BUDDHA BRANDへのリスペクト、DEV LARGEとの思い出
──「EKTO」のVERBALさんのバースで印象的だったのが「そして天まで飛ばそう」というフレーズで。BUDDHA BRANDが復活するこのタイミングで「人間発電所」のDEV LARGEのパンチラインの引用がきたかと思って。
VERBAL 「EKTO」は、エクトプラズムの“エクト”から来てるんですけど、天に向かって「思いを飛ばそう」という思いを込めて引用させてもらいました。僕たちはもともとBUDDA BRANDのファンでもあるし。3曲目の「MARS DRIVE」の「イルでいる秘決知ってたい」というフレーズも「人間発電所」のDEV LARGEさんのバースからの引用です。
──あ、本当だ。
VERBAL BUDDHA BRANDは昔からもう大好きすぎて。以前、DEV LARGEさんがご存命のときに京都のクラブで一緒になったことがあって。
☆Taku あ、俺もいた(笑)。
VERBAL そう、あのとき。「お前たちライブに遊びに来いよ」と誘ってもらって、僕たちもBUDDHA BRANDのファンなんで行くじゃないですか。ステージ脇でライブを観ていたらDEV LARGEさんから僕に「ちょっとサイドMCしてくれよ」「マジっすか!?」となって。それで「人間発電所」がかかったんですけど、そのときにDEV LARGEさんもひさしぶりに「人間発電所」を歌うから歌詞をほとんど忘れていて(笑)。サイドMCのはずがバースをほとんどやらせていただき、☆Takuも我慢できなくなって脇から入ってきて。僕たち2人で「人間発電所」をご一緒させていただいた伝説的な一夜となりました(笑)。
──めちゃくちゃレアな現場ですね(笑)。
VERBAL NIPPSさんとは一緒に曲を作らせてもらったこともあるし。本当に光栄ですね。
音楽に対して刺激ジャンキーなんで
──僕がマネジメントをやっている踊Foot Worksというバンドのメンバーはm-floの曲をクラシックのように聴いてたりするんですけど。m-floはそうやって若い子に与えてる影響も大きいかなと思うんですよね。
☆Taku そうなんですか? 交流のある若い世代のトラックメイカーはそういうこと言ってくれないですよ(笑)。特にビートに関してはそんなにいないと思う。
VERBAL いや、影響を受けてる子たちはいると思うよ。
☆Taku 僕は世間の評価としては残念なトラックメイカーだと思ってるので(笑)。
──そんなことないです。
LISA そんなことないよ。何を言ってるんだ(笑)。
☆Taku もちろん、自分が作ってるビートに対しては自信を持ってます。m-floが好きだって言ってくれる若いアーティストはいっぱいるし、それはうれしいんですけど……死ぬほどがんばって作った細かい打ち込みとか、そういうところはなかなか評価されないんですよね。
──ポジティブに捉えると、ポップミュージックとしての完成度が高いがゆえという側面もあると思いますけどね。
☆Taku ありがとうございます。実際はそんなに落ち込んでいるわけではないので大丈夫なんですけど(笑)。
──今回の作品でSASUKEくんが「EKTO」のリミックスをしているように、いろんな若いビートメイカーとの交わりももっと見てみたいですけどね。
☆Taku それは自分たちでも思いますね。キャリアを重ねても時代感が進んでない音楽を作り続けられるグループと、そうじゃないグループがいて。m-floはそうじゃないグループだと思うんですね。常に新しい音楽を作りたがるグループで。
──それは今作を聴いても明らかですよね。
☆Taku だからこそ、若いジェネレーションともつながっていくのはすごく大事で。キャリア20年のグループで、こういうサウンドをやってる人たちってあまりいないじゃないですか。それこそ、「been so long」(2000年発表のヒット曲)とか「come again」(2001年発表のヒット曲)みたいな曲を作り続ければいいじゃんみたいなことを言う人もいるんですけどね。でも、それは僕らが乗り気にならないし。
LISA そんな簡単な話じゃないよね。
☆Taku よくVERBALと今後の音楽的な方向性の話をするんですけど、この前、VERBALが言ってたのは「アコースティックギターと水の流れる音だけが鳴ってる曲を作ってみたい」とか。
VERBAL m-floに対する先入観がやっぱり僕ら自身にもあって。それに慣れてきてしまったので、全然やったことのないジャンルや手法を使うと、新しいものが降ってくるんじゃないかなという意味で言ったんです。僕、もともとフォークロックとかあまり聴かないんですけど、最近SpotifyでKhruangbinというバンドを聴いていて。サイケデリックロックっぽい変わったバンドなんですけど、面白いんですよね。あとは、DrugdealerというLAのインディーバンドも面白い。例えばそういうトラックでラップしたらどうなるんだろう?とか、LISAが歌を乗っけたらどんな感じになるのかな?と想像したときに新しいイメージが降ってくるんじゃないかと思って。
☆Taku やっぱり僕らは音楽に対して刺激ジャンキーなんで。活動を続けるために曲を出すんじゃなくて、作りたい曲があるから出す。そうじゃないと本末転倒だし。
なんでもいいからこのEPで遊んでください
──最後に7月3日、4日にLAで開催されるm-flo主宰のイベント「OTAQUEST」についても聞かせてください。「日本のポップカルチャーを世界へ」というイベントのテーマ通り、ある種の使命感をもってm-floはこのイベントを立ち上げたと思うんですよね。☆Takuさんが「block.fm」を立ち上げた理由の源泉もそこにつながってくるだろうし。
☆Taku そうですね。今、それこそ渋谷界隈でライブをやってる若手の子たちとかジャンルを問わず面白い才能がいっぱいいて。オタクという言葉自体もかつてとは意味合いが全然違ってきて、普通にライフスタイルの中に入ってきてるじゃないですか。例えばヒップホップシーンにもアメリカをはじめ世界的に通用するようなサウンドを日本の若い子たちが生んでいる。でも、残念なことに海外ではまだそれが知られてないから。まずはとにかく日本の音楽がどうやって海外に進出していけるかを考えていきたいし、紹介したい。「これが正しいんだ」じゃなくて「これが楽しいよ」という提案をどんどんしていきたいですね。僕は“フックアップ”という言葉があんまり好きじゃなくて。言葉の綾でもあるんですけど、紹介したいんです。こっちも若い世代に手伝ってもらっていることもあるし。そういう持ちつ持たれつの関係を大事にしたいと思っています。
──m-floとしてはニューアルバムに向けて制作を続けていると思っていいですか?
☆Taku やっとアルバムが見えてきましたね。その前にこのEPでは各曲のアカペラが入ってるので。世の中の皆さんに遊んでもらいたいです。
LISA いいメッセージ。
──トラックを作ってもらってもいいし。
☆Taku はい。なんでもいいから遊んでくださいということですね。
m-flo20周年特集 続編をお楽しみに!