Lucky Kilimanjaro|もう一歩を踏み出すためのダンスミュージック

ラジオ体操から始まるアルバム

──今作のサウンド面では、さまざまなリファレンスを取り込みつつ、オリジナルのサウンドへと昇華しようと踏み込んでいる印象があります。2曲目「太陽」のトロピカルハウスと祭囃子を融合させたようなトラックも強烈でした。

「太陽」は、小さい頃に体験していた夏祭りの感覚をフェスで再現してみたいというアイデアから生まれた曲なんです。自分の中ではちょっとSFチックなイメージで、あえて和太鼓は使わずにトライバルなビートを組み合わせたりして、いびつなバランスに挑戦してみました。

──アルバムのオープニングを飾る「Superfine Morning Routing」も、音色や曲調などがかなり攻めたサウンドに仕上がっています。あのつんのめった独特のビートはどうやって作ったんですか?

あれは自分で弾いたエレクトリックピアノをチョップして、その音をサンプラーで叩いてるんです。トラック自体のイメージとしては、“カッコいいラジオ体操の曲”にしたいなと。

──ラジオ体操ですか?

はい(笑)。というのも僕、昨年のコロナ禍にラジオ体操にハマっていたんです。曲を作る前に軽く体を動かすと頭が活性化するし、この曲のアイデアもそうやって浮かんできたもので。今回のアルバムでは、全体を通して朝から夜までの時間の流れを意識していたので、1曲目がラジオ体操というのもいいなと。

祈りのあとに踊れる音楽を

──9曲目の「夜とシンセサイザー」には、メロウな始まりからドラマティックに展開していく構成に、キャリア初期のシティポップ的なイメージを覆すような大胆さを感じました。

僕らの音楽をどう捉えるかは聴き手の自由ですし、バンドがいわゆるシティポップ的な文脈で捉えられることに抵抗はないです。ただ常々、自分たちに付帯するイメージをいい意味で崩せたらなとは思っています。

──実際、今作ではシティポップ的なイメージから脱却してマッシヴなダンスミュージックを貫かれていますよね。そこにはどんな心境が反映されているのでしょうか?

2020年は祈りの年だったと思っていて。1年を通して、いろいろなものに対する祈りが込められた音楽がたくさん出ているなと感じていたんです。今作の最後にボーナストラックとして収録した「光はわたしのなか」もまさにそうなんですが。で、そういう状況を目にして思ったのは、僕らは祈ったあとのアクションを後押しするようなダンスミュージックを作るべきなんじゃないかということ。僕らはコロナ禍の中でとにかくみんなが純粋に踊れる音楽を作りたかったんです。

──「光はわたしのなか」は祈りの曲だったということですが、どんな経緯で作られたんですか?

ツアーが延期になって何もできなくなった時期に、そのときの混乱した状態を記録しておきたくて作ったんです。つまりはある種のドキュメンタリーとして完成させた曲です。でも今回のアルバムでは、「Superfine Morning Routing」で1日が始まって、「おやすみね」を経て再び朝に戻ってくるという、日々が続いていく様子を表現したかったので、「光はわたしのなか」をその流れに入れ込む余地がなかったんです。だからあくまでも番外編、という意図でボーナストラックとしてこの曲を収録しました。

目一杯幸せな場にしたい

──今回これだけフロア映えする作品を完成させたとなると、いよいよ5月に始まる全国ツアーへの思いも高まりますね。

はい。もうすごく楽しみですね。結果的に「DAILY BOP」は今までで一番“ダンス”を意識したアルバムになりましたし、昨年の全国ツアー(「Lucky Kilimanjaro Presents TOUR “2020 Dancers”」)では公演が延期になって行けなかった場所もあったので、そういうところにも今度こそLucky Kilimanjaroの音楽を届けたいと思っています。

──4月4日には東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)でのワンマンライブも決定しています。

ひさしぶりの野外でのライブということもあり、僕らもすごく楽しみにしています。こういう状況だからこそ、目一杯幸せな場にしたいし、みんなにとって一番楽しい日にしたい。あと、僕らの曲はライブでアレンジが変わることが多いので、お客さんにはそういう部分も期待してもらえたらと思います。

公演情報

Lucky Kilimanjaro presents. YAON DANCERS
Lucky Kilimanjaro presents. YAON DANCERS
  • 2021年4月4日(日)東京都 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
LUCKY KILIMANJARO ONEMAN TOUR “DAILY BOP”
  • 2021年5月29日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2021年5月30日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2021年6月10日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2021年6月12日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2021年6月18日(金)北海道 cube garden
  • 2021年6月20日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2021年7月9日(金) 東京都 Zepp Haneda(TOKYO)

※記事初出時、内容の一部に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

熊木幸丸(Vo)

2021年4月2日更新