音楽ナタリー Power Push - リリィ、さよなら。
二人三脚で作り上げた“セカンド思春期”完結編
ヒロキ(リリィ、さよなら。)
池窪浩一(アレンジャー)
明け方のコンビニで「俺、東京でがんばってるんだな」
──リリースのテンポも早いというか、スムーズですよね。2015年2月に1stミニアルバム「リリィ、さよなら。」を出した8カ月後に2ndミニアルバム「ハッピーエンドで会いましょう」をリリースして。その8カ月後に今回のミニアルバム「どうして君は世界で一人」を発表されてます。その間に配信シングルもあって。
ヒロキ ミュージシャンの友達にも「いつもリリースしてるね」って言われますね(笑)。うちのマネージャーさんが、「ストックがあるならどんどん出せ」っていう人で。マネージャーさんに「リリィは楽曲先行で作品を出すのが一番のプロモーションだ」っていう信念があるので、本当にコンスタントに出してますね。池窪さんとも「この前、会ったばかりなのにまたレコーディングだね(笑)」って言ってる。
池窪 いいこと、いいこと。
ヒロキ ただ、2ndミニアルバムまではわけわからないうちに作品が出てるっていう感じだったかもしれないですね。リリィ、さよなら。はすべての楽曲が僕の実体験から生まれてるんですけど、つらい別れや後悔から生まれた私小説のような世界観をちょっとずつ拡散しないといけないなと思ってたんです。「ハッピーエンドで会いましょう」を出すまでは、「僕はこういう存在なんだ」っていうのを必死に出してましたね。
──2ndミニアルバムまでは、っていうことは今作を作る前に心境の変化があった?
ヒロキ そうですね。「ハッピーエンドで会いましょう」に入ってる「フラッシュバック」が、「首都圏ラジオ7局スーパープッシュ」に決まってから変わりましたね。
池窪 すごいラジオで流れてたね。ビックリした。
ヒロキ ありがとうございます。1回、明け方に新宿駅のコンビニに入ったら「フラッシュバック」が流れてきて。そのときは朝まで飲んでてお酒が回ってたし、いろんな悩みを抱えていた時期だったんです。そこで「フラッシュバック」を聴いたときに、「俺、東京でがんばってるんだな……」と思いました。
池窪 あははははは(笑)。めっちゃおもろい。俺は深夜ラジオで流れてきたのを聴いたよ。おぎやはぎが「ラジオからヒットソングを。リリィ、さよなら。です」って言ったんですね。そういうときって不思議なもんで、自分がアレンジした曲やのに完全にオフやから「え? え!? この曲、知ってるかも?」みたいになって(笑)。そのあとに、だんだん感動が押し寄せてきて。泣きこそしなかったですけど、すごくうれしかったな。
ヒロキ スーパープッシュに選ばれてから、インストアライブのお客さんが一気に増えたんですよ。それまでは、ワンマンこそ埋まれど、地方でのインストアは、お客さんが2人か3人で、10人以上は来たことがなかったんですね。でも、スーパープッシュに決まった瞬間に、千葉に行っても、埼玉に行ってもワッと人がくるようになったんです。「あ、これだけ、聴いてくれる人ができたんだ」って思ったときに、ちょっと安心したんですよ。ホッとした。ようやく軌道に乗り始めたんだって思えたし、次の作品は心に余裕を持って作ろうと。それがあったからこそ、今までは自分主体で作ってた作品が、聴いてくれてる人に向けての作品になったのかなと思います。
今までのリリィと雰囲気がちょっと違う
──池窪さんもヒロキさんの変化を感じてました?
池窪 うん、聴き手のことを本当に考えて曲を作るようになったんだなっていうのは感じますね。何かの判断を下すときに、「自分がこうしたいから」だけじゃなくて、「聴いてくれる人はこう思うかもしれないから」って考えるようになった。もちろん、そっちばかりじゃダメなんですけど。今は、どっちに舵取りするのかっていうのを悩んでるみたいですね。
──今作で心境の変化が一番表れている曲というと?
ヒロキ 1曲目の「シアワセな機械」ですね。池窪さんのアレンジではないんですけど……この曲の歌詞を書くとき、視野が広くなりました。自分のことだけじゃなくて、リスナーが聴いてくれることを意識して詞が書けるようになりました。4月に配信シングルとして出したときは、ファンの人からも「今までのリリィと雰囲気がちょっと違う」って言われました。
池窪 僕はこの曲で、また新しい一面が出てきたんだなって感じましたね。
──別れのつらさや後悔ではなく、出会いの素晴らしさを歌ってますよね。
ヒロキ 「出逢って僕に命をくれた / そんな君の想いなら」という歌詞が指す“君”は、僕の個人的に大切な人で、でもその中にはリスナーも入ってるんです。これを書いたときに、人って変わっていけるんだって実感しましたね。この曲を発表してから目の前がぱーっと開けたし、リリィの2ndシーズンの幕開けのような曲になりました。
池窪 あと、MVもいいよね、これ。ちょっとジーンとくる。
ヒロキ ああ、うれしいです。
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- ミニアルバム「どうして君は世界で一人」
- ミニアルバム「どうして君は世界で一人」 / 2016年6月22日発売 / 1620円 / VMAN-7 / Victor Music Arts
- 「どうして君は世界で一人」
収録曲
- シアワセな機械
- メロディ
- 春色の彼女
- ミスターカメレオン
- 花びら
- 夢が叶ってしまっても
dデリバリーpresents“どうして僕は世界で一人TOUR2016”
- 2016年9月18日(日)
- 大阪府 Music Club JANUS
- 2016年9月22日(木・祝)
- 熊本県 熊本B.9 V2
- 2016年9月25日(日)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
リリィ、さよなら。
1991年生まれ、熊本県出身のシンガーソングライターのヒロキによるソロプロジェクト。2013年11月にリリィ、さよなら。名義で初の楽曲「約束」を配信リリースし、2015年2月に1stミニアルバム「リリィ、さよなら。」を、同年10月に2ndミニアルバム「ハッピーエンドで会いましょう」を発表。2016年6月に3rdミニアルバム「どうして君は世界で一人」をリリースした。なお2014年11月に、超特急に提供した「EBiDAY EBiNAI」でヒロキとして作家デビューも果たしている。
池窪浩一(イケクボコウイチ)
1982年生まれのギタリスト兼アレンジャー。bahashishiのメンバーとして2006年5月にデビューする。バンドが2011年に活動休止して以降は、高橋優や藤原さくらのライブサポートを務めたり、リリィ、さよなら。の楽曲の編曲を手がけたりしている。