ナタリー PowerPush - LOVE LOVE LOVE
インド渡航が生んだ初フルアルバム 新作「KYOTOKYO」が示すバンドの行方
LOVE LOVE LOVEが、初のフルアルバム「KYOTOKYO」を完成させた。メジャーデビューから約1年半。人懐っこいメロディ、繊細な歌詞の叙情性、甘くあたたかなポップセンスで、音楽ファンの中にしっかりと支持を築いてきた彼ら。しかしここ1年でバンドが向かったのは、予想外の展開だった。
昨年2月に1stシングル「プラネタリウム」をリリースして以降、楽曲の発表は一時中断。9月に突然メンバーそれぞれが約1カ月のインド渡航を決行し、帰国後の12月に新曲「旅に出よう」を発表。ニコニコ動画でインド滞在中の模様を配信する一方、バンドはバンドのスタート地点である滋賀や京都でレコーディングを敢行した。その成果としてのアルバムは、新曲収録の「ヒンディー盤」とインディーズ時代の楽曲をまとめた「インディー盤」の2枚組としてリリースされる。
さらには、去年末から配信限定のJ-POP名曲カバー企画もスタート。藤井フミヤ「TRUE LOVE」、小沢健二「強い気持ち・強い愛」に続き、3月9日に配信開始した織田裕二「Love Somebody」のカバーではボビー・オロゴンとの異色共演も実現している。
彼らは一体何を思って突如インドに向かったのか? 今の彼らがどんな戦略で自分たちの音楽を発信していこうとしているのか? ナタリーではLOVE LOVE LOVEの3人にインタビューを敢行。アルバム制作の裏側から、今バンドが持っている意識までじっくりと訊いた。
取材・文/柴那典
いい意味で原点に返ったアルバム制作
──アルバムは、バンドのアイデンティティを改めて突き詰めたアルバムだと思います。去年はいろんな出来事を経てきたと思うんですけれど、まず完成しての実感はどうでした?
寺井孝太(Vo, B) 原点に返ったということは大きいですね。今回はプロデューサーを立てずに作ったんです。セルフプロデュースでやったことで、3人でどこまでできるかというアレンジ面も含めて、いろんな発見があった。何より3人で話す時間がたくさんあった。10日間くらい山にこもってプリプロをやっていたんです。そういうところで、いい意味で原点に返る作業ができたということが、大きなポイントだったと思います。
浦山恭介(G) 自分たちの力で作った、という感じが今までの作品より強いですね。その思いは作り上げたときにも感じました。
澤本康平(Dr) インドから帰ってきてたくさん曲を作って、その中で選びに選んだ曲を形にした1枚なんで、今の僕らを出せていると思います。
自分たちが進むべき道を、俯瞰で見て考えた
──改めて去年からのバンドの活動を振り返りたいんですけれど、去年2月にシングル「プラネタリウム」がリリースされて、順調な流れならすぐにアルバムもリリースされるだろうと思ってたんです。でも、突如インドに行くという謎の展開になって。
浦山 そうですよね(笑)。普通に考えたら、シングルをリリースして、それをアルバムにつなげるというのは誰もがイメージするだろうと思うんです。
寺井 実際に制作はしていたし、曲もあったんですよ。「プラネタリウム」を出した時点で次のシングルも見えてたし、レコーディングしてた。でも、どうやって自分たちが進んでいけばいいのかという吟味がちゃんとされてなかったんじゃないか?ということを考え始めたんです。このまま流れで次をリリースするのは、ちょっと違うんじゃないかと思って。「こういう曲を聴いてほしい」という強い思いを込めてやっていかなきゃいけないな、という。それで、一度頭の中を真っ白にしよう、という話をメンバーとしたんです。で、最初の計画を全部白紙に戻して、事務所やレーベルには申し訳ないけど「とりあえず1カ月くらい旅に行きたい!」って(笑)。
浦山 旅に出ることで、自分たちが進むべき道を一度俯瞰で見て考えたかったんですよね。
言葉の通じない場所で人とつながりたかった
──じゃあ、まずは旅に行きたかったと。でもその目的地がなんでインドだったんでしょう?
寺井 日本と全然違うところに行きたかったんです。言葉が通じない場所で、自分たちが何を思うのかということを持って帰りたかった。インドの人たちを前に、自分がどうコミュニケーションをとるのか。どうやってつながろうとするのか。それが重要で。
浦山 まあ、ぶっちゃけ最低限のお金で行けるという場所という条件もあったので。ヨーロッパのどこかというより、バックパック1つで行けるようなところでしたね。
寺井 で、3人それぞれバラバラで行ったんです。最終的な目的地は決めていて、そこで落ちあえたらいいね、という話はしていて。
浦山 目的地はガンジス河だったので、3人ともバラナシには行きましたね。
──実は、僕も一昨年にインドに行きました。デリー、バラナシ、アーグラ、ジャイプールに。
澤本 本当ですか!? それ僕が行った場所と一緒ですわ(笑)。
──日本とはあらゆることが違う街ですよね。
澤本 人生観が変わるって前から聞いてたんですけど、実際に生活の違いとか、考え方の違いをすごく実感しましたね。
浦山 日本に帰ったら、バンドマンとして何ができるんだろうかというのを考える期間になって。だから向こうでストリートライブをやったりもしたんです。そのとき、ミュージシャンとして言葉の通じないところで人に思いを伝えるってどういうことなのかってことを考えて。
──でもインドに行ったからといって、音楽性に影響はなかったんですよね。
寺井 まったくないですね。逆にそうなりたくなかった。シタールとか入ってたら、ちょっとサムいなって(笑)。
LOVE LOVE LOVE(らぶらぶらぶ)
寺井孝太(Vo, B)、浦山恭介(G)、澤本康平(Dr)による3ピースバンド。2003年に滋賀県立大学の音楽サークルで出会いバンド結成。2004年より京都を中心に活動を始め、2008年から拠点を東京に移し全国的な活動を開始。2008年9月に発表したミニアルバム「ターコイズ」がインディーズシーンで話題を集める。 その後もライブハウスやフェスなどの出演を重ね、2009年5月27日にミニアルバム「ソライロノオト」でSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。2010年1月にはミニアルバム「空想パドル」、2月に1stシングル「プラネタリウム」をリリースする。同年秋、新たな音楽を求めてメンバーそれぞれインドに渡航。1カ月にわたる旅を経て新曲「旅に出よう」他、数10曲を制作。同年12月に限定シングルとして発表し即完。ポップなサウンドとみずみずしい世界観、安定感のあるライブパフォーマンスが高く評価されている。