小林幸子×中川翔子「風といっしょに」対談|「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」公開から21年、歌い継がれる名曲

「懐かしいな」と感じてもらえる物語

──ミュージックビデオは子供の視点でポケモンと歩む人生を描いた感動的な内容になっていますね。

左から中川翔子、小林幸子。

小林 とってもいいんですよ!

中川 以前、ポケモンとの出会いと人生をマンガにしたことがあって(小学館「コロコロアニキ2018冬号」掲載)、MVはそれを元にしてくださっています。いろんな場面が「懐かしいな」と皆さんに当てはまると思うので、いろんなふうに感じてもらえたらいいな。おもちゃ屋さんで「赤」か「緑」かすっごい悩んだのを覚えているんですけど(ゲームボーイソフト「ポケットモンスター 赤・緑」は2本同時に発売され、ストーリーは同一ながらポケモン出現率などに違いがあった)、そのシーンに幸子様がいらっしゃるんです。

小林 店員のおばさん役でね。

中川 すごいお店ですよね(笑)。私にとっては、未来のいろんなお仕事につながった大好きなことを全部教えてくれたのが、父親代わりだった祖父なんです。祖父が「ミュウツーの逆襲」を観に連れて行ってくれたときにつないだ手の温もりも思い出せるし、もちろんポケモングッズも買ってくれていましたし。MVには、そういう“おじいちゃんとお孫さん”の場面もあるので、もう涙腺がボロボロです。いかんです。

──今回の映画を観る子供たちの中に、中川さんのように将来歌手になる子がいたら、またその子と一緒に3世代でこの歌を歌うことがあるかもしれませんね。

小林 私もそれまで生きてがんばってみよう(笑)。

中川 幸子様は地球が回る限り歌い続けてくれると信じています!

未来の地球は大丈夫

──近年の中川さんは、「子供たちに何かを伝えたい」ということを意識的に発信していますよね。

中川翔子

中川 「アニメソングを歌いたい」という子供の頃からの夢が、大人になってから明確に「アニメソングを通じて夢の扉を子供たちに届けたい」に変わったんです。先日のポケモンのイベントでは、子供たちがめちゃくちゃ集まってくれて、すごかったんですよ! 楽しすぎて我慢できなくなった子供たちが「しょーこーたん! しょーこーたん!」ってコールを始めるという(笑)。子供たちの中で自然にそうなって。私が一番やりたかった、歌うことや子供たちの懐かしい思い出にいつかなるものを作ることが、大好きなポケモンで今やれている。すべての瞬間がここにつながったのかなと思うと、すごく幸せで。不思議な感覚になりながら歌いました。

小林 1つ感動を与えることができたら、その子たちにとって思い出が1つ増える。その思い出が積み重なって、人生になっていく。そういう、やりたくてもなかなかできないことをできる私たちって幸せだよね。

中川 幸せです! 今の子供たちはすごいですよ。「将来、何になりたい?」って聞くと、私だったら照れて言えないと思うのに、明確に答えが返ってくるんです。「デザイナーになりたい」とか「宇宙で大工さんやりたい」とか。

小林 宇宙で大工さん?(笑)

中川 「しょこたんみたいになりたい」と言ってくれる子もいて! すごいですよね、未来の地球は大丈夫です。

“ハピナスみ”を込めた「タイプ:ワイルド」

──カップリング曲についても伺います。中川さんは今回、ポケモン初代テレビアニメシリーズの5代目エンディング曲「タイプ:ワイルド」をカバーされました。

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」より。©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©2019 ピカチュウプロジェクト

中川 テレビアニメシリーズの中でも「タイプ:ワイルド」は特に大好きで。原曲は10歳の主人公・サトシ少年が歌う、疾走感と切なさのある楽曲です。あまりにも確固たるものを持つ曲で、真似になってもいけないし、どう歌えばいいかレコーディングの日まで悩んでいました。どうしようと焦っていたら、プロデューサーのヒャダインさんが来てバシッと言ってくれたんです。「サトシが歌ってるのを真似するんじゃ意味がない。中川翔子がアニソンとして歌いなさい。大人のお姉さんがサトシを応援するみたいな感じで、“ハピナスみ”を持って」って。すごい日本語なのにわかりやすい(笑)。

──(笑)。ハピナスは「しぜんかいふく」「てんのめぐみ」といった特性を持つ、言わば癒しのポケモンですね。

中川 その日は“ハピナスみ”がパワーワードで、「もっとハピナスみ!」「はい、わかりました!」って(笑)。おかげで、ずっとポケモン番組で“お姉さん”として触れてきた視線で歌うんだ、とハッキリわかったんです。そこに、「ポケんち」で共演しているあばれる君とか(大谷)凜香ちゃんもコーラスで参加してくれて、ライブ映えする“タオル曲”に生まれ変わらせてくれました。あばれる君の声がまたいいんですよ。

──レコーディングに参加されていない「ポケんち」ファミリーの皆さんは、これを聴いたら悔しがるんじゃないですか。

左から小林幸子、中川翔子。

中川 「ポケんち」のメンバーはすごく仲がいいんです。私以外にも栗原類くんとか、学生時代うまくやれなかった系の人も多いんですけど、大人になってポケモンを通じて友達になれた。職業も年齢も全然違うけど、集まって「ミュウツーの逆襲」鑑賞会をやったり、去年はみんなでリアル脱出ゲームにも行ったんですよね。青春とか“ポケだち”(ポケモンが好きな友達)って、遅いとか全然なくて。だから、心はみんなで一緒に歌ってるような感覚です。

──今、学校でうまくやれていない子供たちにも勇気を与えられるお話ですね。

中川 「とりあえずポケモンやりな!」と言いたいです。

小林 しょこたんもね、お家でポケモンやってて、そこから1つずつ、こうやって自分で見つけていったんだもんね……。

中川 お母さんのようなことをおっしゃる(笑)。

──そうしてレコーディングされた「タイプ:ワイルド」は、中川さんの単独コンサートのセットリストに組み込んでも違和感のない曲に仕上がりました。

中川 ヒャダインさんは一般的にお祭りソングのイメージが強いかと思うんですけど、私には「愛してる」(2019年2月に配信リリース)のように、しっとりめの楽曲をくださることが多かったんです。今回、満を持してライブ映えする曲をいただけたのが、めちゃくちゃうれしいですね。毎日聴いてしまうくらい大好き。早くライブで、タオルをぶん回して歌いたいです。

小林 ヒャダちゃん、変わってるけど天才だよね。

中川 「ヒャダちゃん」って呼ぶ人、初めて見ました(笑)。