リトルブラックドレス特集|新曲は及川眠子×林哲司×本間昭光による「逆転のレジーナ」、初のアニメ主題歌でつながる新たな縁 (2/2)

あれっ、つながったんじゃない!?

──及川さんとは普段どんなお話をされるんですか?

「その服のブランドはどこですか?」とか「あそこの駅においしいカフェがあるよ」みたいな乙女トークが多いです(笑)。ありがたいことに、眠子さんには本当にかわいがっていただいていて、「心に棲む鬼」という曲を船山基紀先生に編曲していただいたのも眠子さんの紹介がきっかけなんです。眠子さんと船山先生と萩田光雄先生のトークショーに遊びに行ったときに「Ryoちゃん(リトルブラックドレス)もおいで」って先生方の打ち上げに呼んでくださって、船山先生と萩田先生にご挨拶させていただきました。その打ち上げの席ではどんなギャグを知ってるかという話で盛り上がったんです。「よっこいしょういち」とか「あたり前田のクラッカー」とか(笑)。そのあとも昨年4月に開催された筒美京平さんのトリビュートコンサート(「ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート」)に出演させていただきました。

──「心に棲む鬼」は、有線で知ったという声もたくさん見受けられましたね。

うれしいです。中には「仕事中に流れてきて、怖くて仕事が手に付きませんでした」というコメントもいただきました(笑)。眠子さんは「こういう恨みつらみを歌ってもRyoちゃんのキャラクター的にくどくなりすぎないと思うから、Ryoちゃんにしか歌えない歌詞を書きます」と言ってくださったんです。ライブでは真っ赤な照明にして、めちゃくちゃ怖くして歌ってますけれども(笑)。

──ミュージックビデオでは俳優の船越英一郎さんと共演されていて、2時間ドラマのクライマックスのような崖の上での対峙シーンも話題になりました。

「心に棲む鬼」のMVは丸1日かけて撮影したんですけど、夜明け前に三浦海岸に着いたら現場では磯釣り大会が行われていたんです。なので「えっ、崖に船越英一郎さんがいる!?」って、すごい騒ぎになっちゃって(笑)。

──今回の「逆転のレジーナ」のMV撮影についても聞かせてください。

私の地元でもある岡山に本社を構える、創業120年の木下大サーカスさんと一緒に撮らせていただきました。祖母がサーカス好きで、小さい頃から岡山で公演があるたび一緒に観に行っていたんです。去年、仕事で木下大サーカスの社長さんにお会いする機会があり「同郷なんです」とご挨拶させていただいたんですけれども、そのあと「怪盗クイーンはサーカスがお好き」の主題歌をやることになり、「あれっ、つながったんじゃない!?」と思って。またしてもご縁を感じました。MV撮影の協力をお願いしたところ快く受けてくださって、公演中の名古屋の会場に伺いました。

──そこでも新たなご縁があったんですね。木下大サーカスでは何か特別なことに挑戦されたんですか?

中をバイクがグルグル走る鉄の球体があるんですけど、その中に入りました。「ここをバイクで走るなんて考えられない」というくらい傾斜が急で、入った瞬間めちゃくちゃ怖かったんですけど、がんばって“ここは我が城だ”というくらいの顔でギターを弾いて(笑)。サーカス団の皆さんも普段は観られない演目をやってくださったので、楽しんでいただけたらと思います。木下大サーカスさんは6月末から岡山で公演されるので、私もぜひ観に行きたいです。

──これまでも「夏だらけのグライダー」「雨と恋心」などご自身がメインで出演するMVが多数ありますが、被写体となることについてはいかがですか?

だんだん慣れてきましたね。小さい頃は写真を撮られるのがあまり好きじゃなくて。カメラを向けられるとレンズに吸い込まれるような気がして怖かったんですよ。でも親は私の写真を撮りたがるので、当時の写真を見ると嫌そうな顔しか残ってなくて(笑)。オーディション用の写真を撮るときでさえ「うーん、仕方ないよね……」という気持ちでした(笑)。ただ、今年の3月にTOMO KOIZUMIさんのファッションショーでモデルデビューさせていただいて。そのときに、素敵なお衣装を身に着けた瞬間「このドレスを見てもらいたい!」という気持ちになったんです。そこからいろんな方の思いを受け取って、どんな表情や衣装、ヘアメイクで発信すべきかを考えるのが好きになったので、たぶんカメラにもちょっと慣れてきたんだと思います。

リトルブラックドレス
リトルブラックドレス

私にしかできない選曲

──リトルブラックドレスさんはinterfm「TOKYO MUSIC SHOW」、FM岡山「Little Black Dressのスモモも桃も桃のうち」などラジオのレギュラー番組での話し方と普段とのギャップも面白いです。

中島みゆきさんの、ラジオでのテンションの切り替え方が大好きなんです。歌を歌っているときはまるで別人ですし、普段トークをされている映像を観ても全然そんなしゃべり方じゃないんですけど、ラジオになるとまったく別のキャラになるみたいな。(中島みゆきの口調そっくりに)「こんばんは、中島みゆきです。今夜もラジオやっていきますねー」という。

──めちゃくちゃうまいですね!(笑) 

私も“ラジオでの自分”を生み出すことができて超楽しいです(笑)。好きな楽曲を紹介できるし、ラジオはありがたいことだらけです。

──先ほどお話があった今年2月開催の「Little Black Dress CITY POP NIGHT」では、林哲司さんが作曲された松原みきさんの名曲「真夜中のドア~stay with me」をはじめ、シティポップの名曲の数々を披露されていました。

「CITY POP NIGHT」は私にしかできない選曲を目指して、メドレーの構成やアレンジの方向性も全部任せてもらっているんです。「私と同じ世代の方が会場にいらしていたら、どの曲も新鮮に感じられるだろうな。だとしたらどんな曲がいいかな」という私の目線を織り込んでいます。昨年10月に開催した1回目の「CITY POP NIGHT」では大貫妙子さんの「4:00A.M.」を今風のビート感でやったんですけど、そのあとTikTokで流行り始めたので、「ああ、やっぱりみんな好きだよねー!」と思いました。

──TikTokでの流行などは意識されていますか? 

それが私、SNS自体に疎くて(笑)。いいものはどの世代にも受け入れられるということがわかったので、私もいいものを作っていくしかないなという心構えでいます。

リトルブラックドレス

──「Little Black Dress CITY POP NIGHT」ではいろんな楽曲を歌って、新たな発見はありましたか?

大橋純子さんの「シンプル・ラブ」を歌ったときは、歌と1つになったような感覚がありました。去年の11月に日本武道館で開催された松本隆さんの「風街オデッセイ2021」で、大橋さんの「シンプル・ラブ」を生で聴いて衝撃を受けたんです。しばらくその曲しか聴かないくらい夢中になっちゃって。そこから恋に落ちたように、大橋さんの「男と女」や「テレフォン・ナンバー」といったシティポップ路線の曲をずっと聴いています。どうやったらあんなパワフルに歌えるんだろうと思って、発声方法からリズムの取り方まで勉強し直しました。大橋さんは足踏みしながら歌われるんですけれども、そういう動きも真似しながら勉強しています。

──大橋さんのシティポップ路線の曲は、リトルブラックドレスさんにとても合うと思います。

ありがとうございます。大橋純子さんのように歌えたら素敵ですね。

思いが形になる日は必ず来る

──7月でメジャーデビュー1周年を迎えますが、この1年を振り返っていかがですか?

「えっ、もう1年経つんだ!」という感覚ですね。コロナ禍でのデビューだったので、ライブもテレビ出演もすべてが新しい常識のもとに行われていて、スケジュール表を見返しても実はあまり記憶がないんですよ。それでも歩みを止めずにやってこられたのは、眠子さんをはじめ周りの素晴らしい方々にご縁を大切にすることを教えていただけたことが大きかったです。自分のやってきたことが身になる日が、いつか必ず来るということに気付けました。今、不安になってしまっている方は、焦らなくても思いが形になる日が必ず来ると思っていてほしいです。

──早くも次の新曲「白雨」が7月放送開始のテレビアニメ「異世界薬局」のエンディングテーマに決定していますし、今年後半はこれまで以上に活発な動きが見られそうですね。

「異世界薬局」はノンフィクションとファンタジーをかけ合わせたアニメで、実際に医療に携わっている方の知識を取り入れながら作られたんです。ペスト菌が流行った中世ヨーロッパ風な異世界で主人公がどうやって問題を解決していくかというお話で。原作を読ませていただくと今の時代にすごく響くメッセージがたくさんあるんです。アニメの中に「浄化の白雨」というセリフが出てくるんですけど、この歌が人々を浄化していく曲になればいいなと思って作詞しました。アニソンはオーディションでもよく歌っていたんですけど、勢いやポジティブさが私の性格にぴったりなんです。アニソンを歌うことで力をもらっていた自分が、今度は発信する立場になったんだなって。今はコロナ禍ということもあって、夢や未来といった言葉を前向きに捉えにくい時代なので、歌を届けることでみんなに元気を与えられたらいいなと思います。この先もまだまだ準備していることがたくさんあるので、楽しみにしていてください。

リトルブラックドレス

プロフィール

リトルブラックドレス

1998年11月3日生まれ、岡山県出身のシンガーソングライター。幼少期に家族が聴いていた歌謡曲に強い影響を受け、高校1年の春に叔父からギターを譲り受けたことをきっかけに弾き語りを始める。2016年9月に奈良・春日大社で行われたライブイベント「Misia Candle Night」のオープニングアクトに抜擢。同公演で出会ったアートディレクター・信藤三雄に「Little Black Dress」と命名され、ソロプロジェクトをスタートさせた。2019年5月にシングル「双六 / 優しさが刺となる前に」でデビュー。2021年7月には川谷絵音提供曲「夏だらけのグライダー」でメジャーデビューを果たす。同年9月に2ndシングル「雨と恋心」、2022年6月に劇場アニメ「怪盗クイーンはサーカスがお好き」の主題歌「逆転のレジーナ」を配信リリース。最新曲「白雨」は、同年7月より放送されるテレビアニメ「異世界薬局」のエンディングテーマに決定している。