m-flo|デビュー20周年のその先へ

アッパーじゃないんだけどエモーショナルな曲を

──皆さんの話からすると、1曲目の「EKTO」の前に「STRSTRK」ができたということですよね?

☆Taku そう。「EKTO」は時間かかったよね。トラックの構築を繰り返して。

──「EKTO」はシンセベースがサウンド全体を引っ張っていて、壮大であると同時にかなりストイックなトラック構築がされているなと思いました。ローの強調と歌の歌謡性みたいなものの共存具合のバランスが絶妙だと思います。

一同 うんうん。

☆Taku 「EKTO」ができたのは去年の12月下旬から年明けにかけて。とにかくトラックを作り溜めなきゃということで、すべての用事をブロックアウトして、カウントダウンイベントもせず、遊びにも行かず。年末から正月頭にずっと部屋にこもってできた曲の1つです。僕の今のm-flo観なんですけど、アッパーなサウンドに疲れたなと思っているところがあって。アッパーじゃないんだけどエモーショナルな曲を作りたいという思いがあったんですね。それは飽き性な自分との戦いでもあって、飽きずにどうやって楽しめるかがテーマだった。「EKTO」ともう1曲、曲名はまだどうなるかわからないけど仮タイトルで「エモトラ」という曲の2曲ができたのは、スタジオに置きっぱなしにしていたキーボードを取りにいったのが大きかったですね。キーボードに付属するソフトウェアがあって、そこに欲しい音が入っていたんです。ベースもそのソフトウェアに入っていた音です。

LISA

LISA 私は「EKTO」に何回かメロディを入れたんですけど、あまりいいメロディが付けられなくて。☆Takuから常にトラックが来ていたので、それに合わせて私もメロディを作ることが大変で、トラックを作ってもらうのを一旦「ストップ!」って止めたいぐらいだったんです。でもどんどん湧いてくるアイデアに対して「ストップ!」なんて言っちゃいけないし、私が「できない」ということも伝えなくちゃいけない。☆Takuが「EKTO」のトラックに惚れ込んでいたことを知っていたので、あまりシンガー人生でやったことがないけれど、ほかの人が作ったメロディと歌詞で歌おうと思ったんですよね。私自身、このトラックがすごく好きだし、チャレンジしてよかった。これも新しいm-floなんだなって。

☆Taku メロディはSatoru Kurihara(Jazzin'park)で、歌詞はJUNくんという奇しくもVERBALと僕の学校の後輩に書いてもらうことになって。「泣かせてほしい」ということをリクエストした記憶があります。

──LISAさんには、「STRSTRK」のように感覚的にすぐにハマる曲もあれば、なかなか歌を付けられない曲もあるということですよね。それを受け入れられるのも今のm-floであると。

LISA そうですね。☆Takuは私に「早くメロディを作って!」と言うような人じゃないし、私もそれをやられちゃうとすぐ逃げちゃうタイプなので。ほかの人にメロディと歌詞を付けてもらうと聞いて、最初は驚きましたけど、聴いた瞬間に一発で最高だと思えたのでよかったです。聴いた瞬間に☆Takuに「やりましょう、ぜひ!」と言いました。そこで「ノー!」と言っていたらこの曲は生まれなかったと思うとよかったですね。

ヒントは「リック・アンド・モーティ」のポータルガン

──「人間界と異次元をつなぐ穴を」をイメージして名付けられたという「mortal portal e.p.」のコンセプトはどういう流れで出てきたんですか?

☆Taku Takahashi

☆Taku まずEPのタイトルを決めようという話になって。そこでVERBALが「“mortal portal”というタイトルはどう?」って提案してきて、みんなで「おーっ!」と盛り上がったんです。

VERBAL 語呂がいいというのもあるんだけど、今まで僕たちは宇宙や未来を歌ってきて。デビュー当時は恋愛の曲を宇宙とか未来に例えたら新しくて面白いし、そこにウィット感も感じていたんですけど、さすがにもうやりすぎているなと思ったときに「mortal portal」というワードが浮かんで。僕らのデビュー当時よりも今の時代は宇宙の存在がだんだん現実的になってきていますけれど、異次元=パラレルユニバースはまだ解明されてないじゃないですか。☆Takuがよく「リック・アンド・モーティ」(アメリカの大人向けサイエンス・フィクション シットコムアニメ)を観ているんだけど、そこに出てくるお茶の水博士みたいなおじいちゃん(リック・サンチェス)がポータルガンという銃を持っていて、その銃を撃つとパラレルワールドに行けるんですね。それもヒントになりました。

☆Taku 穴が空いてるジャケットデザインのアイデアもハワイで「EKTO」のミュージックビデオ撮影をしたときにブレストしまくってできたんです。今後のm-floのビジュアルはどうするか、今のm-floはどういうポジションにいるのか、みんなでじっくり話したんです。その時点でジャケットのスケッチをVERBALが描いてたよね。「EKTO」は「発見ハワイ」というハワイ州観光局のキャンペーンのタイアップ曲ということもあって、ハワイ州観光局に協力してもらってミュージックビデオを撮影したんですけど、それも本当によかった。

VERBAL

VERBAL そうなんですよ。「EKTO」のMV撮影のときにハワイの風景が本当に美しくて、すごくパワーをもらえたんですね。僕がiPhoneで撮った写真ですら、全部絵になるんですよ。ジャケットにもハワイで撮った写真を使っていて、例えば空にタバコを押し付けたような穴が空いていて、それを異次元の入口に見立てたらどうかなと。今までのm-floのジャケットで手書きの文字やイラストを入れたことはなかったし、それもフレッシュだねって。

──結果的に曲の伏線を回収できるようなテーマ性も帯びて。

☆Taku そこは後付けではあるんですけど、きれいにまとめることができましたね。