Lucky Kilimanjaro|もう一歩を踏み出すためのダンスミュージック

Lucky Kilimanjaroが3月31日にメジャー2ndアルバム「DAILY BOP」を発表した。

「DAILY BOP」は、朝から夜までの時間の流れを描いたコンセプトアルバム。2020年にリリースされた「エモめの夏」「太陽」「夜とシンセサイザー」や2021年1月発表の「MOONLIGHT」を含む11曲と、ボーナストラック「光はわたしのなか」が収録されており、作品の随所にラッキリが思い描く理想のダンスミュージックが色濃く表現されている。

メジャーデビュー以降「世界中の毎日をおどらせる」というテーマを掲げてきたラッキリは、そもそもどのように歩を進めてダンスミュージックにたどり着いたのか。またコロナ禍を経験した今、改めて“踊れる音楽”を届ける意味とは。バンドのフロントマンである熊木幸丸(Vo)にじっくり話を聞いた。

取材・文 / 渡辺裕也 撮影 / 猪原悠(TRON)

ギターと鍵盤に触れて

──Lucky Kilimanjaroのサウンドは、作品のリリースを重ねるごとにハウス / エレクトロの色を強めてきた印象があります。言い換えると、インディー期に発表された2作(2015年発表の1stミニアルバム「FULLCOLOR」と、2017年発表の1stフルアルバム「Favorite Fantasy」)は、比較的オーソドックスなバンドサウンドでしたね。

熊木幸丸(Vo)

そうですね。「FULLCOLOR」の頃はバンドとしてもまだ手探り状態で、ダンスミュージックを作ろうという意識もまだなかったんです。当時はとにかくシンセを入れたバンドがやりたいという気持ちが強かったし、ハウスミュージックの色をしっかり出せるようになったのは、バンドがメジャーデビューしてからだと思います。

──なるほど。熊木さんご自身が最初に触れた楽器は鍵盤やシンセサイザーだったんですか?

いえ、最初はギターでした。中学3年生から大学2年生くらいまではギター一筋で。そこから何か新しいことをしたいと思ってシンセを買ったのですが、いまだにギターで曲を作ることもあります。今作に入っている「MOONLIGHT」もギターで作り始めた曲です。自分の中では、頭の中にあるイメージを具現化するにあたって、ギターと鍵盤を感覚的に使い分けているというか。

──「MOONLIGHT」は構成や音色、アレンジが面白い曲だと思いました。1950年代の絢爛なアメリカンポップスを踏襲したようなエレクトロニックサウンドに仕上がっていますよね。

まさに、クラシックな音楽を現代的にリメイクする感覚で作りました。古いジャズオーケストラ的なサウンドを、今のフューチャーR&Bやヒップホップのビートと融合させたかったんです。

──Lucky Kilimanjaroの音楽は、リファレンスがとにかく多岐にわたっているイメージがあります。結成当時、みなさんにとって指標になっていたアーティストやバンドはあったのでしょうか?

当初はPassion Pitみたいな、シンセを使ったインディポップをやってみようと思ってました。そこからエレクトロに関心を持つようになって、フレンチハウスが大好きになったんです。それでDaft PunkやJustice、Ed Banger Records(Daft Punkの元マネージメントメンバーであるペドロ・ウィンターが立ち上げたフランスの音楽レーベル)といった、ディスコとハウスを両立させるような音楽に挑戦したのが「FULLCOLOR」。その次作にあたる「Favorite Fantasy」では、さらにDisclosureなどのUK ガラージやNu-Disco的な要素を取り入れて、ジャンルの幅を広げようと挑戦しました。インディー時代に出した2作を今聴き返すと、自分でも拙いと思います。むしろその拙さがかわいいなと(笑)。

──今回のアルバムにも、Disclosureを彷彿させる要素があると感じました。7曲目「ON」のアフロビート的な音も、Disclosureの最新作「ENERGY」(2020年8月発表)に連なるアプローチなのかなと。

Disclosureはリファレンスというよりも、もはや自分の中に常にある存在なんです。技術的なことで言えば、僕はビートのバウンスの感覚をDisclosureから学んだので、意識せずとも、彼らに影響されたことが表れてしまうんですよね。あと、個人的にはDisclosureと同じくらいケイトラナダの存在も大きくて。彼の作品から学んだリズムの揺らし方は、今作にも表れていると思います。

ギター少年が抱いたバンドへの憧れ

──お話を聞いていると、熊木さんのソングライティングにはビートを重視する姿勢が窺えます。バンドがパーカッションを含む6人編成なのも、そうした指向の表れなのでしょうか?

編成に関しては強いこだわりがあったわけではなく、あの6人で集まるのがただただ楽しかっただけで(笑)。しかも当初、打楽器はドラムとパーカッションじゃなくて、ツインドラムだったんです。意識してそうなったわけではないけど、今思うと、あれはビートの強い音楽がやりたいという意思の表れだったのかもしれない。あとは単純にバンドに憧れていたこともありました。

──バンドへの憧れには、どんな原点があるんですか?

僕、高校生の頃はハードロックとメタルが好きで、ギターで速弾きばかりしていたんです(笑)。高3あたりではArctic MonkeysやThe Strokesとか、邦楽だとthe band apartを聴いたりして、次第に「バンド=カッコいい」という意識が培われていったという。

──なるほど。そういえば、今作の4曲目「アドベンチャー」の歌詞には「エディ」というワードが登場しますが、熊木さんのルーツにはエディ・ヴァン・ヘイレンもあるんですか?

もちろんエディは大好きです。あと、最近はポスト・マローンがオジー・オズボーンの楽曲にフィーチャーされていたじゃないですか?(2020年発表「It's A Raid(feat. Post Malone)」) あんなふうに今活躍してるアーティストによってハードロックやメタルが改めてリスペクトされる感じは面白いなと思っていて、自分も歌詞やビートでそういうことに挑戦したいなと。

今思うことを歌っていきたい

──ちなみに「アドベンチャー」には「Lean on me」という言葉も出てきますが、これはビル・ウィザースの?

おお! そこを指摘してもらえたのはうれしいですね。1970年代のソウルでいうと、僕はビル・ウィザースが大好きなんです。

──2019年に発表された「車のかげでキスを」(シングル「HOUSE」のカップリング曲)にもビル・ウィザースの名前が出てきたので、きっとそうなんだろうなと思いました。

僕、こんなふうに好きなアーティストや曲名を歌詞に入れるのがわりと好きなんですよ。特に「アドベンチャー」は、弱っている人やくじけそうな人を励ますソウルミュージックなので、自分のやりたいことや歌いたいこととリンクしていて。そんな自分の感覚と重なるネタを、つい忍ばせたくなるんです。

──確かに熊木さんの書かれる歌詞には、固有名詞がガンガン出てきますよね。

いつの時代にも伝わるような言葉で歌詞をまとめるのもいいと思うんですが、僕は常に、今思っていることを歌っていきたいんです。仮にその歌詞があとになって古く感じられたとしても、アーカイブ性があって面白いし、そのほうがリアリティがあると思っていて。