槇原敬之「Design & Reason」 PR

槇原敬之|50歳を目前に放つ言葉の魔法

槇原敬之が2月13日にニューアルバム「Design & Reason」をリリースした。“すべての物・事・形には、そうなるための理由がある”というテーマのもと制作されたアルバムには、NIVEAブランドのCMソング「記憶」の新バージョン、NHKのキャラクター・どーもくんの20周年キャンペーンソング「どーもありがとう」を含む全10曲を収録。マスタリングエンジニアには、1992年発売のアルバム「君は僕の宝物」以来槇原の作品を多数手がけてきたアメリカの巨匠・ボブ・ラディックが起用され、BEAMSクリエイティブの竹中智博氏がデザインしたジャケットまで、こだわりが随所に感じられる作品となった。

音楽ナタリーでは槇原にインタビューを実施。アルバムに込めた思いや今年5月に50歳を迎える自身の人生観についてたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 相澤心也

槇原敬之

作詞は半泣きで

──素晴らしいアルバムだと思います。制作はいつ頃スタートしましたか?

去年のツアーが8月中旬に終わって、ちょっとだけ休みをもらって9月から詞を書き始めました。僕は作詞に一番時間がかかるんですが、書き溜めていたものがあったので、そこは多少楽だったかな。作曲は10月から始めて、11月に一気にスタジオで作り上げました。制作当初は、4カ月しかないのにできるかな……って不安でしたけど、なんとか完成しました。アルバム自体はすごく気に入っています。

──噂によると、槇原さんはトラックを作るのがすごく早いとか。

どうなんですかね? 僕にとって作詞は、言葉は悪いけど陰鬱として悶々とする孤独な作業なので、作曲やアレンジの段階にはすごく解放感があるんですよ。詞に誘われてできる部分もありますし。あと、ちっちゃい頃からいろんな音楽を聴いてきて、引き出しはたくさんあるから、それで早いのかもしれないですね。

──歌詞を最後まで書き切ってからメロディを付けるんですよね。

そうしないと不安で不安で、曲作りに進めないんですよ。作詞の作業はひょっとしたらミュージシャンのくくりではないのかもしれないですね。かといって文筆業でもないんですけど、日々僕や他人が感じたりすることを1回言葉にして、それに音楽を付けていくみたいな作業なんです。逆にメロディに歌詞を乗せるのは実を言うとすごく苦手で、できる人はめっちゃ尊敬します。それができたら自分の曲にももっとバリエーションが出るだろうなって思うぐらい。

──作詞とはどう向き合っていますか?

詞を書くのはやはり大変ですね。聴く人の気持ちを大きく左右してしまうものだし。歳をとってますます思うんですけど、言葉は怖いなって。すごいミラクルを起こすこともできるけども、反面、簡単に人を殺せてしまう。僕としては聴いてる人に元気になってもらいたいとか、正直でいようって気持ちを後押ししたいとか、そういう願いがあるので、やっぱり言葉選びにはすごく慎重になります。けっこう半泣きで書いてますね(笑)。特に悲しみとかつらさの中から何かを見出していくような歌だと、そこに1回入らなくちゃいけないので、嫌なんて言っちゃいけませんけど、好きか嫌いかで言ったら……好きではないです(笑)。いや、それも語弊があるな。好きなことの中でビリケツという感じですかね。

──一緒にしちゃいけませんが、ライターにとっての文字起こしみたいなものですかね?

あ、そうかもしれないです。話をするのは楽しいけど、それを文字に起こすのは大変ですもんね(笑)。でも起こし方が少し違っただけで発言のニュアンスが変わっちゃったりするじゃないですか。言葉はそこが難しい。だからどうしても時間がかかっちゃうんです。

──「記憶(Album Ver.)」の「言葉を超えた想いの記憶」というフレーズを思い出しました。言葉を超えたものを伝える音楽の力、あるいは役割みたいなものを語っているのかなと思ったんですが。

これはNIVEAさんのCMソングだったので“触れる”をテーマに書いたんです。コミュニケーションツールは増えたけど、実際に会って手を握られると、どんなに言葉を重ねるより多くの情報が伝わってきますよね。それは音楽にも当てはまると思うんです。昨日ちょうど僕の周囲でその話が出たんですよ。「音楽とか芸術ぐらいだよね、もろ手で心を触ってきちゃうのって」って。僕自身は頭になかったことですけど、おっしゃったような意味合いもあるかもなと思いました。

言葉の魔法を使いたい

槇原敬之

──槇原さんは言葉をすごく大事にされていて、だからこそ言葉の限界も悟っていらっしゃる部分があるのではないかと。

いやいや、まだ鉄を打ってるような気持ちですよ。僕にはポテンシャルがあるはずだって。というのも、これまで聴いてきたいろんな曲が僕の心の中で何回もミラクルを起こしているから。「えっ、この1行でこんなに僕のことをわかってくれるの?」って思うようなことあるじゃないですか。その魔法を僕も使いたくて、練習しているような感じですね。書き慣れることはないですし、アルバムを作り終えたらすぐに「次はもっとここをこうしたいな」という部分が出てきます。僕の曲には細部を書き込むイメージがあったと思うんですけど、「もっと俳句のように行間を持たせたほうが伝わるのかな」と最近は感じたりしてて。絵でいうとスーパーリアリズムから印象派みたいな(笑)。

──早くも次作が楽しみになってきちゃいます(笑)。偉大な向上心ですね。

いやいや全然。作品を買っていただくためには、ちゃんとやりたいなって思ってます。実家が電気店だからか商売人気質で、お客様には自分がそのとき一番納得できたもの以外は出せないなって。だから捨て曲みたいなものは作れないし。