MACOが4枚目のオリジナルアルバム「交換日記」を12月5日にリリースする。
全曲新曲で構成された今作は、彼女の現在の意欲的なモードが垣間見えるポジティブな仕上がり。MACOと親交のあるクリエイターや、彼女たっての希望でコラボが実現したアーティストとの楽曲も収録された充実の1枚となった。さらに、アルバムのアートワークにはMACO自身もファンだという若い女性に人気のイラストレーター・ふせでぃが参加している。音楽ナタリーでは今回、アルバムの全容についてMACOにじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 曽我美芽
1曲1曲スタジオでセッションしながら制作
──アルバム「交換日記」は、なぜ全曲新曲でリリースすることになったんですか?
6月にベストアルバム(「BEST LOVE MACO」)をリリースしたあと、ちょっと一区切りと言いますか。原点回帰じゃないですけど、スタジオでセッションしながら曲を作っていく……という、インディーズ時代やデビュー当時によくやっていた方法でまた曲作りがしてみたくなったんです。
──1曲1曲をイチからセッションで作っていくって、かなり大変な作業なんじゃないかと思ったのですが。
うん、大変は大変です。でもセッションってすごく自由な雰囲気でやれるので、ちょうど自分を解放したいタイミングでもあったのかなって。
──一緒にスタジオに入る作家陣やアーティストはどうやって選んでいったんですか?
過去にご一緒したことのある方から、別のアーティストの作品で知って「ぜひMACOにも曲を作ってほしい」と思っていた方まで。ご一緒するのが2回目以降の方は、「○○さんの作るこういう曲が聴きたい」というリクエスト付きでオファーさせていただいたパターンもあります。
──セッションでの曲作りは久々だったということですが、手応えはいかがでしたか?
先ほど「セッションは自由な雰囲気」って言ったんですけど、場の空気がほぐれるまではガチガチに緊張してたし、ものすごく恥ずかしくて(笑)。いつも1人で歌詞やメロディを考えているので、誰かの前で、しかも即興で歌うとなるとすごく照れくさくて……。
──そうだったんですね。音楽が鳴った瞬間、ノリノリで歌い出せるようなタイプではないと。
あー、私は絶対無理です(笑)。クリエイターの皆さんは「自由に歌っていいから」って言ってくださったんですけど、最初はなかなか難しかったです。
「私ももっと歌いたい!」って掻き立てられた
──その緊張や照れはどうやって乗り越えたんですか?
以前曲を提供してもらって、今作でも2曲ご一緒したUTAくんがセッション中にこう言ったんですよ。「(MACOが歌う)鼻歌とか、そんなの聴いてないから」って(笑)。普通は「え!」って思うかもしれないけど、私はその言葉でふと気持ちが楽になって、恥ずかしながらもワンフレーズ歌うことができたんです。そしたら次は「すごくいいじゃん!」って褒めてくれて、だんだんほぐれていった感じでしたね。私、褒められて伸びるタイプなんだなって(笑)。
──あははは(笑)。そこからは皆さんとのセッションがスムーズに進行したんですか?
そうですね。UTAくんはスタジオにあるギターやピアノを弾きながらどんどんいろんなアイデアを提案してくれて。それに感動しつつ、「限られた時間の中で私も自分の最大限を表現しなきゃ」って前向きな気持ちにさせられました。マット(・キャブ)は以前一緒に曲を作ったことがあるんですが、彼、昔から音楽をすごく楽しみながら作る人で。「この感じ、この感じ」って、セッションしながら懐かしい感覚を思い出したところがありましたね。SUNNY(BOY)くんも「どんどん自由に歌って!」って感じで、なんなら自分も一緒に歌っちゃうんですよ。それで「私ももっと歌いたい!」って気持ちが掻き立てられたりしました。
──それにしても1曲1曲スタジオでセッションして作っていくって、贅沢な時間ですよね。
はい、本当に。どの曲も、セッション、プリプロ、レコーディング……という流れで作っていって、いろんなクリエイターの皆さんとスタジオに入った時間はすごく新鮮だったし、勉強になりました。あと今回は全て曲が先で、セッションがくれるインスピレーションが作詞にも大いに関係していて。基本的には実体験がもとになっていますが、曲が持っている雰囲気みたいなものが私の歌詞に結び付いて、今までにはない作風のものも生まれたのかなと思ってます。
何気ないことも言い合える恋を大切にしたい
──ここからは具体的に楽曲について触れていきたいのですが、アルバムのタイトルトラック「交換日記」はどうやってできた曲なんですか?
「交換日記」は私のバンドのベーシストでもある須藤(優)さんが曲を作ってくださって。サウンドがすごく明るくてモータウンな感じで、イントロから引き込まれましたね。歌詞のアイデアは実は以前からあったもので、曲を聴いた瞬間に「あの歌詞はこの曲にピッタリ!」ってパズルがハマった感じがあって。そこから須藤さんと一緒に曲を完成に導いていきました。
──そうだったんですね。タイトルの「交換日記」という言葉にはどんな思いが込められているんですか?
2年前にリリースした2ndアルバム「love letter」で歌っていたのが、相手にずっと臆病なラブレターを書き続けている……というものだったんです。でも今回の「交換日記」はお互いに思いを伝え合うところまで成長した感じ。心が通い合ってからの何気ない日常がすごく大切なんだよってことも伝えたかったですね。
──ちょっと気になったのですが、MACOさん含め、今のSNS世代からすると「交換日記」はあまり耳慣れないワードなのかなって。そういう意味で、このタイトルはちょっと驚きだったんです。
ああ、確かに。私自身は一応、交換日記をやったことがあるんですけど、それよりもっと若い子は果たして……ですよね。でも、いつの時代もみんな「自分たちだけの」とか「ここだけの」っていう親密なやり取りは好きなんじゃないかなって。最近はノートじゃなく携帯のアプリで交換日記をやってる子もいるそうですし。
──え! そんな時代なんですね。
ビックリですよね(笑)。で、そういった限られた中のやり取りって、本当に気の知れた人や完全に心を許した人としかしないじゃないですか。だからそう思える人がいるのは幸せだし、何気ないことも言い合える恋を大切にしたいなって。交換日記の増えていくページと自分の思いが厚みを増していく……というところをリンクさせて、今回のタイトルが決定しました。楽曲のほうの「交換日記」も、“交換日記”だから言えることを日常感たっぷりに書き綴った楽しい曲になったなって思います。
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インスピレーションから生まれたラブソングの数々