ナタリー PowerPush - 栗山千明×後藤まりこ
歌う女優と演じるボーカリストを照らす“とよす”の“ルシフェリン”
栗山千明がニューシングル「とよす☆ルシフェリン」を4月24日にリリースする。
今作は収録曲すべての作曲、編曲、演奏を9mm Parabellum Bulletの滝善充(G)が手がけ、さらにタイトル曲には後藤まりこが作詞家として参加。滝一流のハードでエッジーなギターサウンドをバックに、抽象的ながらもタフな言葉を叩きつける攻撃的なロックナンバーに仕上がっている。
今回ナタリーでは栗山と後藤の対談を企画。滝と後藤という国内ロック界の鬼才2人が集まった経緯やアーティスト・栗山千明の今と未来から、2人の「豊洲感」まで大いに、しかし、ゆるゆると語り合ってもらった。
取材 / 大山卓也 文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類
滝善充が書き、栗山千明が歌うなら断る理由はない
──お2人は今日が初対面なんですよね。
後藤まりこ うん、初めて。
栗山千明 だからなんか不思議な感じがしてます(笑)。
──じゃあ今回「とよす☆ルシフェリン」を制作するにあたってお2人をつないだのは滝さん?
後藤 そうやな。
──栗山さんが今回、滝さんと一緒に曲を作ろうということになった経緯って?
栗山 前のアルバム「CIRCUS」にも収録していて、今回のシングルにも入ることになった「ルーレットでくちづけを」っていう曲を滝さんからいただいたんですけど、私がすごくハマってしまったというか。歌っていて気持ちよかったので「なんかまた曲を作っていただけたらうれしいな」と思っていたら、滝さんもそういう気持ちでいてくださったみたいで。改めて「ルーレットでくちづけを」ともう1曲加えてシングルをリリースしようっていう話になったって感じですね。
──そして後藤さんにお声がかかった、と。後藤さんはどういう経緯で今回の話を受けたんですか?
後藤 なんか滝くんから「書いて」って言われたから「いいよ」って。
栗山 ふわっとした感じで(笑)。
後藤 なんか断る理由もないですから。面白そうだったし。ただ人の作った曲の詞を書くことは初めてやったし、しかも滝くんから渡されたオケがギター1本とかじゃなくて、滝くんが弾いたドラムやベースなんかも入ったちゃんとしたもので。そういうオケに詞を乗せるのも初めてやったから「大丈夫かな?」っていう不安はちょっとあったかな。だいたいなんで滝くんから頼まれたのかまったくわからへんかったし。その話をもらうまでけっこう長い間滝くんとは会ってへんかってんよ。
栗山 なのに急に連絡が来て、みたいな感じだったんですか?
後藤 うん。滝くん的になんかピンときたんかなあ。
「とよすってあの豊洲?」
──滝さんからは「こんな感じの歌詞で」みたいなリクエストはあったんですか?
後藤 なんか曲と一緒に「そんなに暗い感じではなくて、光が見える感じで」ってひと言が添えられてたから「ああ、じゃあわかりました」って自分なりに解釈して、すごい直接的な言葉で書いてみたって感じ?
──確かに「あなたを照らし続け、生きていく」とか光や明るさのことを直接的に歌ってますね。
後藤 あとは「LからMへの構造式。」っていう言葉であったりとか。なんて言うん? LとMやんか。ABCDって言ってたときにLの次はMやし、あと「lm」ってルーメンっていう明るさの単位なんよ。なんかまあそういう感じの言葉をチョイチョイ並べてみた、みたいな。
栗山 じゃあ何かストーリーを考えながらというよりも、光や明るさに関する単語を思い浮かべながら歌詞を書いていったって感じなんですか?
後藤 うん。曲を聴きながら「♪ふんふんふんふん」「♪ふーん」ってデタラメな日本語で歌ってたらこうなったって感じですね。
栗山 へえ。作詞家の方って皆さん、そんな感じなんですかね?
後藤 どうなんやろうなあ。
──後藤さんの詞を受け取った栗山さんの感想は?
栗山 「とよす」っていうのが一番気になって……。
──やっぱり気になりますよね(笑)。
栗山 「とよすってあの豊洲?」って(笑)。詞を書いていた場所が(東京都江東区)豊洲だったんですよね。
後藤 そうなんですよ。その時期によく行っていたのが豊洲で。あそこってすごい人工的じゃないですか。埋立地なんかな? よくは知らんけど。
栗山 あの近辺はそうですね。
後藤 駅前は開発されてるし、めちゃくちゃ人もおって。住みやすいようになってんだけど、ちょっと離れたらまったくなんもなくなって、電柱がいっぱい立ってる電柱畑みたいな異様な場所もあって。そういうところが「いいんじゃね?」と。
栗山 「いいんじゃね?」なんだ(笑)。
後藤 「いいんじゃね?」と思ってタイトルにしてみました(笑)。
栗山 このあいだその豊洲でPVを撮影してきたんですけど、確かにすごく不思議な街ですよね。豊洲の中を転々とロケーションを変えながら撮影してたんですけど、おっしゃるようにすごく近代的な場所もあれば、突然更地のような場所に出ちゃったりもして。
後藤 そういうところがなんかボクにとってはいい感じなんですよ。めっちゃ好き、豊洲。
- ニューシングル「とよす☆ルシフェリン」/ 2013年4月24日発売 / 1260円 / DefSTAR Records / DFCL-2002
- 初回限定仕様ジャケット
- 通常仕様ジャケット
- ※初回仕様限定盤の生産終了後に、通常仕様のジャケット絵柄に切り替わります。
収録曲
- とよす☆ルシフェリン
- ほどけない、僕等は絶対。
- ルーレットでくちづけを
栗山千明(くりやまちあき)
1984年生まれの女優、モデル、歌手。5歳の頃よりジュニアモデルとして活動を開始し、1999年映画「死国」で女優デビュー。その後2000年の「バトル・ロワイヤル」、2003年の「キル・ビル Vol.1」などに出演し、国内外で高い評価を集める。2010年CHiAKi KURiYAMA名義のシングル「流星のナミダ」でアーティストデビューを果たし、同11月、布袋寅泰プロデュースのシングル「可能性ガール」を栗山千明名義でリリースする。以来、浅井健一プロデュースによる「コールドフィンガーガール」、椎名林檎による「おいしい季節 / 決定的三分間」「月夜の肖像」といったシングル、9mm Parabellum Bullet、いしわたり淳治、氏原ワタル(DOES)、BUCK-TICK、ヒダカトオルらも参加のアルバム「CIRCUS」を発表。2013年4月、9mm Parabellum Bulletの滝善充(G)が作曲、編曲、演奏、プロデュースを手がけ、後藤まりこが作詞したシングル「とよす☆ルシフェリン」を発売。
後藤まりこ(ごとうまりこ)
大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリでボーカルとギターを担当する。ジャズとパンクを融合した音楽性と、セーラー服姿での激しいパフォーマンスで話題を集めるも2010年12月30日のライブを最後にバンドは突然解散。しばらくの沈黙の後、2011年12月27日に開催した自主企画イベントでソロとして再始動を果たし、2012年7月にソロ1stアルバム「299792458」をリリースする。同年8月からはロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に森山未來とともに出演し、2013年4月公開の映画「ペタル ダンス」で映画初出演。また同月より放送のTVアニメ「惡の華」のオープニングテーマにゲストボーカリストとして参加。