ナタリー PowerPush - 坂本真綾×the band apart(原昌和&木暮栄一)

運命の出会いが生んだ“世界征服”コラボ

板橋区民の“板橋ソウル”

──音作りの現場には坂本さんも立ち会ったんですか?

坂本 最初のデモ録りのときが初対面の場でしたね。いつもバンアパさんが録られているスタジオで録るから「じゃあ行きます」って言ったら、なぜか「……それはちょっと」みたいな雰囲気で(笑)。聞いたら「あまりにも女性が来るようなところではないので」って言われて(笑)。

左から坂本真綾、原昌和、木暮栄一。

木暮 普段男ばかりで寝泊まりしているような場所だから。

坂本 確かにここは見ちゃいけないみたいな開かずの間もありましたけど(笑)。初対面だし、実際はどんな方々なのかなと緊張しながら行ったら、一言目から「板橋区出身ですよね」って。板橋トークから始まりました。

 そうそう(笑)。昔行きつけだった店とか案外同じだったり。

──板橋区民ならではの性質とかあるんですかね? 板橋区民ならではの土着性というか。

木暮 板橋ソウルが(笑)。

坂本 ないですよ(笑)。板橋は中途半端ですよね。特になんでもないっていう。

 なんでもなさすぎて、逆にものすごい場所があったりする。なんでこんな場所によろず屋があるんだみたいな。

坂本 昭和っぽいところはありますよね。時代があまり進化しないまま残っている街。都内なのに繁華街まではちょっと遠いし、同じ東京出身の人に板橋出身だと言うとちょっと下に見られるみたいな(笑)。

 見栄張って「池袋だ」って言う(笑)。

坂本 私は生まれも育ちも板橋で、10代の頃は早く出たい早く出たいと思ってました(笑)。せっかくの共通項だけど、広がらないですね(笑)。

いい出会いの満足感、達成感でいっぱい

──一緒に作業してみて、印象が変わったところなどありますか?

 いや、そのまんまですね。俺が作った曲じゃなく、ちゃんと坂本真綾の曲になるんだなって。ありがとうございます。

坂本真綾

坂本 いえいえ、こちらこそ。今までほかのアーティストさんに提供したことがないというところから、よく引き受けてくださったなと思うと本当にありがたいですし、楽しんでもらえたらいいなと思っていたので。私が見たかぎり、とりあえず楽しそうかなって感じたので(笑)、いいコラボレーションができたんじゃないかなって。それはミックスが終わったときに感じましたね。いろんなものがいいところに着地した!って。帰り道も興奮して、このまま歩いて帰ろうかなって思ったぐらい(笑)、本当にいい曲に出会えたなって感動したんですよ。ミックスにはお2人も来られていて、2人とも満足されていたようでしたし。木暮さんはゲームしながらでしたけど。

木暮 モンハンのほうをちょっと……。

坂本 あははは(笑)。曲を作っている間に、いい正解が出せたなっていう瞬間が何度もあって。ミックスを終えた音を聴いたときは、いい出会いだったなという満足感、達成感でいっぱいになったんです。もうデモの段階からカッコよかったし、このままバンアパさんの曲として出せばいいのにって思うぐらいのものを私にくれるなんて。私だったらいい曲できたら人にあげないもん(笑)。

 いやいや、坂本さんのことしか考えないで作ってますから。

木暮 ウチのバンドじゃできないですよ。

坂本 難しいけど、歌っているとヘンなアドレナリンが出るっていうか、快感になってくるんですよね。スポーツしてるみたいな。投げたいところに投げられたみたいな快感があって、1曲歌うとゲームをクリアしたような感じ(笑)。歌ってて大変だけど、けっこうなんぼでも歌えるみたいな。きっとライブの定番曲になっていくと思うし、歌い続けていくことでどんどん成長していけそうな気がします。

「真綾さん」(語尾上げで)

──せっかくなのでバンアパのお2人から、今回のシングル全体の感想や評価をお聞きしたいんですけど。

木暮栄一

木暮 曲ごとの評価ではないですが、すごいなと思ったのが……やっぱり声優をやられているからというのもあるかもしれないけど、声の表情の変わり方が圧倒的に広いんですよね。この3曲だけ並べても。きっと反射神経がいんだろうなって思いますね。アニメやゲームの世界観はこうだと言われたときの入り込み方。その世界にガッと自分を持っていく能力が高くないと、こういう多面性は出ないと思うから。

坂本 ありがとうございます。今回の3曲はアッパーな「Be mine!」とバラードの「SAVED.」、ちょっと神秘的で壮大な「声」みたいな色分けになりましたけど、20年近く歌い続けてきた自分にとってのスタンダードとなっている方向性がそれぞれに出ているような気がしていて。私のいいところが全部わかるみたいな(笑)、初めての人に渡したくなる1枚になったなと思っています。

──原さんはいちファンとして(笑)、今回の新譜はいかがでしょうか。

 「SAVED.」は「風待ちジェット」を書いてる鈴木祥子さんですよね。俺は「風待ち」が大好きなので、今回もすごい曲だなと。大好きです(笑)。いや、鈴木祥子と一緒に自分たちの曲が収められるなんて、誇りでしかないですね、本当に。逆に「なんでこんな奴らと一緒に入んなきゃいけないんだろう」と思われてたらねえ(笑)。

──今回は「世界征服」の世界観を前提に曲を作られたわけですが、なんのしばりもないところからこの2組がコラボすると、また全然違うタイプの曲が生まれそうですよね。ここからさらに関係性を深める上で、お互い何か聞いておきたい疑問や質問はありませんか?

木暮 坂本さんがコイツ(原)の「真綾、真綾」ってつぶやきを見たとき「なんで知らない人に呼び捨てにされてるんだろう」って言ってたって聞いたんですけど(笑)、これからなんて呼んだらいいのかなと。

坂本 あははははは!(笑) もう知り合ったんだからなんとでも呼んでください。

木暮 真綾ちゃん……とかそんな感じじゃないじゃん。

坂本 今となっては真綾でいいですよ(笑)。

 やっぱ語尾上げで「真綾さん」かな(笑)。

  • 左から原昌和、坂本真綾、木暮栄一。
  • 左から原昌和、坂本真綾、木暮栄一。
  • 左から坂本真綾、原昌和、木暮栄一。
  • 左から坂本真綾、原昌和、木暮栄一。
ニューシングル「Be mine! / SAVED.(いなり盤)」/ 2014年2月5日発売 / FlyingDog
初回限定盤[CD2枚組] 1890円 / VTZL-72
初回限定盤[CD2枚組] 1890円 / VTZL-72
通常盤[CD] 1365円 / VTCL-35172
ニューシングル「SAVED. / Be mine!(世界征服盤)」/ 2014年2月5日発売 / FlyingDog
初回限定盤[CD2枚組] 1890円 / VTZL-71
初回限定盤[CD2枚組] 1890円 / VTZL-71
通常盤[CD] 1365円 / VTCL-35171
いなり盤 CD収録曲
  1. SAVED.[作詞・作曲:鈴木祥子、編曲:山本隆二]
  2. Be mine![作詞:坂本真綾、作曲:the band apart、編曲:the band apart・江口 亮、ストリングス編曲:江口 亮・石塚 徹]
  3. [作詞:坂本真綾、作曲・編曲:solaya]
  4. SAVED. -Instrumental-
  5. Be mine! -Instrumental-
  6. 声 -Instrumental-
世界征服盤 CD収録曲
  1. Be mine!
  2. SAVED.
  3. Be mine! -Instrumental-
  4. SAVED. -Instrumental-
  5. 声 -Instrumental-
初回限定盤付属CD「ミニライブアルバム“Roots of SSW”」収録曲
  1. 遠く
  2. グレープフルーツ
  3. cloud9
  4. park amsterdam(the whole story)
  5. スクラップ~別れの詩
  6. シンガーソングライター
坂本真綾(さかもとまあや)
坂本真綾

1980年3月31日生まれ。幼少時より劇団で活動し、1996年にテレビアニメ「天空のエスカフローネ」のオープニングテーマ「約束はいらない」で歌手デビューを果たした。声優、女優としても活躍しながら、コンスタントにオリジナル作品を制作している。2012年11月にはシングルコレクションアルバム第3弾「シングルコレクション+ミツバチ」を発表。同年12月31日には東京・中野サンプラザにて初のカウントダウンライブを行った。2013年3月には全曲の作詞・作曲を自ら手がけた最新アルバム「シンガーソングライター」、同年7月には大貫妙子が作詞・作曲を手がけたニューシングル「はじまりの海」を発表した。2014年2月にはthe band apart、鈴木祥子とのコラボレーション楽曲を含む3曲入りシングル「SAVED. / Be mine!」をリリース。

the band apart(ばんどあぱーと)
the band apart

1998年に荒井岳史(Vo, G)、川崎亘一(G)、木暮栄一(Dr)の3人で結成。後に原昌和(B)が加入して以降は、ソウルやボサノヴァなどの洗練されたコード感を交えたロックサウンドへ変化を遂げ、2001年10月のデビューシングル「FOOL PROOF」がいきなりの好セールスを記録。他に類を見ない独自性の高いサウンドは後のバンドにも大きな影響を与えている。2003年に自主レーベル“asian gothic”を設立。ブレイクを遂げてもインディペンデントな姿勢をキープしつつ、今日も新たな世界を切り拓いている。

the band apart ライブスケジュール
  • 2014年2月11日(火・祝)
    愛知県 DIAMOND HALL
  • 2014年2月27日(木)
    東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2014年3月13日(木)
    東京都 TSUTAYA O-WEST
  • 2014年3月19日(水)
    愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2014年3月20日(木)
    大阪府 Shangri-La
  • 2014年3月22日(土)
    福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2014年3月25日(火)
    岡山県 IMAGE
  • 2014年3月26日(水)
    大阪府 BIGCAT