テーマは「女子力ほわほわ」
──3曲目「Piece of Peace」は前2曲とはまた趣きを異にする、地に足の着いた感のあるハートウォーミングなミディアムチューンです。
先ほど、今回のカップリングは素の自分の理想や空想を形にしていると言いましたが、「Piece of Peace」のテーマは「女子力ほわほわ」です(笑)。
──女子力ほわほわ。
その言葉自体は田淵(智也)さんがおっしゃっていたのですが、「Pina colada & Caipirinha」が非日常を夢見る歌だとしたら、「Piece of Peace」は日常にフォーカスしようと。そして、この曲の詞はちょっと特殊な書き方をしていて、1番だけ田淵さんが書いて「じゃあ続きを小松さんが書いてみてください」と言われたんです。ですから、主人公はすでに決まっていて、その子をどう動かしていくかを考えながらの作詞でしたが、思いのほかすんなり書けました。
──よく言われますけど、白紙の状態から書き出すよりも、何かしらとっかかりがあるほうが書きやすいみたいな話ですね。
そうですね。1番の歌詞はすでに固まっているから、それと対比させながら少しずつベクトルをずらしていくのが面白いかなと考えました。例えば1番の歌詞は「今日もなんとか笑顔で おうちまで帰れたね」から始まるので、その帰ってきた主人公を外に出してみるとか。
──その歌詞全体を要約すると「私はマイペースで歩き続けますよ」ということになると思うのですが、それが素の小松さんの理想?
そうありたいです。例えば私の血液型はB型なんですけれど、昔から「B型ってマイペースだよね」みたいなことを言われ続けてきたんです。でも、意外とそうでもないし……自分の性格だと思うのですが、私自身のことを詞に書くときは、どうしてもまず自分の短所に目が向いてしまって、なかなか長所が見つけられないんです。
──それ、わかる気がします。僕も就職活動していたときに、履歴書の自己PRが書けなくて書けなくて。
自分のことを書くのはものすごくハードルが高いと思います。自分のマイナス面だったらいくらでも出てくるのに(笑)。でも、そのマイナス面を反面教師みたいにして、「自分はこうありたい」という内容なら書けるかもしれない。普段の会話などで口にすることはできないけれど、きっと歌詞でなら……と思って書きました。
──マイペースで歩き続ける一方で、“笑顔”で帰ってこられる“おうち”があるのもポイントですよね。
“おうち”というワードは田淵さんがくれた単語なのですが、結局、自分が安心できる場所って「まず家だよな」と。それも、外があるからこそ意識できることだと、詞を書いて余計に感じたことなんですよね。私にとって家の外ってバトルフィールドみたいなところがあるので(笑)。
──バトルフィールド(笑)。小松さんも自分の家がお好きですか?
大好きです! でも、家にいれば当然また外に出たくなるし、帰ってほっと一息つける場所があるからこそ、マイペースで歩いていけるんじゃないかと思います。
上に伸びるのではなく、横に広がっている
──さて、小松さんがQ-MHzの全面プロデュースを受けるようになって1年と少し経ちました。「Blooming Maps」リリース時のインタビューでQ-MHzは「今まで自分自身で気付いていなかった引き出しを開けてくれた」とおっしゃっていましたが(参照:小松未可子「Blooming Maps」インタビュー)、この1年間で感じたことを改めてお聞きしてもよいですか?
なんだか、常に課題をいただいているような感覚があります。それは「次に乗り越えるべきハードルはこれだ」と直接言葉で教えていただくのではなく、楽曲の中に「自分のテーマを自分で決めなさい」みたいなメッセージが込められているように感じています。
──技術的な部分で変わったこと、簡単に言えば上達した、成長したみたいな実感は?
うーん、すぐには思い浮かばないです(笑)。むしろ、お芝居などでもそうなのですが、過去の作品を振り返ったときに「あのときって、こういう表現ができたんだ!」とハッとすることがあるんです。拙くても、そのときしかできなかった表現があって「あれが今、できたらいいのに……」と思い返すような。ですから常に、今出せるもの、今しか出せないものを全力で出していこうという気持ちでいます。
──常に課題を与えられて、それをクリアして、結果としてレベルアップしているみたいな手応えがつかめるのかなと思ったのですが。
自分のレベルがどれくらいで、それをどこまで上げていこうという気持ちではなく……強いて言うなら、横に広がっているような感覚はあると思います。
──上に伸びると言うよりは。
そうですね。楽曲をいただくたびに何かしら気付くことがあって、その面積が少しずつ増していっているような感覚です。そのうえで、1曲1曲に対して何か引っかかるものが残せればいいな、と常々思っています。
三重県の桑名市民会館を目指して
──最後に、このシングルが今年最後のリリースとなりますが、2017年は小松さんにとってどんな1年でしたか?
今までは、私にとってライブというものは年に数える程しかない特別な機会だったんです。でも、今年は3年ぶりのツアー(参照:小松未可子、新たな地図を手に回った3年ぶりツアーで「すごく幸せです」)があり、ツーマンライブ(小松の自主企画「Humming Maps」。1月に田所あずさと、4月にfhanaとそれぞれ共演した / 参照:小松未可子、初の自主企画対バンで田所あずさとコラボ ・ 小松未可子ツーマン企画第2弾、fhanaと一緒に新曲&あのダンスを生披露)があり、毎年恒例のバースデーライブもありと、わりと間を空けずにライブができていて。それが2017年の目標であり課題でもあったので、そういう意味では大きな達成感を得られた年でした。
──リリースも、5月にアルバム、8月と11月にシングルを1枚ずつと充実していましたね。
本当にありがたいことです。楽曲制作にしても、毎回乗り越えるべきハードルがあって、いい意味で精神的に忙しく過ごせました(笑)。常に何か「ああしなきゃこうしなきゃ」と課題を抱えていることで、モチベーションもすごく上がりました。
──では、来年は?
引き続きライブを積極的に、できればツアーもやりたいなと思っています。特にツアーはどうしても東名阪になることが多いのですけど、そのコースを飛び出て、まだ行ったことのない場所でライブをしたいですね。
──ご出身の三重県に凱旋とか。
三重は本当にやりたいんですよ。特に自分の地元である桑名市のNTNシティホール(桑名市民会館)でのライブは悲願と言うか、音楽活動をしていくうえで常に目標としていることです。来年もそれを目指したいです!
- 小松未可子「Swing heart direction」
- 2017年11月8日発売 / TOY'S FACTORY
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初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / TFCC-89637 -
通常盤 [CD]
1296円 / TFCC-89638
- CD収録曲
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- Swing heart direction
- Pina colada & Caipirinha
- Piece of Peace
- Swing heart direction -Instrumental-
- Pina colada & Caipirinha -Instrumetal-
- Piece of Peace -Instrumental-
- 初回限定盤DVD収録内容
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- "Swing heart direction" Music Video
- "Swing heart direction" Music Video Offshoot + Interview
- 小松未可子(コマツミカコ)
- 1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。2016年9月よりTOY'S FACTORYに所属し、同月Q-MHzプロデュースによるシングル「Imagine day, Imagine life!」を発表。2017年5月には引き続きQ-MHzの全面プロデュースで通算3枚目のオリジナルアルバム「Blooming Maps」をリリースした。8月にはテレビアニメ「ボールルームへようこそ」エンディングテーマの「Maybe the next waltz」をシングルリリース。11月には同アニメの2クール目エンディングテーマとなったニューシングル「Swing heart direction」を発表する。