ナタリー PowerPush - 栗山千明×後藤まりこ

歌う女優と演じるボーカリストを照らす“とよす”の“ルシフェリン”

女優が演じること、アーティストが演じること

──そういえば後藤さんは最近、舞台や映画の仕事もなさってるんですよ。

後藤 いや、その話はしなくて大丈夫かな(笑)。

栗山 あははは(笑)。でも私、アーティストの方がお芝居するのってすごくいいなって思いますよ。もともと言葉や声を扱う職業だから、ちゃんとセリフが大切なものとして聞こえるというか、役者とはまた違う角度から観ている人たちに言葉や思いを届けられるはずなので。

後藤 いやあ、難しいですね。不安ばっかり。栗山さんは悪役の仕事がきたら悪に徹するっておっしゃってたけど、そういうのがボクにはないんよ。悪とは何か、悪役とは何かがまずわからへん。ボクはもともとバンドの人で、今もバンドサウンドで自分で作った音楽をやっていて。良くも悪くもずっと自分のままやってきたから、言ってしまえば自分の役どころが読めないことが多くて。だから不安で不安でしかたないんです。

栗山 でも、オファーする人はその普通の女優さんにはない感じが面白くて声をかけてるんだろうし、観ている人もそこに面白さを感じているんだと思いますよ。

後藤まりこ

後藤 うーん……。栗山さんは悪役や人殺しの役もお嬢さまの役もバランスよくできるし、アーティストと女優とモデルもバランスよくやれて、たぶんそのバランスよくやれてるときが一番絶好調。精神状態OKってなるんだと思うんですけど、ボクはその精神状態OKな感じ、自分とまわりのバランスがよくなっちゃうと、たぶんすごく絶不調になる。ちょっとヤバいほうがやる気が出るというか、たぶんカネ持ちになったら終わるタイプなんよ、ホンマ(笑)。だから、芝居のときはいっつも「大丈夫か?」ってなる。

栗山 あっ、少しわかるかも。私も芝居に自信ないですから。

後藤 えっ!? だってもともとそのお芝居の人というか、女優さんとかそういう……。

栗山 そういう人だし、お芝居は好きだしやりたいから、やらせてもらえる環境は大切にしたいんですけど、自信って言われたら……って感じですね(笑)。芝居についてはいつも不安。現場では「監督がOKって言ってるからOK!」「ストーリーを全部把握してつなぎあわせるのは監督だし、その人がOKって言ってるんだから」ってある程度は割り切れるんですけど、家に帰るとやっぱり不安なんですよ。あそこ大丈夫だったかな?とか。たぶんそれはキャリアが長いとか短いとか関係なくて、私よりもベテランの役者さんでもそういう気持ちはどこかにあると思います。

音楽があれば応援してくれる人と直接出会える

後藤 音楽のときは自信あります? 芝居と違って歌ってるときは監督とかおらんわけやないですか?

栗山 そこは滝さんにアドバイスをいただきながら。

後藤 滝監督(笑)。じゃあ滝くんがOKやったら……。

栗山 OK!(笑)

後藤 そこで自分ジャッジみたいなものは? 台本通りに○○役を演じてるっていっても芝居のときもジャッジはしてますよね?

栗山 ある程度録音が進んでこれまでのトラックを聴かせてもらったときに「ああ、ここはちょっと……」って思ったら「もう1回チャレンジしてもいいですか?」みたいなことはありますけど、でも基本的には穏やかというか。レコーディングの現場は居心地のいい空間ですね。

後藤 滝監督の現場はいい空間です(笑)。

──シングルリリース前だしちょっと気の早い話なのかもしれないんですけど、今後、歌手・栗山千明はどんな活動をしていきたいですか?

栗山 今回の「とよす☆ルシフェリン」もそうですし、アルバム「CIRCUS」に入っている曲もそうなんですけど、どれもライブでやるのが似合う曲だと思うんですよ。

後藤 そうやね。

栗山 なのでちっちゃいライブハウスでいいのでライブをちょこちょこできたらいいなとは思ってます。

後藤 ライブをやったことは?

栗山 リリースのときのイベントで歌わせていただいたくらいですね。でも私、アーティストとして活動させてもらって一番うれしかったのが、応援してくれる人が目の前にいることだったので。

──そうか。モデルやお芝居だと……。

栗山 雑誌やドラマを観てくれる方がどんな人なのかはわからないですし、舞台は「イエーイ!」ってノリじゃないじゃないですか(笑)。それに出演者皆さんのファンの方がいらっしゃるわけですし。でもインストアのイベントなんかだと「おおっ、この人たちが私の曲を聴いて、私のことを応援してくれてるのか!」ってすごくテンションが上がるんですよね、やっぱり。

後藤 それは観たい! バンドで歌ってる栗山さんは観てみたい!

栗山 ありがとうございます! 応援してくれる方に会える本番ももちろんなんですけど、みんなで1回きりの本番のために何回もリハーサルしたりするのもホントに楽しくてしょうがないんですよ。だからアーティスト活動をやることで栗山千明としての表現に加えて、誰かの前で歌うことの気持ちよさや、応援してくれる人に直接思いや言葉を届けられる楽しみも探せたらいいなって思ってます。

写真左から栗山千明、後藤まりこ
ニューシングル「とよす☆ルシフェリン」/ 2013年4月24日発売 / 1260円 / DefSTAR Records / DFCL-2002
初回限定仕様ジャケット
通常仕様ジャケット
※初回仕様限定盤の生産終了後に、通常仕様のジャケット絵柄に切り替わります。
収録曲
  1. とよす☆ルシフェリン
  2. ほどけない、僕等は絶対。
  3. ルーレットでくちづけを
栗山千明(くりやまちあき)
栗山千明

1984年生まれの女優、モデル、歌手。5歳の頃よりジュニアモデルとして活動を開始し、1999年映画「死国」で女優デビュー。その後2000年の「バトル・ロワイヤル」、2003年の「キル・ビル Vol.1」などに出演し、国内外で高い評価を集める。2010年CHiAKi KURiYAMA名義のシングル「流星のナミダ」でアーティストデビューを果たし、同11月、布袋寅泰プロデュースのシングル「可能性ガール」を栗山千明名義でリリースする。以来、浅井健一プロデュースによる「コールドフィンガーガール」、椎名林檎による「おいしい季節 / 決定的三分間」「月夜の肖像」といったシングル、9mm Parabellum Bullet、いしわたり淳治、氏原ワタル(DOES)、BUCK-TICK、ヒダカトオルらも参加のアルバム「CIRCUS」を発表。2013年4月、9mm Parabellum Bulletの滝善充(G)が作曲、編曲、演奏、プロデュースを手がけ、後藤まりこが作詞したシングル「とよす☆ルシフェリン」を発売。

後藤まりこ(ごとうまりこ)
栗山千明

大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリでボーカルとギターを担当する。ジャズとパンクを融合した音楽性と、セーラー服姿での激しいパフォーマンスで話題を集めるも2010年12月30日のライブを最後にバンドは突然解散。しばらくの沈黙の後、2011年12月27日に開催した自主企画イベントでソロとして再始動を果たし、2012年7月にソロ1stアルバム「299792458」をリリースする。同年8月からはロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に森山未來とともに出演し、2013年4月公開の映画「ペタル ダンス」で映画初出演。また同月より放送のTVアニメ「惡の華」のオープニングテーマにゲストボーカリストとして参加。