両方のシーンをリスペクトしながら音楽をやっていく

──最後に少し突っ込んだ話をしたいんですけど、先日、ナタリーで「マチゲリータさんがヴィジュアル系のカバーアルバムとトリビュートアルバムをリリースします」というニュースを配信したら1400件以上のコメントが集まったんですね。

ええ。拝見しましたし、ガチでヘコんだものもありました（笑）。

──あっ、やっぱり（笑）。「好きな曲が入っているから聴きたい」「マチゲさん、ついにソロデビューか」という好意的な意見がある一方で、「ヴィジュアル系の世界にニコ動のノリを持ち込まないでほしい」「あのバンドのあの曲をボカロなんかでカバーしてほしくない」といったコメントもありましたもんね。ただ、ボカロPであり、小学校時代からのヴィジュアル系のファンであるマチゲリータさんなら、それぞれのファンに温度差があって、今回のアルバムについて意見が分かれることは想像できたんじゃないかとも思うんですよ。

そうですね。確かにヴィジュアル系は人が歌って、人が演奏してなんぼの世界ではあるので、ボーカロイドに抵抗のある方も多いことは知っていました。

──それでもあえて今回の企画にチャレンジしたのはなぜなんですか？

単純にボーカロイドのクリエイターでもあり、ヴィジュアル系の大ファンでもあるからですね。自分がこの6年間、いろんな方に支えられながら活動してきたネットやボーカロイドというシーンには当然愛着があって。ソロデビューにあたって、ヴィジュアル系の方々とコラボさせていただけることになったからって、そのシーンを一瞬で切り捨てるようなマネは当然できないし、そんなこと思いつきもしなかった。これこそアーティストのワガママなのかもしれないんですけど、むしろ僕の好きなボーカロイドに僕の好きなヴィジュアル系の楽曲を歌ってほしかったし、ヴィジュアル系のアーティストさんにボーカロイドの曲を歌ってもらいたかったんです。それによって僕のようにボーカロイドとヴィジュアル系のどちらも好きな方が喜んでくれれば、うれしいですし。それに「I love Visualizm」をきっかけに、ヴィジュアル系を知らなかったボーカロイドファンの方がその世界を知ってくれたり、「In Other Worlds」でドレミ團やNoGoDのファンの方がボーカロイドのファンになってくれたらもっとうれしいし、僕の活動も幅が広がってもっと楽しくなるはずですから。だから、これからも、いくらいろんなご意見をいただいても、いくらヘコまされても（笑）、ボーカロイドクリエイターでありヴィジュアル系ファンであることと、両方のシーンをリスペクトしながら音楽をやっていくことという芯だけは曲げずに活動していきたいんです。