男は変わっても名曲は廃れない

──4曲目「アンチスーパースター」はほかの曲とはテンションが違う気がします。暗くて激しくて。

みんなあると思うんですけど、黒歴史に入れちゃってる恋愛を引っ張り出してきました。今まで個人的な怒りとか恨みは、あんまり曲にしてこなかったんですよ。でも恋愛というテーマに関してはそれは切り離せないんじゃないか？と。愛と憎悪、恨みと憎しみ、執着とかは切り離せないじゃないですか。今なら書けると思って、書くとするならあの体験が大いに使えるぞ、と。

──「ビートルズ」「ピストルズ」「ニルヴァーナ」といった歴史的なバンドの名前を連呼するサビが印象的ですけど、これは？

やっぱりいいものは残るというか、男は変わっても名曲は廃れないというか。過去の男から教えてもらったいい曲とか、その人からいただいたエッセンスは、例え別れてもいいものはいいものとして私の中に吸収されてるので。そこが循環して、こうやって曲になって出てきて、今なら余裕でピースサインできるなと。

──「ステージから君を見つけてピースサイン」っていう歌詞、すごいシチュエーションだと思うんですけど、本当にあったんですか？ ……って、そんなこと聞いちゃいけないか（笑）。

いやー……。まだやったことないけど、まあ今後あるかもしれないですね。いたら本当にやってやろう（笑）。

──はははは（笑）。

これもレコーディングがめっちゃ楽しかったんです。恨みとか怒りを表現するなら丁寧に作っていくもんじゃないと思って、歌も演奏も全部一発で録ってます。ドラムは柏倉さんで、ベースは原（昌和 / the band apart）さんで、みんな根っからのパンク体質なんですよ。ギターは松岡（モトキ）さんが弾いてるんですけど、松岡さんも「俺の好きなバンドの名前、いっぱい入ってるじゃん！」って喜んでました（笑）。クリックも使わずに録って。柏倉さんには「みんな、モタモタしてると置いてくぜ！」って言われました。すごく楽しかったです。

フリーライブは罠にはめるつもりで

──現在の絶好調ぶりがよくわかるシングルだと思います。最後に今後の予定も少し。音楽と、あと小説も執筆していますよね。

曲はガンガン制作してるし、小説も続編を書いてます。今回のリリースと同時に発表される小説が「壁の鹿」の3～5話なんですけど、筆が乗ってくると相当ヤバいところまできたなという感覚になるんですよ。本当はハッピーエンドにしようと思ってたのに、主人公はどんどん不幸になっていくし（笑）。もうちょっと踏み込んだら創作できなくなる、というギリギリのところまでいったんですよね、トランス的な。今後執筆活動は切り離せなくなるような気はしてます。音楽を取り上げられたらめちゃくちゃ困るし、小説を取り上げられても「せっかくいいところまで来てるのに持っていかないでよー」みたいな感じ。どっちの表現活動も救いになるんですよね。

──楽しみにしてます。そして7月のワンマンツアー｢君が私をダメにする｣。これ、フリーライブなんですね？

はい。でもチケットが無料というだけで、私たちのやることは変わらないです。新しい人にも観てほしいと思うし、大勢の人を巻き込んで、もっと大きい場所でやるためのステップでもあるし、今まで応援してくれた人への恩返しの気持ちもあって。自分はこの方向性で行くべきだということを前回のツアーでつかんだので、それをもっと研ぎ澄ました形で“ザ・黒木渚”というものを持ってツアーを回ります。

──フリーだけど一切手は抜かない。

フリーだからこそ、ですよ。気軽に観に来た人の心をつかむというか……罠にはめるつもりでやります。