音楽ナタリー PowerPush - LiSA
「シルシ」が示す彼女の現在地
“LiSA”というオンラインゲーム
──カップリング1曲目は「No More Time Machine」。蒸し返すようで申し訳ないんですけど(笑)、なんでサプライズを仕掛けてみようと?
私の考える“LiSA”っていうのはみんながワクワクしたり、ドキドキしたりすることをおちゃめにやる人だからですね。しかも「No More Time Machine」がエンディングテーマになっていた「SAOⅡ」の《キャリバー》編は《マザーズ・ロザリオ》編とはちょっと毛色が違っていて。ゲームの中で集まったみんながワイワイ騒ぎながら冒険をして、たまには失敗して、たまにはほかのキャラクターにダマされたりしながら、それでもミッションに成功して、みたいなストーリーですから。
──ほとんど現実世界の描写は出てこない。舞台はゲームの世界でしたよね。
だから解禁の仕方もそうですし「No More Time Machine」を取り巻くいろんなことをちょっとゲームっぽく楽しめたらと思って。曲を作るときも「“LiSA”という存在が『SAO』のゲームと同じような1つのコンテンツだったら」って仮定してみたんです。
──へっ!? 口にするのもバカバカしいんですけど、LiSAさんは人であって、ゲームでは……。
ないです(笑)。でも、本当にありがたいことに “LiSA”という存在や曲やライブを通じて、ほかのLiSAッ子と出会って仲間になった、友達になったっていう言葉をかけてもらうことが本当にたくさんあって。
──そうか。誰かと誰かをつなぐハブになっているという意味では、LiSAさんはオンラインゲーム的な存在なのか。
そうなんです。しかもゲームと違って、その輪の中に私も混ざることができるし、実際に混ざりたいとも思っているんです。ただ、私自身岐阜から東京に出てきたときとか、友人が結婚したときなんかにそうなったんですけど、別にケンカしたわけではないのに仲のよかった人と疎遠になることって珍しくはなくて。だから「No More Time Machine」には「SAO」のキャラクターたちとLiSAッ子のみんなに向けて「今そこにある友情やつながりを大切にしてね」っていうメッセージを込めてみました。ただ実はこれって、いつも私が言っていること。「今日もいい日だ」っていうだけの話なんですけど(笑)。
──そのLiSAさんの基本姿勢みたいなものが「SAO」の中にも見出せたのであれば、それはすごく幸せなことだと思います。
ホントにそうですよね。
──でもホントに毎日「今日もいい日だ」って思えてます? 日々暮らしていればイヤなことも少なくはない……いや、むしろ毎日そんなことばっかりだよなあっていう気がするんですけど。
あはははは(笑)。私ももちろん毎日能天気にハッピーとは言えない。イヤなことがいっぱいある日もあるんですけど、でも「今日もいい日だ」って言うためのきっかけを見つけるのが人より上手なんだろうな、とは思っていて。例えばイヤなことがあっても「そのぶん成長できたからいいや」って割り切れたり、「イヤなことあったから1個お団子多めに食べて忘れよう」って気分転換の方法を見つけられたり。それでもしお団子がおいしかったら「今日もいい日」なんです(笑)。“楽しい”って自分の力で作れるものなんだって思ってますから。
もうタイムマシーンなんていらない
──前回の取材でLiSAさんは今年頭の武道館公演について「いろいろ後悔もあった」と言っていましたよね。
はい。
──でもこの曲のタイトルは「No More Time Machine」。“タイムマシンはいらない”、つまり、もう過去は振り返らないと宣言しています。
武道館が終わってすぐの頃はやっぱり悔しかったし、「もう1回あの日をやり直したい」って気持ちがあって。「次にもし武道館でライブするなら同じセットリストでやろう」と思ってたんです。でも、さっきお話した通り、あの日があったからこそ私は今、鎧を脱いでステージに立てていて、その今の私だからこそ伝えられることがあることに気付いて。もちろん今度の武道館(参照:LiSA、来年1月に武道館リベンジ2DAYS)にはリベンジという意味合いもあるんですけど、もうセトリを全部同じにしようとは思ってはいない。そのとき私が聴いてもらいたい曲、みんなが聴きたい曲をやろうと思ってます。
──ところが、この曲の詞はLiSAさんがそういう決意のもと書いたわけではない。作詞は古屋真さんです。
だから古屋さんってホントに天才なんですよっ! そういうLiSAが歌うべきものをわかってくれているというか、今の私が伝えたいこと、しかもうまく言葉にできないことを言葉にしてくれて。結局古屋さんに見せてはいないんですけど、私、一応この曲の仮歌詞をなんとなくバーッて書いてみていて。そうしたら古屋さんの歌詞と私の仮歌詞で「タイムマシン」と「エール」って言葉がカブってましたし。
──“今伝えたいこと”なんてレベルじゃない。LiSAさんが“今使いたい言葉”が伝わっていた。
ホントにそうなんです(笑)。
──曲についても聞かせてください。さっき、前作「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」はピンクをイメージした「BRiGHT FLiGHT」とブラックイメージの「L.Miranic」で構成されていると言っていましたけど、「No More Time Machine」はピンク寄り。フォーキーで陽性な「BRiGHT FLiGHT」とトーンやマナーは同じですよね。
「BRiGHT FLiGHT」も「No More Time Machine」も同じピンクモードのLiSAの曲として作ってますね。ただ「BRiGHT FLiGHT」はおしゃれでみんなが踊れる曲なんだけど、「No More Time Machine」はちょっと「シルシ」寄り。バラードに近いというか、古屋さんの言葉や私の歌が聴いている人の耳にちゃんと入っていく曲を目指していて。「BRiGHT FLiGHT」は歌や言葉の力にサウンドの力を足して、みんなを盛り上げる曲なんだけど、「No More Time Machine」は逆に引き算の曲。作曲の野間(康介)さんや編曲のやしきんさんと一緒に、歌や言葉をちゃんと伝えるために本当に必要な音はどれなのか。そういうことをすごく意識して作りました。
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- ニューシングル「シルシ」 / 2014年12月10日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70031~2
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70033~4
- 通常盤 [CD] 1296円 / SVMC-70015
初回限定盤および通常盤CD収録曲
- シルシ
- No More Time Machine
- crossing field -English ver.-
期間生産限定盤CD収録曲
- シルシ
- No More Time Machine
- シルシ -Instrumental-
- No More Time Machine -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 「シルシ」ミュージッククリップ
期間生産限定盤DVD収録内容
- TVアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」ノンクレジットED《キャリバー》ver.、《マザーズ・ロザリオ》ver.を収録。
LiSA(リサ)
6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」(アニメ「魔法科高校の劣等生」オープニングテーマ)はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。2014年12月にアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」のエンディングテーマ「シルシ」をシングルとしてリリースした。2015年1月10、11日には東京・日本武道館にてワンマンライブ「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を開催する。