LOVE PSYCHEDELICO|独立独歩でキャリアを重ねてきた2人の軌跡

音楽ってやればやるほど奥が深いし、どこまでも先がある

──「ABBOT KINNEY」はアコースティックな手触りが印象的な5枚目のアルバムですね。確かにあの作品では、ギター以外にマンドリンやペダルスチールなど多くの楽器をKUMIさんとNAOKIさんが演奏していました。

NAOKI うん。ロスでの生活は、LOVE PSYCHEDELICOというユニットがまた原点に戻るきっかけをくれた気がします。自分たちが好きな音楽を、2人でとことん追求するという意味でね。ちなみに向こうでは、毎週のように2人でアコースティックライブをやっていて。実はそれが現在やっている「TWO OF US」の出発点になってたりもするんです。

──2014年に始まった、2人だけのアコースティックライブですね。

KUMI はい。去年のツアーでは全国20公演くらいを2人で回って、とても充実した時間を過ごしました。演奏自体はシビアで大変な部分もある。と言うのもバンドと違って私とNAOKIの2人だけでの演奏なので、失敗してもカバーしてくれる人はいないので。でも、それによって楽曲とより深く向き合い、お互いの楽器の音をすごく注意深く聴くということに意識が向きました。

NAOKI 緊張感のあるツアーだったね。人前であんなに一心不乱に楽器を演奏したことって、たぶんそれ以前はなかったんじゃないかな(笑)。もちろん「TWO OF US」のステージは俺らの力だけじゃなく、いろんなスタッフやエンジニアの力を借りて成立してるものなんですけど。でも、ロスで暮らしたあとに1回バンドサウンドを離れて、2人でより深く音楽を味わうシチュエーションを作ってきたのは、今のデリコにストレートにつながってると思います。

──では今後、LOVE PSYCHEDELICOは、活動20年を越えてどんな方向に向かっていくと思いますか?

KUMI どうだろうなあ。基本的には今まで通り、自分たちのペースで好きな音楽をやっていくだけだと思うんですけど(笑)。ただ最近、個人的には物事を前よりも長い目で見られるようになってきた気もしていて。音楽ってやればやるほど奥が深いし、どこまでも先があるので。若い頃みたいに焦って成長しようとせず、ゆっくりと深く向き合っていきたい、とは思いますね。

──もしかしてその変化には、KUMIさんが母親になったことも関係しています?

KUMI それもあるかもしれませんね。子供ができると、音楽に費やせる時間というのはやっぱり短くなります。でもそれは必ずしもネガティブなことじゃなくて。忙しくても大切な時間を積み重ねる中で、作り出す音楽も共に豊かになってくれればいいなと。今はそんなふうに思います。

──NAOKIさんはいかがですか?

NAOKI 今後も自分たちのペースを大切に、というのは僕も同じかな。新しいシングルの「Swingin'」もそうなんだけど、こういうリラックスしたムードで、自然体の音楽を奏でられる音楽生活でありたいなと(笑)。

──なるほど(笑)。軽やかなビートと肩の力が抜けたボーカルが印象的な、アップテンポのナンバーですね。この曲はテレビ東京のドラマ「行列の女神~らーめん才遊記~」のオープニングテーマにもなっています。

KUMI はい。去年、「TWO OF US」ツアーをやっている時期に、NAOKIが「こんな曲を思い付いたんだけど」と言って聴かせてくれました。それがすごくいい感じだったんです。それで、「いいね、すぐ録音しよう」と。

NAOKI ドラムはOKAMOTO'Sの(オカモト)レイジくんがぴったりだと思ったので、すぐに呼んで叩いてもらいました。僕自身、この曲では張り切ってリフを弾くとかじゃなくて。むしろ彼のビートに揺られるみたいな感覚で。気持ちはレゲエに近い。

KUMI 歌詞も少しユーモラス(笑)。

NAOKI そうだね。そんなこんなで、曲作りも演奏もミックスも楽しくできました。こういうリラックスした音楽との付き合い方が、今後はもっとあってもいいのかなと。方向性と言うほど大げさなものじゃないけど、それは思いましたね。

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ツアーは最高の音質も楽しんでほしい

──6月に始まる20周年アニバーサリーツアーは、バンド編成のライブになるんですね。最後にツアーに向けての抱負を教えていただけますか?

NAOKI 演奏はもちろんだけど、ぜひ最高の音質も楽しんでほしいなと。去年の「TWO OF US」ツアーで、会場用の音響スピーカーを設計からお願いして作ったんですね。最高峰のサウンドシステムを備えた映画館などのスピーカーを設計している人にお願いして。僕自身も設計に関わって、最高級のシアターにも負けないレベルの音響設備を開発しました。次のツアーでは、そのスピーカーをバンド演奏で初めて鳴らすので。僕自身ワクワクしてるんですよ。

──楽しみですね。出音が変わると演奏にも影響しますか?

KUMI はい。ステージに跳ね返ってくる音もキレイなので。自分だけではなく、メンバーの演奏もよりクリアに感じられるのではないかと期待しています。

NAOKI ちなみに開演前にはそのスピーカーを使い、僕らのスタジオにある名盤のレコードコレクションを会場で流そうと思っています。それをハイレゾデータ化して取り込み、プチプチ音とかノイズを細かく取り除いたうえで会場に持っていく(笑)。開演前から楽しいと思います。実は去年の「TWO OF US」ツアーで試してみたんですが、あまりにいい音だったのでお客さんがみんな聴き入って、席から動かなかった(笑)。そういった開演前のおもてなしも含めて、ライブを楽しんでもらえるとうれしいですね。

ツアー情報

LOVE PSYCHEDELICO 20th ANNIVERSARY TOUR 2020
  • 2020年6月21日(日)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
  • 2020年6月26日(金)北海道 札幌市教育文化会館
  • 2020年7月4日(土)愛知県 名古屋市公会堂
  • 2020年7月10日(金)福岡県 福岡市民会館
  • 2020年7月14日(火)大阪府 オリックス劇場
  • 2020年7月18日(土)高知県 県民文化ホール オレンジホール
  • 2020年8月26日(水)富山県 富山県民会館
  • 2020年9月4日(金)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)
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