音楽ナタリー PowerPush - 黒夢

清春の告白

東京にこだわる必要もない

──ロングツアーはこれで最後、ということはもう伝えられていますが、それは今回のように地方をくまなく回るツアーはもうやらないということですか?

清春(Vo)

そうですねえ。僕らの中には東名阪はツアーじゃない、という感覚があって。だから東名阪はやるかもしれない。ただ強く思っているのは「名古屋に本拠地を置くバンド」でありたい。東京に住んでるんですけど、名古屋を拠点に活動するバンドに1回戻ってもいいんじゃないかって話はしてます。

──それはご出身が名古屋近辺(岐阜県)だから、ということですか?

それしかないですね。一緒に東京行ったんだから名古屋に戻ろう、という。そこからまた何か新しいことが始められるかもしれないし。だから今回のツアーは東海地方のライブが多いんですよ。スタートが名古屋でカウントダウンもファイナルも名古屋。名古屋にこだわってみたんです。2人とも東京に住んでますけど、東京にこだわりすぎるのが、まずダメになっちゃう要因じゃないのかな、と思うんです、僕の中では。

──バンド結成した当初は、東京に出て一旗あげてやろう、みたいな意気込みがあったわけですよね。それがどこかで変わってきたんですか?

うーん……僕らが知り合ったのは岐阜県なんですけど、最初は名古屋を目指してたんですよ。名古屋で勝つ!みたいなのがあったんで。名古屋で人気が出てきた頃が一番充実してたのかな、なんて思いもあります。名古屋に対する憧れがあったから。

──私、昔名古屋に住んでたんですけど、その頃名古屋はロック後進の地、みたいな言い方をされてましたね。外タレが来ても名古屋だけ素通りされたり。

ああ、ありますね。一般的には客が入らない街だと思うんですよ。僕らが活動してた頃は、東京なんて遠い宇宙みたいな場所で。大阪がちょっと近い感覚はありましたが、やはり目標は名古屋。名古屋はE.L.L.(ElectricLadyLand)っていう有名なライブハウスがあって。僕らは、E.L.L.に出られない人たちが集まるMUSIC FARMってライブハウスで活動していたんですけど。

──E.L.L.は全国的にも有名な老舗ですね。格式が高くて出られなかったということですか?

高かったですね、当時は。デモテープ審査というのがあって、そこを通らないと出られない。演奏がうまくないとシゲさんが納得しないというのがあって。

──シゲさん。オーナーの平野茂平さんですね。

そうそう。でも人気が出たら普通に出してくれたんですけど(笑)。当時はE.L.L.が憧れだった。だから……特に名古屋にこだわるわけでもないけど、東京にこだわる必要もないかなと。地元に帰ってじっくりやってみたら、もっと気が楽になって楽しめるのかな、と思うんです。黒夢の場合、“楽しむ”ってことを考えたほうがいいと思うんですよね。“売れる”とか“人が入る”とか、そういうのはもう……全盛期の頃はそればかり考えて焦りもあったし、スタッフが多くなっていって。それもダメになった1つの理由だと思うんで、それは避けたいし。復活した当初は全盛期のような活動をしようって考えがスタッフの中でもあったんですけど、それはちょっと違うんじゃないかなって気持ちがあって。この5年間で落ち着いたんですけどね。

──「楽しめるものにしたい」というのは腑に落ちる理由ですね。

うん……時代が違うというのもありますよね。僕らのときは上京して絶対に勝つ、結果を出すっていうのがメジャーに行くってことだったんですけど、今はもう、若い人たちも全員が東京に出たがるわけじゃない。

──地元定着指向が強まってるみたいですね。

ええ。僕らは東京に住んではいますけど、そんなに無理して、必死になって活動しなくても「もっといい曲作りたいなあ」とか「こういうサウンドをやってみたいなあ」とか「もっと今やってることを突き詰めたいな」という欲求が出たら(黒夢を)やる、というのでいいんじゃないかと。もう僕らの関係は壊れないと思うんで。ただもう楽しめない、という状況にはしたくない。

──わかります。

今(ツアーの)50本のうち半分が終わったんですけど、あっという間だったなあと思えるんで、それはいいことだなあと。活動休止前の最後のツアーで100本以上やってたときは、早く終わってほしいと思ってましたからね。お互いの顔も見たくないし、曲にも飽きてるし。ツアーをするっていうより、ライブ終わって打ち上げで遊びに行くことしか考えてなかった。今はちゃんとライブでその日のベストを尽くして。地方では、「これが最後」って言って、思い残すことのないようにやってます。

大人になってしまったから……

──その一方で、音楽的な部分で黒夢にしかできないことってあると思うんですよ。そのへんもやり尽くしたという思いなんでしょうか。

人時(B)

うーん……ほんとはもっと曲のテンポとかを落としたいんですよ、2人とも。どうしてもライブになると速い曲が多くなってしまう。ソロでは2人ともそういうのはやってないですからね。でもファンの人たちがそういうものを期待してるだろうから。期待されてるものを提供しようという気持ちはあります。やるんだったらさらにもっと激しくしよう、というのがあったり。ただスピードとかテンポとか激しいのとか、そういうのはライブである程度突き詰めちゃってるのかな、という気はしてますね。

──黒夢はそういう音楽をやるバンドだと。

うん、後期は。その一方で、例えば「少年」とか「Like @ Angel」みたいな、思春期の男の子たちが共感してくれるような、そういう部分は、僕らが世の中に出てこれた理由だと思うんです。だからその2つですよね。激しさと……センチメンタル、というかナイーブなところ。

──ある種の青春性みたいな。

うん。青春パンクとはまた違う。なんていうのかな……人生の岐路に立ったときに、負けそうになったときに聴いて、「関係ないや」って思えるような、そんな歌。弱い者の味方になるのが僕の思いだし、それを曲という形にしたかったんですよね。ただ、今はそれができないんですよね、新しい曲を作るときに。

──できない?

うん。僕ら大人になっちゃってるから。

──ああ、そういう意味ですね。

うん。まあやろうと思えばできるんです。でも20代後半の頃に作った曲を再生はできるんですけど、それに代わる曲……もうちょっと大人になった目線から下の世代へ、とか……そうなるとちょっと違ってきちゃうのかなあ、と思ったり。

──つまりお客さんの求める黒夢像というものを、今の黒夢では十分に提供しきれない、という思いがあるわけですか?

うーん……そうかなあ……極端に言えば。もっと違うことをやれてもいいんじゃない、と思ってしまう僕らがいる。

──でもその“違うこと”はソロなりsadsなりでやれてしまう。

うん。メインはソロですね。死生観とか……生命がゆっくり回って1周して……みたいな、そういう世界観はもしかしたら黒夢だけやっていたらできたかもしれない。でもソロでやっちゃったから、わざわざ黒夢でやる必要があるのかな、と思う。黒夢を期待している子たちにね。もちろんソロは好きじゃないけど黒夢は観る、という子たちはいる。その子たちのためにソロっぽい曲をやる必要もないのかな、とも思うし。逆にソロもsadsも好きですって子に向けて、わざわざ黒夢で似たような曲をやる必要もないし。

──そりゃそうですよね。

まったく新しい若い子たちに何をアピールするかっていうと、ちょっと浮かばないというのもあるし。

New Single(ライブ会場限定販売)タイトル、価格未定
発売会場

2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

※上記3公演のチケットをお持ちのお客様のみご購入いただけます。各会場とも販売数量には限りがございます、予めご了承下さい。

黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2「毒と華」
  • 2014年12月4日(木)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2014年12月5日(金)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年12月12日(金)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月13日(土)京都府 京都FANJ
  • 2014年12月14日(日)滋賀県 SHIGA U★STONE
  • 2014年12月20日(土)富山県 MAIRO
  • 2014年12月21日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2014年12月23日(火・祝)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月24日(水)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年12月30日(火)大阪府 なんばHatch
  • 2014年12月31日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年1月6日(火)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月7日(水)東京都 新宿LOFT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月10日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月11日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年1月16日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月17日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年1月21日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月22日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2015年1月28日(水)大阪府 BIGCAT(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月29日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE(ファンクラブ会員限定)
  • 2015年1月30日(金)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2015年2月3日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2015年2月5日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2015年2月7日(土)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月8日(日)岐阜県 岐阜club-G
  • 2015年2月9日(月)愛知県 Zepp Nagoya

2015年1月、2月公演はイープラスにて2次プレオーダー申し込み、12月8日(月)23:59まで受付中!

スマートフォン向け音楽プレイヤーアプリ「黒夢公式アプリ」
黒夢(クロユメ)

清春(Vo)と人時(B)の2人からなるロックバンド。1994年2月にシングル「for dear」でメジャーデビューし、「優しい悲劇」「Like @ Angel」「少年」など数々の名曲を発表。1995年5月にリリースされたアルバム「feminism」以降、すべてのアルバムがチャート上位を記録する。しかし人気絶頂のさなか、1999年1月に無期限活動休止を発表。その後、清春はsadsを結成し、人時もソロプロジェクトを始動する。2009年1月に日本武道館にて解散ライブを開催し活動に一旦終止符を打つも、翌2010年1月に再始動を発表。2011年2月にシングル「ミザリー」をリリースしたほか、同月に国立代々木競技場第一体育館にて復活ライブを敢行。同年11月に復活後初めてとなるアルバム「Headache and Dub Reel Inch」、2014年1月にアルバム「黒と影」をリリースした。2014年7月より最後のロングツアーと銘打ち「黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP」を開催中。