STUTS & 松たか子 with 3exes|多様性を前提とする物語とも共鳴したヒップホップ愛あふれる「大豆田とわ子と三人の元夫」主題歌「Presence」

STUTS & 松たか子 with 3exesのアルバム「Presence」が6月23日にリリースされた。

このアルバムは、カンテレ・フジテレビ系連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」のエンディングでオンエアされた主題歌「Presence」の全バージョンに加えて、ゲストのラッパー5人全員が参加した「Presence Remix」や、メロディや歌詞をSTUTSと共作したbutajiが歌うバージョン「Presence Reprise」を収めた作品。楽曲をつなぐスキットとして、主題歌のトラックの候補となったインスト曲も収録されている。またアルバムのアートワークは、STUTSの1stアルバム「Pushin'」や2ndアルバム「Eutopia」のジャケットも手がけた我喜屋位瑳務が制作した。

本作の発売を記念して、音楽ナタリーではドラマの概要や参加ラッパーについて紹介しつつ、主題歌のトラック制作およびプロデュースを担当したSTUTSにインタビュー。坂元裕二最新作の主題歌を手がけることになったきっかけ、ラッパーの人選、坂東祐大が手がけた劇伴のサンプリング、松たか子や元夫役3人(=3exes)へのディレクションなど、楽曲制作について詳しく語ってもらった。なおアルバムの発売日である6月23日は、STUTSの32歳の誕生日だ。

取材・文(P2〜3) / 小野田雄 構成 / 三浦良純

ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」

「大豆田とわ子と三人の元夫」キービジュアル ©2021カンテレ

「カルテット」「最高の離婚」「Mother」など数々の連続ドラマを手がけ、映画「花束みたいな恋をした」を大ヒットさせた脚本家・坂元裕二の最新作となるロマンティックコメディ。松たか子演じるバツ3の主人公・大豆田とわ子と、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平演じる3人の元夫を中心とした豪華なキャスト陣による軽妙な会話劇、胸に刺さる言葉の数々が毎週大きな話題を呼んだ。

「カルテット」でも坂元とタッグを組んだ佐野亜裕美がプロデュースを担当した本作には、ファッション、料理など、さまざまなこだわりや仕掛けが詰め込まれており、その中でも音楽は特に力点が置かれた要素と言える。物語の印象的な場面を彩る劇伴や挿入歌を制作したのは、クラシック / 現代音楽ジャンルの創作活動に軸足を置きながら、宇多田ヒカル、米津玄師といったアーティストの編曲も手がける作曲家・坂東祐大。レコーディングには、グラミー賞ノミネート歌手であるグレッチェン・パーラトやBIGYUKI、LEO今井、マイカ・ルブテ、Cwondo(No Buses)、Banksia Trio(須川崇志[B] / 林正樹[Piano] / 石若駿[Dr])ら多数のアーティストが参加している。

またレストランのシェフ役を演じた長岡亮介(ペトロールズ)のレギュラー出演(参照:長岡亮介、心配性のシェフ役で坂元裕二脚本ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」出演)や、とわ子に迫るダンディ社長を演じた谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)のゲスト出演(参照:スカパラ谷中敦「大豆田とわ子」でバツ3のダンディ社長役「4度目は、あなたがいいな」ととわ子に迫る)も音楽ファンを喜ばせた。

そしてドラマの音楽的要素の中でもっとも大きな反響を呼んだのが、毎週変化する主題歌だ。STUTSがプロデュースし、劇伴の一部もサンプリングされた主題歌「Presence」には、メインボーカルを務める主演の松、コーラスを担当する元夫役の3人(3exes)に加えて、エピソードごとに異なるラッパーが参加し、ドラマ本編およびエンディング映像にも出演。主題歌の情報は事前にまったく告知されておらず、STUTSが制作したトラックで松と実力派ラッパーがコラボする異例の楽曲が第1話エンディングで流れるとSNSは驚きの声であふれかえる。さらに初回とは異なるラッパーが登場した第2話放送後、次にどのラッパーが登場するのかという予想でヒップホップファンは大いに盛り上がった。

プロデューサーの佐野によれば、脚本の坂元と「主題歌は松さんでラップはどうだろう?」と盛り上がり、ヒップホップに造詣の深い藤井健太郎(「水曜日のダウンタウン」演出・プロデューサー)に相談したところから、このプロジェクトはスタートしたとのこと。“毎週変わる”というアイデアの源泉には、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のエンディングがあったという。

5人のラッパー

KID FRESINO

左からKID FRESINO、松たか子、STUTS。(Photo by seiji shibuya)

JJJ、FebbとともにヒップホップユニットFla$hBackSのメンバーとして活動を開始し、2013年にソロデビューしたラッパー / DJ / トラックメイカー。アメリカ・ニューヨークを拠点としていた2016年にバンド編成での楽曲制作をスタートし、2018年にリリースしたアルバム「ài qíng」が大きな話題を集める。今年1月にリリースした最新アルバム「20,Stop it.」の収録曲では、カネコアヤノや長谷川白紙ともコラボするなど、ヒップホップシーンの枠を超えて活躍している。

ドラマでは記念すべき第1話と、第1章完結編となる第6話に出演し、主題歌で松のパートのディレクションを担当。第1話ではボウリング場のシーンで弾けるような笑顔を見せ、第6話ではとわ子と一緒にラジオ体操をしていた。

コメント

松様はジーンズのポケットに両の親指を軽くかけ、レコーディングなさっていました。

以来、私も同じようにしてみるのですが、どうも格好がつきません。鏡に映る自分の姿に笑ってしまうほど似合っていないのです。

さりとて続けてみようと思います。

これが板についた時、松様が私みたいなもんにも等しく優しいお言葉をかけてくださる理由が分かる気がするのです。

BIM

左からSTUTS、岡田将生、BIM。(Photo by seiji shibuya)

ヒップホップレーベルSUMMITに所属するラッパー。THE OTOGIBANASHI'S、CreativeDrugStoreの中心人物として活動し、2017年に本格的なソロ活動をスタートさせた。2019年にSTUTS、RYO-Zとのコラボ曲「マジックアワー」を発表。2020年8月に発表した2ndアルバム「Boston Bag」にはSTUTSプロデュース曲が3曲収録されており、このアルバムは後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が立ち上げた音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award- 2021」で大賞に選ばれた。

ドラマでは第2話と第7話にカメオ出演し、主題歌では3番目の元夫・中村慎森を演じる岡田とコラボ。第7話のエンディングにはCreativeDrugStoreの面々とともに登場した。

コメント

こんばんは、すき焼き。

BIMです。

今回、慎森(岡田将生)さんのラップパートも担当させて頂くという事で自分以外の人の感情を歌詞にする事はあまり経験してこなかったので、不思議な感覚でした。

でも、台本を読み進めて行くと慎森さんに「わかる〜!」って所がどんどん出てきて最終自分のことのようにラップ出来ました。笑

最初は「お手柔らかにお願いします。」って仰ってた岡田さんですが、ブースでラップをした瞬間に男気満載のフローで最高でした。

流石のSTUTS君&butajiさん、そして聴いているだけでカッコいい大人になれたかのような歌声の松さんと一緒に作らせていただけて、親戚に自慢できます!

皆さんありがとうございます!

NENE

左からNENE、角田晃広(東京03)、STUTS。(Photo by seiji shibuya)

ヒップホップユニット・ゆるふわギャングのメンバーとして、Ryugo Ishidaとともに活動するラッパー。2017年12月に1stソロアルバム「NENE」をリリースし、2020年7月には日本の伝説的な妖怪をテーマにした作品「夢太郎」を発表した。またThe Chemical Brothersが2019年にリリースした最新アルバム「No Geography」の冒頭を飾る楽曲「Eve Of Destruction」に参加。The Chemical Brothersのアルバムに日本人アーティストが起用されるのはこれが初であり、このアルバムは2019年グラミー賞ベストエレクトロニックアルバムを受賞した。

ドラマ主題歌では2番目の元夫・佐藤鹿太郎を演じる角田晃広(東京03)とコラボし、第3話の冒頭に鹿太郎が撮影するモデル役で出演。第8話ではパートナーのRyugo IshidaやSTUTSとともにファミレスのシーンに登場した。

コメント

NENEです。
今回はこのステキなドラマに関わらせていただいて光栄です。
TVドラマの為にリリックを書くということは自分にとって新しい挑戦でもあり、とても刺激的で貴重な経験になりました。
人に歌詞を提供すること自体、初めてだったのですが、鹿太郎のラップパートも担当するということで、しかも男の気持ちを組み込む!!、うーむと悩みましたが、鹿太郎のキャラクターを理解するうちにスラスラかけました。
イェーイ!!ドラマデビュー!!!
浮かれさせてください笑笑
今回、私を招いてくれたSTUTS君、大豆田とわ子と3人の元夫スタッフの方々、ありがとうございました!!!
松たか子さんと角田さんとフューチャリングなんて夢にも思っていなかったので、この曲のリリースが心から嬉しいです。

Daichi Yamamoto

左からSTUTS、松田龍平、Daichi Yamamoto。(Photo by seiji shibuya)

日本人の父とジャマイカ人の母を持つ京都生まれのMC。2012年からロンドン芸術大学でインタラクティブアートを学び、2017年10月の帰国後、Jazzy Sportからデビューした。2018年には、STUTSの2ndアルバム「Eutopia」にゲスト参加。2019年9月にリリースした1stアルバム「Andless」は、アジカン後藤主宰の「Apple Vinegar Music Award 2020」で特別賞を受賞した。八村塁選手出演の大正製薬「リポビタン D」テレビCMや、Netflixキャンペーンへの参加でも話題を集め、2021年6月に2ndアルバム「WHITECUBE」をリリースした。

ドラマでは第4話と第9話のレストランのシーンに出演し、主題歌では最初の元夫・田中八作を演じる松田龍平のラップのディレクションを担当。5lackの楽曲「Hot Cake」をオマージュしたリリックも話題となった。

コメント

自分の書いたリリックを誰かにラップして貰うのはいつかやってみたかったので、このような機会をいただけてとても嬉しかったです。
ただ、曲を作っている最中は気合が入りすぎて空回りの連続で、なんとか書き切れてホッとしています。
松さんの歌うサビもSTUTSさんのディレクションが流石で、今回ご一緒した松田さんもサクッと曲の雰囲気を掴んで、良い感じにラップしてもらえたので良かったです。
いろいろ勉強させていただきました。何よりTVに出演させてもらった事で、家族や友人が盛り上がってくれたことが嬉しかったです。

T-Pablow

左からSTUTS、松たか子、 T-Pablow(BAD HOP)。(Photo by seiji shibuya)

双子の弟であるYZERRとともにヒップホップクルー・BAD HOPを率いる神奈川・川崎出身のラッパー。MCバトル大会「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」で名を馳せ、テレビ朝日系「フリースタイルダンジョン」では初代モンスターを務めた。BAD HOPとして、2018年11月に東京・日本武道館でワンマンライブ「Breath of South」を開催し、約8000人の動員を記録。2020年3月に神奈川・横浜アリーナで開催予定だったワンマンライブはコロナ禍を受けて中止を余儀なくされるが、無観客でのライブを敢行した。2021年9月1日に横浜アリーナへの3度目の挑戦となるワンマンライブ「BAD HOP THE REVENGE TOUR FINAL IN YOKOHAMA ARENA」を開催する。

ドラマには第5話と最終話の第10話に登場。主題歌では松のラップのディレクションを担当した。STUTSとの共演は今回が初で、藤井健太郎の提案により参加が決まった。

コメント

T-Pablowです。
初めてドラマの主題歌を制作させていただいたのですが、普段活動しているBAD HOPや自分自身のソロで作っている音楽とはまた違うコンセプトがある楽曲に携わることができ、良い刺激を頂きました。
松さんと一緒にレコーディングや撮影をさせて頂き、松さんのラップへの対応力や周りの方達への配慮などといった人間力を間近で見れて学んだ事も多く、凄く勉強になりました。
また一つアーティストとして成長できた現場でした。
ありがとうございました。

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