ナタリー PowerPush - LOVE LOVE LOVE

ミニアルバム3部作完結編は愛情を全力で歌う叙情的作品

LOVE LOVE LOVEが1月13日にミニアルバム「空想パドル」をリリース。前作「ソライロノオト」から約7カ月ぶりの作品となる今作は、繊細かつ叙情的な歌詞と、心癒される優しいメロディが印象的な、ミニアルバム3部作の完結編だ。

あまり聴きなれない言葉だが、“パドル”とはカヌーで水を漕ぐ際に使用する櫂(かい)のこと。彼らは東京に出てきてからの自分たちを、ずっと“パドリング”しているようだ、と語る。理想と現実のズレや葛藤──さまざまな思いを抱きながら制作された今作について、3人にじっくりと話を訊いた。

取材・文/川倉由起子

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常に理想を追い求める感じがあったほうが進んでいけるんじゃないかって

──「ターコイズ」「ソライロノオト」に続く、「空想パドル」。前2作と比べて、制作時に意識の変化はありましたか?

寺井孝太(Vo,B) 大きくは変わらないんですが、“どうしていいかわからないところ”から抜け出せたっていうのはありました。大事にすべきことがハッキリして、自分たちの持ち味は何なのか?っていうのが、今回で確かになってきた感じがします。

──前2作ではそこがまだボンヤリしていた?

寺井 今から思うと、「伝わったらいいかな?」くらいの、割と人任せな歌詞が多かった気がしてて。今回はそれを止めたというか、伝えるためにはどうしたらいいのか考えるようになった。伝えたいことがあって歌詞があるわけだから、歌詞に寄り添うようなアレンジにしたりとか、雰囲気を潰さないように工夫したりとか。こまごまとした部分で成長できたのかなって思います。

──それは、寺井さんの精神的な部分でも何か変化があったんですか? 「理想と現実のズレこそが自分を成長させる力になる」というコメントも拝見しましたが……。

寺井 例えば僕らにも憧れのバンドがいて、それに近づきたい、そういう音を鳴らしたいけど、やっぱりなかなか近づけない。そのギャップっていうのは当然しんどいものなんですよね。でも不思議なもので、成功してしまうと醒めてしまう瞬間ってあるりますよね? それよりは、常に理想を追い求める感じがあったほうが、結果としては進んでいけるんじゃないかなっていう。

──少しモヤモヤしてるくらいのほうが。

寺井 そう。恋愛も追いかけてるときのほうが楽しいって言うじゃないですか(笑)。自分はそんな器用な人間ではないので、そういう瞬間は多くて。近づけないものやできないことはいくらでもあるけど、できることは着実にやっていこうよっていう。諦めるがゆえの強さも出てきたし、自分を知って、少しは強くなれたのかなって。

浦山恭介(G) バンドとしても、東京に来てからいろいろな期待や不安があったし、ライブをどうしたらいいんだろう? っていう葛藤もあって。ケンカみたいになったときもあるんですが、それを繰り返すことでまた新しい考え方が生まれたりする。そういう時期に作られたこの3部作の完結編を出すことで、また次のステップにいけるんじゃないかと思ってます。

思いやりとか愛情とか、そういうことを全力で考えるようになった

──「空想パドル」の1曲目、リード曲でもある「タシカなカタチ」は、柔らかなミディアムサウンドが心地良いLOVE LOVE LOVEらしいナンバーですね。

澤本康平(Dr) 今作のリード曲をどうしよう? って話になったとき、僕らの得意なところ、好きな感じはどんなだ? って深く考えたんです。そうすると、普通はアッパーな曲をリードに持ってくることが多いんでしょうけど、僕らはやっぱりミドルテンポの曲だよな、と。

寺井 この歌詞は誰かに対してというより、割と自分がバンドをやっている理由みたいな部分から始まっていて。バンドがあったからメンバーとも出会えたし、こうして取材を通して僕らの気持ちを伝えられるのもそうだし。バンドと何かとか、そのふたつの間に発生している目に見えないものを大事にしたいっていう感覚なんです。あと、最初にこれを書いたときは絵本の「星の王子さま」を読んでいて……。

──そこからもインスパイアされたんですか?

寺井 昔読んだときはよく意味がわからなかったんですが(笑)、もう一度ちゃんと読んでみたらすごい感動して。思いやりとか愛情とか、そういうことを全力で考えるようになったんです。何かに対して思いを傾けることが、生きていく上で喜びを与えてくれることだし、意味を与えてくれるというか。もしそれがなかったら、すごくさびしいと思うんですよね。

──当たり前のことですが、きっと人間はひとりじゃ何の感情も得られないですもんね。

寺井 そうなんですよ。歌詞にもあるんですが、例えば本当に自分一人しかいないところに行ったら自分は何ができるんやろう? と。人がいるから、その人を喜ばせようとか、自分をわかってほしいから歌を歌ったりするんだろうし。もっと広く例えるなら、楽しく過ごしたいから昔の人は家を建てたのかもしれないし、それこそが人間にとって目には見えないけど“確かなもの”なんだなぁって。

──そういった思いがこのアルバムの軸になっているんですね。

寺井 はい。そうなって……いてほしいです(笑)。前2作よりは、輝くほうに自分を持っていった感はありますね。

浦山 最初に「タシカなカタチ」の歌詞を見たとき、いつになく寺井くんが素直になったなーって感じがして。“愛してる”と言い切ってしまっているところとか、昔なら絶対そんな直接的なことは言わない! って言ってたのに(笑)。

澤本 ライブでも既にやってるんですが、僕らも演奏してて“染みるな~”っていう感覚はすごいあります。最後の1曲でやることが多くて、お客さんの反応とか見ても、“あぁ、ちゃんと聴いてくれてるな”っていうのが伝わるんですよね。

ミニアルバム『空想パドル』 / 2010年1月13日発売 / 1600円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63476

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CD収録曲
  1. タシカなカタチ
  2. こんな気持ちは
  3. パートタイムビリーバー
  4. レイニーデイ
  5. 君が好きだけど
  6. カナカナ

レコチョクにてミニアルバム「空想パドル」の着うた®全曲配信を実施中。そこで着うた®を購入すると、イラストレーターの岸野真生子による各楽曲をイメージした待ち受けFLASHをプレゼント。着うた®&待ち受けFLASHのダウンロードと詳細についてはこちらから。

LOVE LOVE LOVE ONE MAN LIVE 2010
「ソラノムコウガワ」
  • 2010年3月22日(月・祝)
    OPEN18:00/START18:30
    会場 大阪・福島LIVE SQUARE 2nd LINE
    前売 2500円(ドリンク代別)
    チケット一般発売 2010年2月13日(土)
  • 2010年3月25日(木)
    OPEN18:30/START19:00
    会場 東京・下北沢SHELTER
    前売 2,500円(ドリンク代別)
    チケット一般発売 2010年2月13日(土)
ブルー三部作完結編ミニアルバム「空想パドル」
LOVE LOVE LOVE スペシャルインストアライブ
  • 2010年1月16日(土)
    ・タワーレコード京都店 13:00スタート
    ・タワーレコード梅田NU茶屋町店 18:30スタート
  • 2010年1月17日(日)
    ・タワーレコード新宿店 20:00スタート
LOVE LOVE LOVE(らぶらぶらぶ)

寺井孝太(Vo,B)、浦山恭介(G)、澤本康平(Dr)によるスリーピースバンド。2003年に大学の音楽サークルで出会いバンド結成。2004年より京都を中心に活動を始め、2008年から拠点を東京に移し全国的な活動を開始。2008年9月に発表したミニアルバム「ターコイズ」がインディーズシーンで話題を集める。 その後もライブハウスやフェスなどの出演を重ね、2009年5月27日にミニアルバム「ソライロノオト」でSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。さらに今作「空想パドル」にてブルー3部作の完結編とし、2010年2月17日にはファースト・シングル「プラネタリウム」のリリースが決定。そのポップなサウンドとみずみずしい世界観が高く評価されている。