしたことがあります。
ハナエ あったね。あのときは話し合いをしてたら終電を逃しちゃって、みんなで朝まで一緒にいました。
──どんな話し合いを?
ナオ 活動の方向性を決めていこうと。結成されてから活動の方向性がわからないままでしたし、頭が追い付いていかなくて、メンバーそれぞれ見ている方向がバラバラだったんです。だから何をどうがんばったらいいのか、どうモチベーションを保てばいいのかもわからなくて、結成から半月で「どうしたらいいんだろう」と煮詰まっていたので、話し合いをしました。5人で活動していくわけだから、どういう目標に向かっていくのか、どういう考えをもって活動していこうかと意見を出し合って。
ミユキ 「メンバー全員が豆柴の大群のことを第一に考えて活動する」ということが一番大切なことだと確認しました。あとはメンバーそれぞれのことをちゃんと見てあげる、気遣う気持ちも大切にしようねって話もしました。もちろん「一発屋にはならずに絶対に売れよう」っていう目標もそこで挙がったし、がんばる意思をお互いに確認し合いました。
──一発屋にならないためにはどうしたらいいと考えますか?
ミユキ 常に成長していくしかない。
ナオ そう。その成長していく姿を応援してくださる方々に常に見せ続けていかないと飽きられてしまうし、応援したいと思われなくなってしまうので。応援してもらえるように、実力をつけるのはもちろん、気持ちの面でも変わっていく姿、成長していく姿を見せていこうって。
あとから加入したカエデの努力
──成長の種類はいろいろありますけど、WACKにおいては歌やダンスのスキルだけではなく、気持ち的な部分がかなり大事な印象です。
ナオ どっちも大事だとは思います。最初は知名度が先行してしまって、ライブパフォーマンスを観た人から「あんまりだな」と言われることが多かったんです。そのときは歌やダンスの実力の面で成長しなきゃというのは大きな課題としてありましたけど、5人の気持ちがバラバラだったので全員が同じ方向を向いて成長を重ねていかないとなって。それ以外のすべてのこともがんばらなきゃいけないというのは思いました。
ミユキ あとはみんな、実感がなかったというか。「豆柴の大群でアイドルやるぞ! ……でもどうやって?」という感覚だったので、話し合ったことで気持ちが固まった感じはあります。
ナオ 自分たちをしっかり見つめる機会があまりに少なかったんですよね、最初は。12月25日にカエデが加入して、次の日にはすぐレコーディングに参加することになったし、1月3日には「WACKなりの甲子園」で5人でのお披露目ライブもあって、練習の流れもわからなければ、どうやってライブに向かっていけばいいのかもわからないという状況で……ドタバタでのスタートだったから、最初は正直ボロボロだったと思います。
──ライブを観て感じたことなんですが、カエデさんは踊りに苦手意識がある?
カエデ 運動神経がめちゃくちゃ悪くて……ナオちゃんにひたすら教えてもらってます。
ハナエ 最初に比べたらめちゃくちゃうまくなったよね。
──「WACKなりの甲子園」のお披露目ライブと8カ月後の「WACK FUCKIN'SORRY PARTY」でのパフォーマンスを比べても、ひたむきにがんばってきたんだろうなと思いました。
ハナエ カエデはがんばってますよ! 加入から1週間で年末の「CDTV」が最初のパフォーマンス披露でしたし。
ナオ あの日を超えるプレッシャーって今のところないもんね(笑)。
アイカ みんな膝ガックガクでしたから。
──自分たちの置かれている状況も理解できないままで。
カエデ 一度4人で完成したグループにあとから1人で入ったので、4人のほうがよかったって言われることもあって……(涙を流す)。
アイカ あー泣かないでー!
カエデ (泣きながら)やっぱりそう言われることがすごく……悔しいので、がんばりたいなって。本当にみんな優しくてダンスとか歌とかめちゃくちゃ教えてくれるし。だからこの5人でもっと上を目指したいです。
(ナオも泣き始める)
アイカ なんでナオも泣いてんのー!! どういうこと!
──カエデさんのがんばる姿に胸を打たれるというファンも多いみたいで。
ハナエ 誰よりもがんばってますよ。
カエデ 見てくれている人がいることがうれしいから、本当にファンの人に恩返ししたいなって思います。
──ごめんなさい、変なことを聞いてしまい……。
カエデ すぐ泣いちゃうんですー!
アイカ ナオももらい泣きしやすいしね(笑)。
ナオ なんでなのかわかんない……。うえーん。
──歌にダンスにとがんばって、気持ちの面でもこれからもっと強くなっていくという発展段階ですね。
ミユキ 成長を見たいと思ってもらえたらそれはそれでいいことだし、見守りたいと思ってくれる人がいることも私たちの大きな武器だと思います。カエデのファンには特にそういう方が多いので。
カエデ まだまだですけど、成長過程を見せていきたいです。練習もうまくできないことがあったりで本当に必死です。でも少しずつできることが増えていくことがうれしくて。テレビで知ってくださった方々はオーディションの候補生だった頃の、普通の女の子だったところから応援してくれているので、どんどん立派なアイドルに成長する姿を見せていくのも大事な目標かなと思います。
ハナエ それで少しでも気になった人がいたら、ぜひたくさん曲を聴いてほしいです!
「香港映画みたいに歌って」
──8月5日の放送でメジャーデビューを知ったということは、レコーディング段階では「サマバリ」がメジャー1発目の曲になるとは知らなかったわけですよね?
カエデ はい。「次の新曲だよ」とだけ聞かされていました。
ナオ 「サマバリ」のミュージックビデオ撮影にはクロちゃんもいたんですけど、「あれ、なんかちょっといつもよりお金かかってるっぽい?」とは思いました(笑)。で、メジャーデビュー発表タイミングで完成したMVを初めて観て、リップシンクのシーンは背景がキラキラしているし、セットも豪華だし、CGもたくさん使っていて……個人的な感想ですけど“エイベックス感”が出てるなと思いました。
アイカ 結成してから1年も経たずにメジャーデビューなんてなかなかないことですよね。なかなか実感できなかったし、「サマバリ」のMV撮影のときにクロちゃんが出てきますよね。あれ、ナオと同じこと言ってる(笑)。えーと……。
──ではレコーディング時のエピソードは?
ミユキ (小声でアイカに向かって)踊りながら……。
アイカ あっ! 私とカエデはめっちゃ踊りながら歌いました! サウンドプロデューサーの松隈(ケンタ / SCRAMBLES)さんに「踊りながら歌ってみて」と言われたので。すっごい楽しかったですよ!
ハナエ 松隈さんから今回のレコーディングでは「香港映画っぽく歌って」と言われました(笑)。「ソフトクリームのせてやるんだ」の部分が「ソッフットックリンッ」みたいな妙に弾んだ感じになってるのはそのディレクションがあったからです。
ナオ けっこう難しかったです……。「“香港映画みたいな歌”とは?」ってところから(笑)。
“ぶちこわしてく ムァムェシヴァー”
──「香港映画みたいに」「踊りながら楽しく」以外には?
ミユキ 私はほかに「ふざけて歌って」という指示もありました。「りスタート」のときは口の両端に指を引っ掛けたり、歯を食いしばったり、笑いながら歌ったり、力強くとか普通にも歌ったりして全部で5パターンくらい。あと、1stアルバム「スタート」のレコーディングから「ミユキは吉川晃司さんになれ!」というアドバイスを受けてまして。
──松隈さんらしいディレクションですね。「吉川晃司さんみたいに歌って」と伝えても、ミユキさんはミユキさんなりの解釈で歌うから、結果的にモノマネではなくてオリジナリティのある歌い方になっているという。
ミユキ そうなんですよね。でも「吉川さんみたいに歌って」と言われた日からずっとCOMPLEXを聴いていて。吉川晃司さんを降臨させてるんです!
ナオ 吉川さんのファンがミユキの歌を聴いても「吉川さんのマネしてる」とは気付かないと思うんですけど(笑)、吉川さんを経由したミユキの声は特徴的で。ミユキにしかない新しい表現をそのアドバイスで引き出したのはすごいなって思います。
──ミユキさんの歌い回しって独特ですよね。特に「サマバリ」ではサビの締めくくりの「豆柴」というフレーズ。“ば”が“ヴァ”みたいにクセが強くて。
ミユキ 吉川さんが降臨すると“ば”行が“ヴァヴィヴヴェヴォ”になるんですよね(笑)。あんまりその発音を意識してるわけじゃないんですけど、自然と。
ハナエ 松隈さんはミユキの“ヴァ”行のねちっこさがお気に入りで、「しつこいねえ!」って笑ってます(笑)。
ナオ 「ぶちこわしてく ムァムェシヴァ(豆柴)ー!」って歌うたび笑ってたね(笑)。
──ミユキさん以外に、歌い方の面で独自の方向性に向かっているメンバーは?
ミユキ (ナオを指差して)エッチ!
ハナエ そうそう。ナオはセクシー担当なんですよ。
ナオ セクシーさを出すためなのか、松隈さんから「自分が巨乳だと思って歌ってみろ」と(笑)。私は巨乳じゃないんですけど、巨乳じゃない人が巨乳だと思って歌ったら、違う声になると言われたんですよね。
ミユキ 「サマバリ」だと2番の「まちぶせするドキドキスナイパー」の「パー」を「あーん」って歌うんですけど、エッチですよ。
ナオ だいぶ恥ずかしかったんですけど、殻を破れた感じがします。ほかのメンバーだとハナエは特にこれ担当みたいなのはなくて、かわいいときはかわいくて声優さんみたいな声だし、カッコいいときはパキパキした声になって、歌の幅が広いです。
ハナエ 私、レコーディングだと最初に歌うことが多いから、きっと松隈さんはまず私の歌を録って、全体のイメージの参考にしてる感じがしますね。なので「サマバリ」では自分なりに歌詞の口調に合わせて、強めの歌い方をしました。そしたらさっき言ったように「香港映画みたいに」というディレクションがあったので、それも意識して何回か歌いました。クロちゃんが関わってる曲の中では今回、力強いほうですね。
ミユキ 今まではかわいい感じだったもんね。
ナオ 「ろけっとすたーと」と聴き比べてほしいです。ハナエの声が今回、別人のようにすごくカッコいいので。
ハナエ 逆に「ろけっとすたーと」はめちゃくちゃ甘ったるいです(笑)。
ナオ あとアイカは松隈さんから“2番Aメロの女王”と呼ばれてるんです。だいたい2Aがアイカパートになることが多いです。
アイカ らしいです!
カエデ 私は昔、歌にすごく苦手意識があったんですけど、松隈さんはすごく褒めてくれて。今は自信を持って歌えるようになってきたかな。だから楽しげな様子を感じてほしいです。あと、クロちゃんの歌詞はやっぱり面白いです。「サマバリ」は冒頭から「工事現場のカラーコーンをひっくりかえして ソフトクリームのせてやるんだ」ですから(笑)。
ミユキ クロちゃんは豆柴の大群が天使でWACKが悪魔だと言ってるんですけど、「サマバリ」のテーマは“堕天使”らしいです(笑)。今までになかった「テメェ」「誰も求めてねー」みたいな力強い言い回しもあって、かわいいだけじゃない歌詞なんです。クロちゃんってかわいいアイドルが好きなんですけど、今回はカッコいい要素も加わった歌になってます。
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服を破かれるのはエッチだね