LUNA SEA | SUGIZO×INORANが語る、名プロデューサー迎えた新作アルバムと30周年

音楽を愛してやまない小僧

──アルバム「CROSS」の制作は、今後のLUNA SEAにも大きく影響しそうですね。

SUGIZO(G, Violin)

INORAN もちろん。30年やり続けて、このタイミングで新しい扉が開いたというのかな。今までも「もっと可能性がある」と思っていたけど、自分が考えていた以上の可能性があると感じられたので。このアルバム単体の話ではなく、またここから物語が始まると思っていますね。

SUGIZO そうだね。30年を経て僕は50歳になりましたが、今なお音楽を愛してやまない小僧だし、まだまだヒヨッコですよ。もっとレベルを上げたいし、すごい作品を作りたいし、音楽と共に成長していきたい。今の僕の経験と年齢でそんなふうに思っていられるのは素敵なことだなと。つまり僕らはまだ旅の途中なんです。さすがに「始まったばかり」とは言わないけど、今は5合目あたりだと思っている。まだ伸びしろがあるという揺るぎない確信があるし、それを与えてくれたのが今回のアルバムなんですよね。完璧なタイミングで生まれた、エポックメイキングな作品だと思います。

INORAN 今音楽をやっている人、これから始める人に対して、夢を持ち続けて追い求めていればこういうことが起きると伝えたいですね。音楽業界において、スティーヴと一緒にやるのはすごいことだと思うんですよ。野球で言えば野茂英雄さんのメジャー挑戦、サッカーで言えば中田英寿さんがセリエAに行ったことに匹敵するくらい。彼らが海外で活躍するまでは「メジャーリーグなんて絶対無理」「日本人が海外サッカーで活躍できるわけがない」と言われていたじゃないですか。スティーヴとの制作は、それくらいの出来事じゃないかなと。

SUGIZO もう1つ言えることは、僕らとスティーヴは対等だということ。今日のインタビューで僕らはスティーヴを敬う話をしているし、心から尊敬に値する人物だと思っていますが、どちらかが上で、どちらが下ということではない。教師と生徒、親と子供もそうですが、実は教える立場のほうがより多くを学んでいることもある。スティーヴも僕らとのセッションによって多くのことを学んだはずなんです。芸術において日本より海外のほうが優れているなんてことはなくて、彼らもアジアの特性を欲している。それを理解できたこともすごく大きいですね。仮に「日本の音楽は欧米よりも劣っているから、向こうの感覚を頂戴したい」と思っていたら、こういうアルバムはできなかった。まずは自分のプレイや生き方が、どこの国に行っても誇れるものでないといけないし、「どこにいてもLUNA SEAでいていい」という確信が重要なんです。

INORAN 敬意を払うことは大事だけど、遠慮するのは違いますからね。数年前パリでソロのライブをやったとき、現地のプロモーターに「パリではU2もお前も外タレ。会場のキャパは関係ない。同等なんだ」と言われたんですよ。

SUGIZO いいね。

INORAN この前、リンゴ・スターとデイヴ・グロールの対談記事を読んだんだけど、デイヴはリンゴに対して敬意を持ちながら、あくまでも対等に話していて。僕らとスティーヴもそうで、「作ってくれ」じゃなくて対等に制作を進められたことが大きいんですよね。もちろん、彼の人間性やキャラクターもあるんだけどね。もし気難しいプロデューサーだったらまた違っていたかもしれないし。厳しい人だけどね、スティーヴは。だからこそ「本気でやろう」と思えたので。

SUGIZO スティーヴもそれを感じて、本気で返してきたしね。

INORAN 事務所やレコード会社からのオファーじゃなくて、直接つながっていたのもよかった。

SUGIZO うん。クリエイティブは本来そういうものだから。

INORAN LUNA SEAと「ガンダム」の関係も、スギちゃんが何年もかけて作り上げてきた絆のおかげだからね。

SUGIZO クリエイティブな人間関係がまずあって、それを企業やメーカーがサポートしてくれる。健全だよね。

INORAN やっぱり「いいものを作ろう」と本気で思っているかどうかですよ。それがLUNA SEAのパワーになっていると思う。

SUGIZO すべての源だね。

INORAN このキャリアになって「音楽で何が救えるのか?」「みんなに何をもたらせるのか?」ということに向き合うようになりました。今は背負うものもありますね。

どうでもいいことに命をかける

SUGIZO(G, Violin)

──SUGIZOさんは中東の難民キャンプでライブを行うなどさまざまな活動を続けていますが、社会との関わりについてはどう考えていますか?

SUGIZO 自分の中ではこの10年くらい、そのあたりのバランスがおかしいことになっていて。難民の問題もそうだし、「分断された世界の中で何ができるか?」という見方で普段は生きていますが、その視点に立つと実は音楽やギターはどうでもいいことなんです。スティーヴと一緒に素晴らしいアルバムを作ったことでさえ、今の社会にとってはどうでもいい。その“どうでもいいこと”に命をかけられることがありがたいなと思うんです。現在の僕にとって音楽は、命を懸けるべくものであると同時に、今ここですべてが終わってもいいもの。だからこそ「この一瞬にすべて懸ける」という覚悟を得られたんですよね。今すべてが終わってもいいという覚悟を持って全身全霊で音楽をやっているので……周りの人たちは迷惑だろうけど。

INORAN (笑)。

SUGIZO そうやって生まれた作品も、やっぱりどうでもいいんです。音楽、映画、小説などの芸術やスポーツもそうだけど、生きることや死ぬことには関係ない。でも心を潤す、魂を輝かせるためにすごく有効なツールだと思うんですよね。そんな世界の中で僕らは音楽を担当していて、今この状況にいる。そのことには心から感謝しています。LUNA SEAのメンバーは全員本当にこだわりが強いので、スタッフは「めんどくさいな」と思っているだろうけど、それはこの状況に対する感謝の表れであり、お金を出して音楽を聴き、ライブに来てくれる皆さんへの礼儀だと思うんです。

今、このバンドを観てほしい

──30周年のタイミングで、過去を振り返るのではなく、現在のLUNA SEAの充実ぶりを感じられるのは本当に素晴らしいと思います。30周年という数字に対しても、そこまでの重さは感じていないですか?

INORAN(G)

INORAN いや、重いですよ(笑)。30年間もこの場所にいられることは感謝でしかないし、奇跡とまでは言わないけど、支えてもらってきた重みも感じているので。ただ「30周年、どうですか?」と言われても答えられないんですよ。30周年イヤーは始まったばかりだし、この先どうなるかわからないから。

SUGIZO 一瞬一瞬を全力で生きてきたから、振り返る余裕もないしね。このインタビューもそうだけど、すべてを全身全霊でやって、気が付いたら30年経っていたという感じです。

INORAN 先のことについてはいい加減なことは言えないですからね。今年はRYUが病気になったりして(参照:河村隆一が肺腺がんを告白、手術成功し数週間で復帰予定)、何が起きるかはわからない。

SUGIZO RYUのコンディションは、僕らにとってもすごく大きかったですね。彼が命を脅かされる病気から復帰したこともそうだし……実はレコーディング中も彼は喉のポリープと戦っていた。すぐにでも切らないといけない状態だったのですが、最後まで乗り切ったんです。今までのRYUは余裕があって、テクニックも素晴らしいし、体力も人一倍あったんですけど、今回はギリギリのところで戦っていた。その崖っぷちの状態はこのアルバムにもすごく出ているはずだし、それが重要な要素になっている。RYUは多くのことを語らないですが、今回のアルバムにおいては、一番に彼の歌を称えたいですね。

INORAN うん。

SUGIZO これはいつも言っていることですが、一番重要なのはメンバーが元気なことなんです。健康な状態で音楽活動を続けて、ステージで演奏する。それだけで幸せだと思ってしまいますね。ステージでRYUが歌う姿を見るだけで、思いがこみ上げてくるんですよ。

INORAN みんなそうだと思うけど、会いたい人には会うべきだし、見たいものはできるだけ見たほうがいいよね。「観ておけばよかった」というライブもたくさんあるでしょ? 僕らとしては「今、このバンドを観てほしい」と思んですよね。来年はツアーもありますけど、いろいろとドラマチックな場面があったアルバムですし、それはライブにも出てくると思うんですよね。

SUGIZO 今のLUNA SEAに自信があるし、過去最高だと思っているんです。これまでの楽曲も、よりよい表現になっていて。「Déjàvu」「WISH」「TIME IS DEAD」「BLUE TRANSPARENCY(限りなく透明に近いブルー)」もそうですが、今演奏すれば今の曲になるし、やっとまともに演奏できる力量が付いてきた。ぜひ今、このバンドを観てほしいです。

INORAN 本当にいろんな場面を越えてきたので。だからこそ、今のLUNA SEAは強いと思いますよ。

ライブ情報

LUNA SEA全国ホールツアー
  • 2020年2月1日(土)埼玉県 三郷市文化会館
  • 2020年2月2日(日)埼玉県 三郷市文化会館
  • 2020年2月27日(木)栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
  • 2020年2月28日(金)栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
  • 2020年3月7日(土)石川県 本多の森ホール
  • 2020年3月8日(日)石川県 本多の森ホール
  • 2020年3月14日(土)福島県 南相馬市民文化会館 ゆめはっと 大ホール
  • 2020年3月15日(日)福島県 南相馬市民文化会館 ゆめはっと 大ホール
  • 2020年3月21日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2020年3月22日(日)福岡県 福岡サンパレス
  • 2020年3月28日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2020年3月29日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2020年4月4日(土)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2020年4月5日(日)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
  • 2020年4月11日(土)愛媛県 松山市民会館 大ホール
  • 2020年4月12日(日)愛媛県 松山市民会館 大ホール
  • 2020年4月18日(土)新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2020年4月19日(日)新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2020年4月25日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2020年4月26日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2020年5月2日(土)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2020年5月3日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2020年5月9日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2020年5月10日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2020年5月14日(木)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2020年5月15日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
左からSUGIZO(G, Violin)、INORAN(G)。