LOVE PSYCHEDELICOが4月21日にデビュー20周年を迎える。
デビュー曲「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」から英語と日本語とが行き交う独特の歌や、洋楽的なアプローチが光るサウンドが注目を浴び、1stアルバム「THE GREATEST HITS」の大ヒットを機に一躍スターダムに駆け上がったLOVE PSYCHEDELICO。その後もヒット曲を連発して独自の立ち位置を確立させ、現在もシーンの第一線を走り続けている。
一見すると順風満帆にキャリアを築き上げているように見える2人だが、その裏では紆余曲折や葛藤などがあったという。今回音楽ナタリーでは3月25日にリリースされたベストアルバム「Complete Singles 2000-2019」の収録曲にまつわるエピソードなどを軸に、20年間の活動を振り返ってもらった。
取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 須田卓馬
「ちゃんと作ってきたんだな」
──2000年4月21日にデビューされたので、今年の4月21日できっかり20年ですね。
KUMI(Vo, G) はい。LOVE PSYCHEDELICOとしてこんなに長く活動するなんて、当時は想像もしていなかったです。
NAOKI(G) 当時はただ自分たちの好きな音楽を鳴らしていただけでさ、最初はアルバム1枚出せればいいと思ってたもんね。長く続けていくためのビジョンとか方向性とか、そういうのも全然興味なかったし。
KUMI そこは今も変わってない気もするけど(笑)。
NAOKI そうだね(笑)。レコーディングスキルや演奏経験については積み重ねてきたものは大きいけど、たぶん、根っこのところは同じだと思う。
──先日、20年間の全シングルを網羅した4枚組アルバム「Complete Singles 2000-2019」もリリースされました。自分たちの軌跡を振り返ってみて、改めて思うところはありましたか?
KUMI 全部自分たちでマスタリングをやり直したんですけど、シンプルに楽しかったです。今回はカップリング曲も全曲収録しているので、ひさしぶりに聴いた曲も多かったですし。あまりライブではやっていない曲もあったりと。
NAOKI たぶん、ライブで一度も演奏してない曲もあるよね。
KUMI だからマスタリング作業に入る前は「あの曲とかあの曲とか、どんな感じだったっけ? 大丈夫かな」みたいな心配もあったんです。でも実際に聴いてみたら、改めて「ちゃんと作ってきたんだな」と思えた。あまり過去を振り返らない私たちにとってもいい時間でした。
NAOKI 聴くといろいろ思い出したりね。自分たちの曲なのに「若かった2人はきっと、こういうことがやりたかったんだろうな」とか理解者の立場になったり(笑)、どこか客観的に見ている自分もいたりして新鮮でした。あと僕的には、カップリング曲を順番に収めたDISC 3とDISC 4のマスタリングが楽しかったな。
──DISC 1とDISC 2にはおなじみのシングル曲がリリース順に収録されていて、LOVE PSYCHEDELICOの進化のプロセスをたどることができます。一方、DISC 3とDISC 4には、ファンにとってもかなりレアな曲が並びました。
KUMI シングル用の楽曲、カップリングの楽曲と分けて作ってきたつもりはなかったんですけど、通して聴くとDISC 3とDISC 4にはリラックスした雰囲気が漂ってる気がして。それはそれで悪くないなと。
NAOKI うん。レコーディング中にはほとんど意識してなかったけど、どこか遊びの余白があるというか。いろいろ試してる感じが伝わってくるよね。って他人みたいけど(笑)。
シングルっぽさを意識して曲を作ったことは一度もなかった
──特に印象的だった曲はありますか?
KUMI それぞれ思い出深いけれど、例えばDISC 3に入っている「Amp' Box」。シングル4枚目「Free World」のカップリングでした。この曲ができたとき、自分では「斬新で、絶対話題になる!」と思ったんですね。でも、いざリリースしたら誰も何も言ってくれなかった(笑)。ルーツロックっぽい曲調に、いわゆるラップスタイルの言葉が乗っているんですけど。
NAOKI それ系のアイデアとしては当時かなり早かった自負があったよね。わかりやすいサビのメロディもほとんどない構成で。「これ、ヤバくない?」って2人で自画自賛してた(笑)。何日かかけてノリノリで歌詞を作って、録音したのをよく覚えてます。でも取材では、ほとんどスルーされちゃって拍子抜けしたの覚えてるよ。
KUMI そうそう。でも、今聴くとやっぱりカッコよかった。
──NAOKIさんはいかがでしょう?
NAOKI 僕も同じく「Amp' Box」と、あとDISC 4に収録されている「Dreamer」は聴いていて懐かしかったです。あの曲のアレンジって、ハリー・ニルソンの「うわさの男(Everybody's Talkin')」にインスパイアされてるんですね。映画「真夜中のカーボーイ」の主題歌としても有名ですけど、アコギのアルペジオがすごく美しい曲で。それまで僕らの楽曲は、どちらかというとラフなギターリフ主体の構成が多かったんですけど、「Dreamer」は初のカントリーソングというか。ビートに頼らないカントリーロック的なスタイルを、当時の僕たちなりに形にできた思い出があって。
KUMI 「Dreamer」は最近のライブでも演奏してます。ただCD4枚を聴き返してみて思ったのは、シングルカットの曲だからがんばってキャッチーな仕上がりにしようとか、そんな気負いはなかったんじゃないかなと。確かにDISC 1とDISC 2は、どちらかというと王道感のあるロックやポップスが多いけれど、それはそれで作ったときには自然だったというか。
NAOKI 僕もKUMIも、当時からいろんなタイプのロックやポップスを聴いていたからね。The Beatles、CarpentersやAbbaみたいなウェルメイドな音楽も、フランク・ザッパのようなアバンギャルドなものも、正直そんなに区別してなくて。メロディアスだからいいとか悪いとか、そういう発想もほとんどないですし。キャッチーな曲が書ければ、単純に胸がワクワクする。最初にKUMIが言った通り、特にシングルっぽさを意識して曲を作ったことは一度もなかったと思うな。
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「ギターがすごくうまい、雲の上の人」「なんか外国人みたいだな」