ナタリー PowerPush - 栗山千明×後藤まりこ
歌う女優と演じるボーカリストを照らす“とよす”の“ルシフェリン”
「ルシフェリン」は普通に「ルシフェリン」
──あと「ルシフェリン」ってなんなんですか?
後藤 「ルシフェリン」は普通に「ルシフェリン」。
栗山 あははは(笑)。
後藤 なんかホタルなんかが持ってる物質で、そん中にルシフェラーゼっていう酵素があって、それが酸化したら発光するんよ。なんかそういうやつ。……ググって!
──わかりました(笑)。
後藤 海にツバとか吐いたりしたら、こうピッと光ったりするやん。あれも確かルシフェリン。
栗山 へえ……。
──栗山さんは海に向かってツバを吐いたことはないみたいです(笑)。
後藤 ああ、ホンマ? ほらボク、海っぺりに住んでたから。
栗山 そういう経験もあって以前から「ルシフェリン」っていう言葉を知っていて、今回タイトルにしてみたって感じなんですか?
後藤 うん。
──普通曲をもらったらその作者から「この詞はこういう意味で」みたいな説明があると思うんですよ。
栗山 あっ私、今まで一回もないですね。曲についても詞についても説明を受けたことはないです。
──へえ。じゃあいつも自分でイメージを膨らませて歌う?
栗山 そうですね。合ってんだか間違ってんだかはわからないんだけど、自分なりに詞の内容を解釈して(笑)。ただそうやって詞の世界観を自分で解釈して自分のものにすることも、私が歌わせてもらう意味だと思っているので。
少し不思議で強くて優しい女性を気持ちよく歌う
──今回の後藤さんの詞はどう解釈しました?
栗山 力強いんだけど、実はすごく優しいフレーズがいっぱいあって「強い女をイメージなさってるのかな」「それっていいな」って思いながら歌いましたね。
──「ここがすごくしっくりきた」とか反対に「ここはちょっとイメージしづらかったな」っていうフレーズは?
栗山 「どういう気持ちで書かれたのかわからない」みたいなことはなかったですね。最初の数字や動詞を羅列しているところは「なんでこの言葉とその言葉とあの言葉がこういう順番で組み合わせてあるんだろうな?」ってちょっと気にはなったんですけど、そんなに深く思い詰めはしなかったというか。羅列してある単語とメロディとのハマり具合やリズムがすごくよかったので、そのまま気持ちよく歌っちゃいました(笑)。でも、あの歌詞の最初に羅列してある単語はどういう意図で選んだんですか?
後藤 へっ、何が!? ごめんなさい。「よう考えてはるなあ」と思いながら話に聞き入ってた。
栗山 いやいやいや(笑)。最初の「愛、夢、海、におい、呼吸、透明」とか「6、ひずみ、根本、踏めば、覚醒」っていう歌詞は何か風景だったり物語だったりを想像しながら、それに似合う言葉を探してきたのか。それともメロディとのハマり具合とか言葉の響きみたいな部分で選んだのかな、って。
後藤 うーん……。強いて言えば後者かなあ。さっき言ったみたいに、ボクめちゃくちゃ気張って歌詞を書くほうやないから。滝くんの曲を聴いてるときに出てきた言葉を大事にしながら、そこにいろんな気持ちのいい言葉を積み重ねていったって感じというか。
栗山 そうやってハマり具合を大事にしてくださったからなんですかね? 今までは私が歌い慣れていないからではあるんですけど、リズムを感じながら歌うことができないことがけっこうあって。でもこの曲はすごく気持ちよく歌えたんですよ。
──「とよす☆ルシフェリン」を歌ってる栗山さんってホントに気持ちよさそうですよね。
栗山 すみません、気持ちよくなっちゃいました(笑)。曲のテンポ感なんかはすごくアグレッシブじゃないですか。
後藤 うん。初めて聴いたとき「ああ、滝くんやなあ」って思った(笑)。
栗山 でもそれがすごくうれしかったんですよ。「CIRCUS」を作るとき、本当に多くのアーティストさん、それも私の大好きな方々に曲を書いていただくんだから、皆さんに自分の色を消してほしくなくて。例えばですけど、私がボーカリストとして未熟だからあんまり難しいフレーズは使わないとか、そういう妥協はしてほしくなかったんですけど、どなたも本当に妥協してくれなかった(笑)。今回も滝さんはそういう曲を書いてきてくださったし、その上、後藤さんがこれまでの私の曲にはなかった言葉というか、すごく不思議で、でも強くて、でもすごく優しいみたいな(笑)、そういう詞を書いてくださって。その言葉と曲に負けないように力強く歌うのがすごく気持ちよかったんですね。
──後藤さんにとって自分の書いた言葉をほかの人が歌っているのを聴く経験ってほとんどないですよね。どうでした、栗山千明の歌う後藤まりこの歌詞は?
後藤 よかったし、あと「こうなるんや」って思った。詞を書くとき、滝くんにもらったオケにあわせて自分で歌ったりもしてたから、それと比べて「あっ、ここはこういうふうに発音しはんねや」とかいろいろ発見があって。「私」を「あたし」って発音したりとか。そうやって自分のものにしてる感じがすごいいいなあ、って。
栗山 ありがとうございます!
- ニューシングル「とよす☆ルシフェリン」/ 2013年4月24日発売 / 1260円 / DefSTAR Records / DFCL-2002
- 初回限定仕様ジャケット
- 通常仕様ジャケット
- ※初回仕様限定盤の生産終了後に、通常仕様のジャケット絵柄に切り替わります。
収録曲
- とよす☆ルシフェリン
- ほどけない、僕等は絶対。
- ルーレットでくちづけを
栗山千明(くりやまちあき)
1984年生まれの女優、モデル、歌手。5歳の頃よりジュニアモデルとして活動を開始し、1999年映画「死国」で女優デビュー。その後2000年の「バトル・ロワイヤル」、2003年の「キル・ビル Vol.1」などに出演し、国内外で高い評価を集める。2010年CHiAKi KURiYAMA名義のシングル「流星のナミダ」でアーティストデビューを果たし、同11月、布袋寅泰プロデュースのシングル「可能性ガール」を栗山千明名義でリリースする。以来、浅井健一プロデュースによる「コールドフィンガーガール」、椎名林檎による「おいしい季節 / 決定的三分間」「月夜の肖像」といったシングル、9mm Parabellum Bullet、いしわたり淳治、氏原ワタル(DOES)、BUCK-TICK、ヒダカトオルらも参加のアルバム「CIRCUS」を発表。2013年4月、9mm Parabellum Bulletの滝善充(G)が作曲、編曲、演奏、プロデュースを手がけ、後藤まりこが作詞したシングル「とよす☆ルシフェリン」を発売。
後藤まりこ(ごとうまりこ)
大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリでボーカルとギターを担当する。ジャズとパンクを融合した音楽性と、セーラー服姿での激しいパフォーマンスで話題を集めるも2010年12月30日のライブを最後にバンドは突然解散。しばらくの沈黙の後、2011年12月27日に開催した自主企画イベントでソロとして再始動を果たし、2012年7月にソロ1stアルバム「299792458」をリリースする。同年8月からはロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に森山未來とともに出演し、2013年4月公開の映画「ペタル ダンス」で映画初出演。また同月より放送のTVアニメ「惡の華」のオープニングテーマにゲストボーカリストとして参加。