TOWNは同業者に向けてのメッセージでもある
──TOWNは“ステージと客席の垣根を取り払う”というのが比喩でなくコンセプトそのものになっていて、ライブ会場は異様な光景でした。参加している“メンバー”のライブへの向き合い方もよかったですね。傍観者がいないと言うか。
誰しもアーティストな一面は抱えているんだけど、羞恥心だとか世間体だとかで、日常の中では押さえ込んでいると思うんですよ。それが解放できるような場所を作れるといいなという気持ちもあって。
──「そこに集まった人は全員“演者”である」というコンセプトは、本当にライブが破綻してしまう危険性もあったと思うのですが、その心配はなかった?
それはそれでしょうがないかなと。でも結果ケガ人もなく、音楽的に破綻しすぎることもなく。僕もどっかで刺されたりするんじゃないかなと思ってたんですけど(笑)。
──絶好のチャンスと言えばチャンスでしたからね(笑)。
まあ音楽的なところで言うと、多少の事故はありとしつつも、本当に破綻しちゃうのは申し訳ないなという気持ちがあったので、固定メンバーでドラムとベースとギターを1人ずつ入れたうえで、公募のメンバーやお客さんとして集まった人の音を足しているんです。公募のメンバーもちゃんと練習してきてくれていて……まあ全然できてない奴も中にはいましたけど(笑)、本当に音楽が好きで集まってきた子が多かったんで、ムーブメントとしても面白かったですね。音楽を仕事として始めて何年も経ちましたけど、このタイミングで新しくバンドを始める、バンドメンバーを募るというのはなかなか刺激的でしたよ。
──ライブは毎回観覧無料で楽曲配信も無料、ハコ代も機材費も自前、収益は物販と最終的なパッケージ作品のみだから真の意味で採算度外視と聞いたときはさすがに笑いましたけど、メジャーレーベルでよくこれが許されましたね。
物販と言ってもアイドルじゃないからそんな売れるわけじゃないし、そもそも数もそんなに作ってないし……もちろん仕事でやってるんでお金のことは考えなくちゃいけないんですけど、それだけじゃないよ、こういう時期があってもいいよというメッセージは込めてますね。こういうアーティストもいるし、それに乗っかってくる業界人もいるんだよというメッセージを同業者に向けている面も少しあります。
──音楽面やコンセプトもさることながら、TOWN始動の第一報(参照:清竜人「俺とバンド組まへんか?」演者と観客の垣根超えたTOWNで憂さ晴らし)ではまずビジュアルに驚きました。なぜこのビジュアルに?
なんでしょうね。「俺の背中についてこい!」的な感じ?
──あはははは(笑)。軽いですね。文字通り体張りすぎでしょっていう。背中の龍だって、コンセプトというだけならフェイクでもいいわけですし。
まあでも、そんなんじゃ人はついてこないでしょうし。何事も「やるからには100じゃないといいものはできない」という持論があるので。25のときもそうでしたし、僕はいつでもそう考えてますね。
「これ、大丈夫ですか?」
──TOWNの1発目のライブは2月2日のTSUTAYA O-EASTでした(参照:26分の衝撃、演者と観客の垣根を取り払った清竜人TOWN初ライブ)。全8曲で26分ほどのライブでしたが、思い描いていた通りのライブになりましたか?
基本的には成功でしたが、修正すべき点は多少見つかりました。1回目以降はボーカルを募集したんですけど、それは1回目を踏まえて変更したんです。フロアにボーカルマイクを置いたものの、やっぱり揉みくちゃになっちゃうから。ちゃんと正式メンバーとしてボーカルを加えてステージに上げちゃおうという、そういう微調整はのちのちありましたが、ライブとしては成り立っていたし、ライブアルバムのビジョンも湧きましたし、まあ成功だったと言えますね。
──会場に入った時点で、フロアの真ん中にマイクスタンドが立ったセッティングにみんなまず騒然としてましたね。どういう態度でライブに挑むべきか探るところから始まって。1曲目はまだみんな様子を伺ってる感じもありました。
ええ。まだ身の振り方がわからないみたいな感じはありましたね。
──TOWNでは最終的に合計12曲のオリジナルソングを作って、合計12回のライブが行われました。その全公演をミックスしたライブアルバムにするという構想はどのあたりで固まってきたんですか?
最初の段階ではそこまでディテールを詰めてなくて。この形で、その日集めた奴らで録音していけば普通のライブアルバムにはならないだろうとは思ってましたけど、ずっと一緒にやってるエンジニアから「全部の会場の音を1曲の中に混ぜたら」という提案があったんです。固定で入ってもらったドラマーはクリックを聴きながら叩いてるので、一応全会場同じBPMなんですよ。いろんな会場で歌った人の声や演奏が混ざって1つの曲になっているのは面白いし、いい試みだなと思ったので。別の日に別の場所で演奏した人たちがセッションしてるみたいな。すごく大変でしたけど、うまくいきましたね。マスタリングスタジオでは「これ、大丈夫ですか?」って心配されましたけど(笑)。
──ライブレポートの写真キャプションには通常メンバーの名前が入るんですけど、全員ひっくるめて「清 竜人TOWN」であるというコンセプトに則って、清さん以外は全員「清 竜人TOWN」としたんです。名前も知らない男性や親子連れもみんな「清 竜人TOWN」で(参照:清 竜人TOWN、フロア渦巻く怒涛の解散ライブ)。
ああ、そうでしたね。
──その匿名性の高さも面白かったけど、中には妙にキャラ立ちしている人もいて(笑)。初回から小太鼓だけ叩いてたお姉さんは不思議なスター性を感じました。
あの子ねえ(笑)。目立ってたねえ。音は全然聞こえないんだけど、いないと寂しいみたいな、いいキャラクターでしたね。
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楽しかったけど、むちゃくちゃ大変
- 清 竜人TOWN「TOWN」
- 2017年9月20日発売 / TOY'S FACTORY
-
初回限定盤 [2CD+DVD]
7020円 / TFCC-86622 -
通常盤 [2CD]
3240円 / TFCC-86623
- DISC 1:TOWN LIVE RECORDING
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- TOWN
- それでいい!それがいい!
- 俺の街まで来いよ!
- やりたくないぜ!
- 青春
- I Don't Know! I Don't Care!
- 縮んでどこにもありゃしない!
- 糞小便の歌
- おい!ハゲ!ボケ!カス!
- 大丈夫!大丈夫さ!
- ケツの穴ちっちゃいね!
- ほどほどに生きましょう!
- DISC 2:配信音源
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- TOWN
- それでいい!それがいい!
- 俺の街まで来いよ!
- やりたくないぜ!
- 青春
- I Don't Know! I Don't Care!
- 縮んでどこにもありゃしない!
- 糞小便の歌
- おい!ハゲ!ボケ!カス!
- 大丈夫!大丈夫さ!
- ケツの穴ちっちゃいね!
- ほどほどに生きましょう!
- DISC 3(初回限定盤のみ)
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DVD:TOWNドキュメンタリー映像(約120分)
- 清 竜人25「ラスト♡コンサート@幕張メッセイベントホール」
- 2017年9月20日発売 / TOY'S FACTORY
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完全限定生産盤
[Blu-ray Disc+2DVD]
9720円 / PPTF-7015
- 収録曲
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- Will♡You♡Marry♡Me?
- ラブ♡ボクシング
- どうしようもないよ...
- Call♡Me♡Baby
- アバンチュールしようよ♡
- プリ~ズ...マイ...ダ~リン♡
- Sundayはわたしのモノ♡
- マリッジブルーを抱きしめて♡
- やっぱりWifeがNo.1♪
- Christmas♡Symphony
- Coupling♡
- ねえねえ...
- The♡Birthday♡Surprise
- 鬼の目にもナ♡ミ♡ダ♡
- キネマトグラフを♡ / 清竜人&清咲乃
- I Love Youはあなただけ♡ / 清竜人&清亜美
- まるで嘘のように...♡ / 清竜人&清美咲
- 譲れない...In My Heart...♡ / 清竜人&清可恩
- My Lovely♡ / 清竜人&清優華
- アカシック♡レコード
- ハードボイルドに愛してやるぜ♡
- 天上天下唯我独尊
- My Girls♡
- Mr.PLAY BOY...♡
- A・B・Cじゃグッと来ない!!
- マイ♡ワイフ♡イズ♡アイドル
- 逢いたいYO~♪
- 誓いのワルツ
- 25♡
- 愛してる♡キスしたい♡Hしたい♡
- LOVE&WIFE&PEACE♡
- ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング
- KIYOSHI RYUJIN SOLO TOUR
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- 2017年12月1日(金)東京都 めぐろパーシモンホール
- 2017年12月7日(木)京都府 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
- 2017年12月8日(金)愛知県 千種文化小劇場(ちくさ座)
- 2017年12月19日(火)東京都 日本青年館ホール
- 清竜人(キヨシリュウジン)
- 1989年生まれ、大阪府出身の男性シンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表し、そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となった。2006年には「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」でグランプリを受賞し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」に出演を果たす。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。その後もシングル、アルバムを精力的にリリースし、2012年5月には曲ごとに異なるアレンジャーとエンジニアを招いた4thアルバム「MUSIC」、2013年2月には自宅録音による弾き語り楽曲のみを収めた5thアルバム「KIYOSHI RYUJIN」をツアーとの連動作品として発表した。同年10月には6thアルバム「WORK」をリリース。その後2014年9月から2017年6月にかけては“一夫多妻制”アイドルユニット・清 竜人25として活動。およそ3年におよぶプロジェクトで6枚のシングルと2枚のアルバム、合計31曲のオリジナルソングを作り上げた。清 竜人25と並行し、2016年12月に立ち上げたプロジェクト・TOWNでは「演者と観客との境界線を取り払う」というコンセプトのもと、公募によるメンバーや観客を巻き込んでのライブを敢行し、合計12回のライブをもって2017年7月に解散。2017年9月に清 竜人25の解散コンサートを収めたライブBlu-ray+DVD「ラスト♡コンサート@幕張メッセイベントホール」、TOWNの活動を記録したライブアルバム+ドキュメンタリーDVD「TOWN」が同時リリースされた。12月にはひさびさのソロツアー「KIYOSHI RYUJIN SOLO TOUR」を行う。